第24話 鉱山攻略 1

 マディスさんの依頼を受けるために、俺は魔力を回復させて次の日に鉱山へ向かうことにした。

 女将さんに数日部屋を空けることを告げて、お弁当と食料一ヶ月分を用意してもらった。


「ありがとうございます」

「鉱山はここから少し離れているからね。気をつけていくんだよ」

「はい」

「ヒースさん、絶対に帰ってきてくださいね」

「アーチェさん。ありがとうございます」

「今回は私が作ったチキンカツサンドを入れてあるので、食べてくださいね」


 アーチェさんともっと仲良くなって女性のことを教えて欲しいと思ってしまう。

 だけど、それは俺のゴーレムのためという言葉がついてきてしまうから、それは言えない。


「ありがとうございます。帰ってくる時にはお土産のお肉をたくさん取ってきますね」

「それは嬉しいです! 約束ですよ」


 本当に喜んでくれている様子で、笑顔になっている。


「それでは行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「頑張っておいでよ」


 火の鳥亭を後にした俺は冒険者ギルドへ向かう。


「おはようございます。ヒースさん」

「セレスさん。おはようございます。あの鉱山の依頼はありますか?」

「はい! どっさりとあります!」


 そう言って束ねられた紙を渡される。

 その全てが依頼書の束だというんだから、鉱山で起きている異変に対して大勢の人が困っていることになる。


 それに、俺が話して向かうと思ってくれたセレスさんが紙を束ねてくれたのも感謝しなければならない。


 全てはバラバラに貼られていたはずだ。

 

「ありがとうございます」

「えっ?」


 俺がお礼をいう前にセレスさんにお礼を言われてしまう。


「誰も受けたがらない依頼をヒースさんのような期待の新人さんに受けていただけて、これほど幸福なことはありません」

「そう言ってもらえるとやりがいがありますね」

「ふふ、期待しています!」

「はい! 行ってきます」

「行ってらっしゃい。お気をつけて」


 セレスさんにも見送ってもらって、俺は装備一式の確認を行う。

 エルシェンたちといるときは毎日装備の確認を欠かしたことはない。


 それもパーティー全員の装備やアイテムを俺が用意していた。

 だからこそ、ポーションや必要な装備の知識も知ることができた。


「探検に、鉱山なら頑丈なスコップ。ブーツに革の鎧は必要だな」


 岩石系やトカゲのような軟体系の魔物が多い鉱山は厄介な場所だ。

 鉄の採取や魔物の討伐をするだけでも大変な知識と技術がいるので、これまでの苦労が活きていることが悔しくもある。


「エルシェンのことは許せないけど、パーティーメンバーに対して頑張ってきたことは俺の身になってくれている」


 全ての装備を整え、マジックバックがあるので持ち運びも便利だ。


 衛兵さんに挨拶をして、教えてもらった道を進む。

 最初から張り切って魔力を枯渇するわけにはいかないので、サンドスケルトンゴーレムを出して、実験の一つを試すことにした。


「サンド、俺を乗せて移動できるか?」


 変幻自在に形を変えられるサンドに乗り物になれないか聞いてみた。

 砂に乗るというのは意味がわからないが、サンドは四輪のトロッコになって俺に乗るように言った。


「あっ、ありがとう。大丈夫かな?」


 砂の車輪が動き出す。

 どうやらスケルトン部分が滑車になっている様子で、意外にしっかりとした回転で走り出す。


「うわ〜凄いな。快適だ」


 歩くよりも楽で速度もある。

 何よりもサンドの中にいるだけで、敵がいればサンドが砂の触手を伸ばして倒してしまうので、安全面も確保できる。


「魔力消費も少ない」


 モッフィを召喚するよりも効率がかなりいい。

 敵を倒して移動もできる。

 一石二鳥なサンドに魔力を流すことで、消費した箇所を補うこともできる。


「溶岩を抜けたな」


 溶岩が流れる場所を超えて、岩山の裏側に回ると、また大きな岩山があり、そこに鉱山があるという。

 鉱山の前には、出稼ぎに来ている炭鉱夫たちが作った小さな村ができていると聞いた。


「これは……」


 炭鉱夫たちの村は閑散としていた。

 お世辞にも賑わっているとは言えない。

 もしかして、鉱山の鉄が枯渇して仕事場を求めて解散してしまったのだろうか?


「誰かいますか? ハザマの街から来ました冒険者ヒースです」


 一応呼びかけてみるが、反応はない。

 仕方なく村の中を歩いていると、物音が聞こえた。


 サンドを投げて捕まえてもらうように命令する。


「うわっ!」


 子供の声が聞こえる。

 サンドに捕まってやってきたのは女の子だった


「えっと、君は?」

「ゆっ、許して」


 怯える女の子にどうしたものかと頭を抱えそうになるところで、「カイナを離しな!」と今度は若い女性が現れる。


「俺は冒険者ヒース。君は?」

「うるさい! 奴らが来るだろ」

「ヒャッハー!!!」


 どこからともなく奇声を上げるモヒカン上半身裸の集団が、俺たちを囲むように現れる。


「なっ、なんだこいつら?!」

「くっ」


 距離をとって警戒していた女性が、俺の近くまで来て女の子を守るように立つ。


「まだこんなところに人がいたとはな」

「なんだお前たちは?」

「あぁ? お前は誰だ? 初めて見るなぁ〜! ヒャッハー、お前も捕まえてやるよ」

 

 どうやら鉱山に問題があったのは、こいつらのせいだったようだな。


 サンドでも全て倒せそうだが、モッフィの方が確実かな?

 

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