第22話 美少女ゴーレム

 体力も魔力も充実した目覚めに、俺は軽く準備運動を朝食を取ってから、部屋へと戻ってきた。


 今日は魔力の消費が激しい場合は、外に出ることも控えるつもりだ。


「昨日作ったAIゴーレムがどれくらい魔力を消費するのか怖いけど、召喚してみたい」


 モッティーは大体魔力の4分の1を消費して召喚が可能だった。そこからジリジリと魔力を消費する。

 

 できれば、3分の1か、最悪2分の1で済んでほしい。


「ふぅ、いくぞ」


 俺は気合いを入れてAIゴーレムを発動する。


 素材となるスケルトンゴーレム、マッスルゴーレム、ウッドゴーレムの順番に形成されていく。


 骨格は小柄な女性の形を作り、マッスルで肉付きをしていく。

 女性を思わせる細い手足に、ふっくらとした胸元に引き締まった腰。

 顔は少し幼さを残した小人族のような童顔で目や鼻や口がしっかりおかしなところは見受けられない。


 最後に全身をウッドゴーレムが作りだした木の皮膚の上にモフモフの花で作られた毛並みが綺麗に生えそろっていく。

 全身に真っ白な毛が生え揃って、ゴーレムの姿が完成する。


 小柄で可愛らしい少女の姿をしたモッフィが完成する。


「モッフィ?」


 俺が問いかけると大きな目をパチパチとさせてニコリと笑顔を作る。


「ご主人!」


 しっかりと声帯も機能してくれているようだ。


「えっと、俺のことがわかるのか?」

「ご主人♪ ご主人♪」


 嬉しそうにご主人を連呼するモッフィ。

 どうやら成功したようだ。

 そして、魔力の消費は思ったよりも大きくない。

 小型モッフィを召喚するのと対して変わらなかった。


 出来る事や機能は増えているが、魔力消費はそれほど大きくないのがありがたい。


「えっと、話はできるかい?」

「グウ!」


 普通に指を立てて返事をする姿はモッティそのものだ。


 ただ、めちゃくちゃ可愛い。


 ルールーさんをモデルにしたが、色々とボリュームだったり、パーツだったり、好みを追加させてもらった。


「よし、体に違和感とか動きにくいとかはないかな?」


 モッティが屈伸をしたり、手足を伸ばしたり、体の動きを確かめる。

 

「グウ!」


 親指を立てて大丈夫だと返事をくれる。

 どうやら問題ないようだね。


「少し触ってもいいかい?」

「グウ!」


 どうぞと言わんばかりに顔を差し出すモッティの頭を撫でてみる。

 その肌触りは抱き枕として寝ていた時と同じふわふなモフモフな感覚と、自分の頭を触った時のような筋肉の弾力性が加わっている。


 そして、木だということを忘れるぐらいの皮膚もゴムのような弾力性が追加されていた。


「そうか、イメージして人の体を作ったから木がゴムのような弾力性を持った方が近いと勝手に判断していたってことか、この辺はAIゴーレムが俺の思考を学んでくれているんだろうな」


 続いて、顔を触ってみる。

 顔と手には毛が生えていないので、モフモフ感はない。

 対して、人の皮膚に似たゴム性の弾力と、筋肉を感じる張りがある。


「凄いな。完全とは言えないかもしれないが、見た目だからな羊の獣人美少女と変わりない」


 そのまま胸元へ手を伸ばしてみれば、しっかりと女性らしい感触が返ってくる。

 ただ、モッティは見た目は美少女だが、ゴーレムなので恥じらいなどは全くないようだ。


 感情や、言語はまだまだ改善の余地が見受けられるが、思っていた以上に素晴らしい見た目が出来上がった。


 そのまま腰、足と触っていくと、人よりもしっかりとした筋肉を感じられる。

 この辺りはゴーレムとして必要な筋力がイメージされているものと考えられる。

 モッティの時には小さな体で力持ちだった。


 それを再現すると下半身はしっかりとした肉付きになるということだな。

 細いのに素晴らしい張りがある。


「うん。召喚してから10分ぐらい経つが魔力消費も小さいモッティを召喚している時と対して変わらないな」


 少しだけ消費は激しいが、他のゴーレムを召喚しなければ1日稼働させることもできそうだ。


 見た目は可愛い美少女ゴーレムが完成したわけだが、まだまだ中身が残念な感じがする。


 これに関しては、俺が他の人たちとの交流が少なく人間というものをわかっていないからだと思われる。

 ただ、ゴーレムなので、感情表現が豊な状態は考えられない。


「今は陽気な感じで、可愛くはあるけど。恥じらいがないのがなぁ〜」


 アーチェさんも大胆ではあるが、その顔には恥じらいがあったからこそドキドキとさせられた。

 今のモッティは見た目は美少女だが、小さな子供を相手にしているような気分にさせられる。


「まだまだ改善が余地があるな。ただ、このまま街を連れ歩くのは問題がありそうだがら、服の用意をしないといけないな」


 女の子が全身をモフモフの毛で隠れていると言っても服を着ないとおかしいよな。

 それに今後、全身がモフモフの毛っていうのもなんだか嫌だ。


「初期段階としては成功だがこれからが楽しみだな。モッティ」

「グウゥ!」


 うん。その親指を立てる返事は可愛いから、そのまま残してしまいたい。


 一時間ほどの検査や魔力消費を検証して、俺はモッティの召喚を解いた。


 今後の課題は俺自身が人を知ることかもしれない。

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