第29話 鉱山攻略 6
どうやら第二陣を退けた後は、モヒカン集団は来ないようだ。
モッフィも戻ってきたので、全て殲滅できたと判断してもいいだろう。
「相手のアジトに行ってみるか」
この場にいてもこれ以上は望めないなら、こちらから動くしかない。
岩山入り口から少し離れた場所に作られた村の中ではなくて、鉱山の入り口近くにアジトを作っているようだ。
魔物が鉱山から出てきたらどうするつもりだったんだろうな。
「とにかく行ってみるか」
あとどれくらいの人数がいるのかわからないが、かなりの人数を倒したと思う。
半分以上は減っていてくれると楽なんだけどな。
村を出て鉱山の入り口に向かって岩山を上がっていく。
一応警戒も込めて、サンドとモッティは召喚したままだ。
魔力消費も半分以上の残っているから大丈夫だ。
モッティはパタパタと羽ばたかせて可愛い。
サンドは俺の肩に小さなゴーレムになって止まっている。
だけど、重さはあまり感じない。
「ふふ、二人とも可愛いな」
ついつい昔のゴツいゴーレムを思い出して、今のコンパクトした2体を見てほのぼのしてしまう。
昔の姿が嫌いというわけじゃない。
変化する、進化するって思えるだけで本当に嬉しい。
「君たちを作り出せるのは俺しかいないからな。しっかりと君たちを強く可愛く。誰にも不細工なんて言わせない姿に進化させてみせるよ」
俺が2体をめでていると、モッティが何か反応して飛び立っていく。
「貴様は誰だ!」
マントを翻して、険しい顔のまま腕を組んで立っている男はかなり威圧を放っている。
「冒険者ヒースだ。お前はモッヒーズの幹部か?」
「ふん、我を他の者たちにするでない! 我こそは、キング犯罪王である!」
あ〜キングと王がダブっているやつか、かなり悪そうな見た目ではあるが、どうだろうか。
「なら、キングさん。あなた方が捕まえている鉱夫さんと家族を解放してください」
「ふん、それはできぬ相談だ。我はキングではあるが、ボスではない。我らがボスは頭の良い方でな。鉱夫たちが掘り当てる鉄を元手にもっと大きなことを成し遂げようとしている。それを邪魔するというなら貴様もここで潰してくれよう」
両手を広げて素手で構えをとる。
「我はこの腕だけで多くの強者たちを葬ってきた。武者修行こそが我が本望。強さこそが証明。スキルを使って戦いを行って多くの者たちを殺すことがどうして犯罪なのか全くわからぬな」
自分で納得していない悪意ほど、悪い物はないからじゃないかな。
だけど、こいつには僕は試したいサンドの召喚を解いて、アイアンスケルトンゴーレムを召喚する。イメージはそれほど複雑な物じゃない。
土台となるスケルトンゴーレム。それにフルプレートを着込んだ騎士をイメージした。これまでアイアンゴーレムも他のゴーレムと同じく曖昧な存在だったが、骨格を整えることでバランスの良いアイアンゴーレムのイメージができた。
「ふん。そんな鎧ごときに何ができるというのだ」
「さぁどうなろうな? あんたを倒すのに彼女ほど素晴らしいゴーレムはいないと俺は思っているよ」
頑丈さと力だけに曲振りしたアイアンゴーレムは、ただの力自慢を相手にするなら十分だ。
「面白いすぐに、そんなオモチャを潰して、貴様を捻り殺してくれるわ!」
「出来るものならやってみろ」
モッティが消えて、手下が徐々に減っていることに気づいていないようだ。
サンドの攻撃力じゃ、あいつの頑丈そうな体は貫くことはできない。
「だから君に託したよ。アイ」
声帯を作っていないので、声は出せないが鎧兜が縦に振られる。
「頼んだ」
アイアンゴーレムは骨格を手に入れたことで、素早い動きで走り出す。
AIゴーレムとしては形を整えることと、俺が知る格闘術をプログラミングした。
昨日は天井上で暇だったので、今までできなかったことをしてみたのだ。
アイアンゴーレムのアイは、サンドのように自由自在に形を変えることはできない。モッティと違って特殊能力も素早さもない。
だけど、戦うことにおいて彼女が一番だと俺は思っている。
「ふん、かかってくるがいい。このキングが貴様をほむってグホっ!」
アイの飛び蹴りがキングの顔面を撃ち抜いた。
頑丈に見えたが、アイの攻撃力で十分に攻撃は通じている。
「やるではないか! 次は我がボホッ!」
何か話す前にアイが腹を殴り唾して、あの巨体を空中へ浮かしてしまう。
「もう容赦せぬ! キング犯罪ダブルパンチ」
うん。めちゃくちゃ弱そうな両手パンチにアイが合わせて拳を振るう。
「ギギャぁつ!」
もう悲鳴とも言えない声をあげて、両手から骨を飛び出したキングがのたうち回る。モッティに行って雑魚も討伐ができたようだ。
「さて、お前たちのボスがどこにいるのか話してもらう」
「くくく、お前たちは死ぬのだ。あの方は勇者のスキルを授かりそれを悪用している正真正銘の悪人だ。貴様のようなゴーレム使いなど簡単に倒してくれるわ!」
アイが拳を振り上げて、キングの顔面を殴りつけた。
そのまま意識を失ったキングを放置して、俺は鉱夫の家族が捕まっている場所へ向かって彼らの解放を行う。
「きっ、君は誰だ?」
「俺は冒険者のヒースです。鉱山の調査を依頼されてあなた方を助けにきました」
「なっ、何を言っている君一人で何が出来るというんだ」
「もう、ここにいる犯罪者たちはほとんど倒しました。あとはボスだけです。ですから、あなた方は村へお帰りください。カイナちゃんが待っていますから」
「カイナが! カイナが生きているのか?!」
「はい。女冒険者のララさんが救ったんです」
「そうか、あの冒険者さんが! わかった。ヒースさん。あんたについていく」
俺は鉱夫を解放して、村へと送り届けた。
しかし、村は火の海に包まれていた。
「よくも僕の仲間を倒してくれたな!」
燃える村の前に立っていたのは、懐かしい顔だった。
「エルシェン! どうしてお前が!」
「僕の方が聞きたい。どうしてお前がここにいるんだ? まさか、僕が引き連れいた者たちを倒したのがお前だとでもいうのか?」
「その通りだ。ここにいた者たちは俺が倒した」
「……そうか。つくづく、お前とは因縁があるようだ」
エルシェンは見たこともない剣を召喚する。
新しいスキルを手に入れたんだな。
「決着をつけよう」
「わかった」
モッフィが不意をついて、エルシェンに襲いかかったが、召喚した剣で真っ二つにしてしまう。
「少し形を変えたのか? だが、この程度で俺は倒せんぞ」
強い。明らかに別れた頃とは桁違いの強さを手に入れいる。
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