第35話 ミノタウロスご飯
早速、ララさんにミノタウロスの査定をお願いして、査定をしてもらう間に、俺はカイナちゃんと鉱夫たちの村へお裾分けに向かった。
「おっ! ヒースさんじゃねぇか?! いらっしゃい」
テカテカとした筋肉ムキムキの鉱夫さんに出迎えられる。
毎日鉱山を掘り進めて、思い岩盤を持ち帰る仕事をしているとここまでムキムキになるのだろうか? それになぜかテカテカと光り輝いている。
「どうも、今日もお肉のお裾分けに来ました」
「おう! それは嬉しいな。ヒースさんにお肉を毎日食べさせてもらうようになって凄く調子がいいんだよ。この辺は畑も育ち難いから、痩せ細った野菜と保存食ばかりだったからな」
痩せ細った野菜と保存食で培われた体には確かに見えない。
むしろ、ムキムキ、テカテカでどこかのボディービルディングの大会に出るのではないかと思えてしまう。
「おじさん。お父さんは?」
「鉱夫長なら家じゃないか? 肉があるなら、みんなを呼んでおくぞ。今日は何の肉だ? ファイアーバードか? バズリスクか? それとも水牛とか?」
ヨダレとギラギラした瞳で迫ってくるのはやめてほしい。
ムキムキのおっさんに迫られても嬉しくない。
「今日はミノタウロスです」
「はっ?! ミノタウロス?! あの高級食材のミノタウロスを言っているのか?」
「高級食材?」
「そうだ。引き締まった闘牛を思わせる弾力ある歯応え。それでいて牛本来のジューシーで甘味のある味わい! 何よりも部位ごとに旨みが変わる超高級食材じゃねぇか?! 火牛なんかよりも価値があるぞ」
「そうだったんですか?」
何やら鉱夫のおじさんの熱弁を聞かされている間に、カイナちゃんが鉱夫長を連れてきてくれる。
「よう、ヒースさん。ミノタウロスをお裾分けしてくれるんだって?」
「あっ、はい。鉱山の未開地を開拓して、その時に獲れたミノタウロスです」
「マジか〜、そっそれで何頭あるんだ?」
「えっと、とりあえず鉱夫村で食べるかと思って二頭います」
「二頭も!!! 一頭で三百人分は取れる肉を二頭分! これはあれだな塩漬けとか、壺漬けとか母ちゃんは忙しくなるぞ」
何やら鉱夫長が興奮気味に話し出して、隣で鉱夫のおじさんも何度も頷いている。
「それではお裾分けしますので、調理をお願いしてもいいですか?」
「もちろんだ! 完成した料理は持っていくからな」
「はい。よろしくお願いします」
鉱夫長も前にあった時よりも一回りほど体が大きくなられて、ムキムキテカテカになっていた。ただ、頭だけは随分と進行しておられたな。
俺が工房に戻るとララさんが査定の途中だったので、一声かけて、自分の家で一眠りすることにした。
アイを召喚したことで、3分の1程度の魔力を消費してしまっていた。
魔力を回復させるためにも眠るのが一番だ。
♢
「ヒー」
「ヒース」
「ヒースさん!」
「うぇ?」
俺が目を開けると、腹の上にカイナちゃんが乗っていた。
「あれ? カイナちゃん。おはよう。どうしたの?」
「ご飯できたよ」
「ご飯? ああ、もうできたの?」
「もうって、あれから結構経ってるよ」
「そうか。ふわ〜、起こしてくれてありがとう。ご飯はどうしたらいい? 村まで行ったほうがいいかな?」
「ううん。今日は私が出前をしてきたよ」
カイナちゃんが嬉しそうにニコニコしている。
口の周りがテカテカで油をたくさんつけているのが、可愛い。
「ありがとう。ミノタウロスは美味しかったかい?」
「うん! 凄く美味しかった!」
目をキラキラとさせて嬉しそうにしてくれた顔を見れば心からよかったと思える。
「そう、よかったね。それじゃ俺も頂こうかな」
「うん!」
体を起こして工房の食堂へと移動する
そこには先に食事をしているララさんが座っていた。
「すまない。あまりにも美味しそうな香りに先に頂いている」
「それは構いませんよ」
俺は席に座って、さらに守られたミノタウロスとその下に見える米の姿に「牛丼だな」と口にする。
「牛丼じゃないよ! ミノタウロスご飯だよ」
「ミノタウロスご飯?」
「うん。お父さんがそう言ってた」
鉱夫長がいうなら間違い無いんだろう。
先ほどからララさんが無心で牛丼を食べている。
俺もミノタウロスご飯を口に含んでみる。
「くくくくくくくーーーーー!!!!」
これは俺の知っている牛丼じゃない! 肉は薄いというよりも弾力がある歯応えで、塩胡椒に醤油という調味料のオンパレードだ。
「ウマッ!」
「ふふ、カイナは明日も絶対食べるんだ。ヒースお兄ちゃん! ミノタウロスをとってきてくれてありがとう!」
「そんなに喜んでもらえてよかったよ」
「ヒースお兄ちゃん」
「うん? なんだい、カイナちゃん」
「私が大人になったら、ヒースお兄ちゃんのお嫁さんになってあげる。だからいっぱいお肉を食べさせてね! それじゃね」
ご飯を持ってきくれたカイナちゃんが帰っていって俺がミノタウロスご飯に視線を落とすと、前から視線を感じてララさんがこっちを見ていた。
「何か?」
「ヒース。私も肉が食えるなら嫁になってもいいぞ」
「はいはい」
この世界の女性は肉が好きすぎる。
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