第32話 鉱山攻略 終

 エルシェンが起こした事件は冒険者ギルドの預かりとなった。

 倒し切れていない犯罪者たちも全て捕えられて、鉱山の人々には被害者として、全て支援が行われた。


 俺も彼らの助けになればと寄付をさせてもらった。


「カイナ!」

「お父さん! お母さん!」


 鉱夫長とカイナの再会は俺的には感動の瞬間だった。

 そして、生き残りであるララには、カイナの護衛任務をやり遂げたということで、冒険者ギルドから報酬が出された。

 

 それはお見舞い金や、仲間たちへの弔い金なども含まれている。


「なぁ」

「ああ、ララさん。無事でよかったです」

「うん。それはありがとう。あなたが来てくれて全てを解決してくれて、私は生きていられた」

「いえ、カイナちゃんを守って懸命に生きようとした、ララさんは生きると言う運命を手繰り寄せたんですよ」

「……そうか。だけど、私は冒険者を引退するよ」

「そうなんですか?」

「ああ、自分の限界を知ったからね」


 どこが清々しい顔をしたララさんは綺麗だと思う。

 冒険者ギルドの受付さんになれば、似合うだろうなと思えるほどに。


「これからはどうされるのですか?」

「まだ、何も。大切な人が殺されたから、まずは墓を作ってやろうかなって」

「そうですか。ゆっくり考えてくださいね」

「うん。しばらくは生活ができるほどの報酬は受け取ったからね。あんたはこれからどうするんだい?」


 俺はアイアンゴーレムを作るのため素材を集めにきただけだった。

 まさか、そこでエルシェンとの確執に向き合うことになるとは思わなかったけど、ある意味で良かったと思える。


 追放された理由が、エルシェンの我儘で自分自身がダメだったからじゃないとわかった。


 それだけでもパーティーに貢献できていなかったわけじゃないとわかって、誇らしい気持ちが持てた。


「目標に向かって進むだけです。俺は元々扉を全てゴーレムマスターになることを目標としているので」

「そうかい。なら、全ての旅が終わればここに戻っておいでよ。あんたはハザマの街と鉱山の英雄だ。みんな歓迎するよ」

「ありがとうございます。考えておきます」

「ああ、それじゃね」


 ララさんと別れ、カイナちゃんとご両親からお礼を言われた。


「お兄ちゃん、助けてくれてありがとう」

「冒険者ヒースさん。あんたへの恩は絶対に忘れねぇ」

「いえ、冒険者として当たり前のことをしたまでです。それに、俺も鉄を求めてここに来たのは同じですから、鉱夫さんたちが安全に仕事ができるように、少しでも協力できればと思っています」

「謙虚なんだな。わかった。俺たちはあんたへの恩は鉄を取ることで返させてもらう」

「はい! よろしくお願いします」


 他の鉱夫さんや生き残った人たちにはお礼を伝えられて英雄として言われてしまった。皮肉なものだ。


 かつてのパーティーメンバーと戦って英雄になるなんて……。



 それからは色々と大変な日々だった。

 

 鉱夫さんたちの生活を安定させるために、村の建設をやりなす手伝いにゴーレムで運送をしたり、鉱山に入るための護衛任務を受けたりとしばらくは鉱山の村に張り付いて仕事をすることになり、火の鳥亭にも帰れなくなってしまった。


 だけど、自分専用の工房を持つことができて、そこでゴーレムの研究をしている。


 鉱夫たちの村から少し離れた場所に作った工房ではな、倉庫も作って、鉄だけでなく、砂、岩、木、骨を貯蔵している。


 肉だけは、腐ってしまうので、新鮮な物に限るが、腰を据えて仕事が行え場所ができたことは俺としてもありがたい。


「さて、大量の鉄だけでなく、冒険者ギルドから今回の報酬で何が欲しいと言われて、ゴーレムの素材になる材料をお願いしたら倉庫いっぱいにもらうことができた」


 一ヶ月分の保存食も元々持っている。

 保存用の魔導冷蔵庫も借り受けられた。


「お兄ちゃん。ご飯だよ」

「カイナちゃん。ありがとう」


 村の復興が終わった後は、護衛以外の仕事は研究に当てたいと伝えたところ、鉱夫長さんが食事の世話をしてくれることになった。

 

 朝、晩と食事を持ってきてくれている。


 昼は持っている保存食で過ごしているので、俺の生活は安定していた。


「モッティと遊んでてもいい?」

「うん。いいよ。モッティ。頼むな怪我させないように守るんだぞ」

「グウゥ!」


 ご飯を持ってきてくれるカイナちゃんの護衛で、小さい方のモッティを常に召喚して魔力増量を継続している。


 食事を終えると、倉庫に行って好きな材料を持って研究をする。

 

 肉が足りない時は、周囲の魔物を狩りに行くので、鉱夫たちの村の周囲の間引きも行えている。冒険者ギルドは村に存在しないので、必要以上には狩らないようにしている。


 余った肉に関しては、村に提供すれば食べてもらえるので問題はない。


「今日は何を作るの?」

「せっかく大量の鉄があるからね。まずはアイアンゴーレムとスケルトンゴーレム、それにマッスルゴーレムを合わせたゴーレムを作ろうと思っているよ」


 鍛治氏のマンティさんの仕事も数日見せてもらうこともできたので、アイアンゴーレムで美少女を作っていこうと思っている。


「お兄ちゃんが作るゴーレムは可愛いよね」

「カイナちゃんはよくわかっているね」


 俺はカイナちゃんの頭を撫でてあげる。


「ふふふ、見てていい?」

「ああ、いいよ」

 

 見ても何が面白いのかわからないが、最近、カイナちゃんは俺のところに入り浸っている。あの時は色々と大変だったので気づかなかったが、カイナちゃんは美少女なので可愛い。それに妹ができたみたいで凄く嬉しい。


 新たな環境で、俺はAIゴーレムを完成させようと思っている。

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