第21話 目が覚めると
魔力枯渇によって意識を失った俺は、ベッドに寝かされていた。
「うわっ? 朝か?」
窓から外を見れば、まだ暗い時間で夜であることは理解できる。
どれくらいの時間眠っていたのだろうか? 素材集めから帰ってきた時は昼食の時間を過ぎたぐらいだった。
扉を開けて外に出れば食堂の賑わいが聞こえてくる。
どうやら二刻(四時間)ほど寝ていたようだ。
「ふぅ、どうやら夕食の約束には間に合いそうだ」
部屋の中を見れば、モッティはいない。
どうやら魔力枯渇でゴーレムを維持することもできなかったようだ。
マッスルゴーレムとスケルトンゴーレム、それにモッティのウッドゴーレムを合成しようとしたが、ダメだったのかな?
頭がうまく回らないので、サウナに入って頭をスッキリさせることにした。
眠った後なので体はスッキリとしている。
サウナで汗を流すことで、頭も次第にスッキリとしてきた。
「あれ? 俺って魔力枯渇させて、床で寝ていたよな? 誰がベッドまで運んでくれたんだ?」
不意にサウナで頭がスッキリしてきた俺はそんな疑問が浮かんできた。
「アーチェさんが部屋にきて運んでくれたのかな?」
でも、研究をするから部屋には来ないでと言っていたが、何か用事があったのかな? 食堂に行けば質問もできるだろう。
俺は汗を流して、新しい服に着替えて賑わいを終えた食堂へと入っていく。
「おや、ヒースさん。いらっしゃい。いつも美味しい食材をありがとうね」
食堂に入ると片付けをしていた女将さんに声をかけられる。
「あっ、ヒースさん。タイミングバッチリですね」
アーチェさんが海鮮丼を持って現れる。
お盆に乗った四つのどんぶりには、真っ白なお米と色とりどりな海鮮が乗る。
「アーチェさん。俺の部屋に来ました?」
「いえ、行ってませんよ。ゴーレムの研究をすると言われていたので、何かありましたか?」
「それならいいんです」
「そうですか」
アーチェさんじゃなかったら誰が俺を運んでくれたんだろう?
今日も旦那さんが作ってくれた海鮮丼とキノコのお味噌汁をいただく。
ここではない世界で、農業中心の世界が存在する。
そこで取れる米と言われる真っ白な粒々の食べ物と、大豆と呼ばれる豆から作れる味噌はその世界特有で、全世界で愛される食文化だ。
俺としては前世の日本で食べていた物が、普通に食べられるので嬉しくもある。
一応醤油も存在しているが、どれも世界が変わると凄く高くなる。
だけど、火の鳥亭では、醤油もわさびも用意してくれいた。
「農業世界の調味料って本当に美味しい!!」
「独特の風味と塩味が強く感じるんだけど、それがまたいいだよね」
「わかります。俺はワサビが好きなんですが、それがここで食べらるなんて」
「あははは、ウチのお父さんが調味料マニアなんだよ」
アーチェさんが旦那さんの趣味を暴露すると、無口な旦那さんが恥ずかしそうな顔を見せる。
だから色々な食材に対して、どんな料理もできて、俺が好きな和風の味付けも可能なのか。
「それはそれはありがとうございます」
「お口に合ったならよかったね。旦那の趣味もたまにはいいことあるよ」
「あはは」
火の鳥亭で食べる物は全てが美味しくて、ここから離れるのが惜しくなってくる。
だけど、俺は次の扉を越える決意をしている。
いつかはここを離れなければならない。
今はゴーレムの新しい研究とレベル上げのために止まっていたが、今日の感じだとレベルが上がりにくくなっている。
それにゴーレムを作る素材も少なくなってきているから集めなければならない。
この前の小人族と森の世界で集めた木材が枯渇しつつある。
モッティを作るためには木が必要だ。
だけど、ハザマの街は溶岩と海が近くて、木々がほとんど生えていない。
砂というよりも岩石が多くあるので、サンドも手持ちの砂がなくなれば、ロックゴーレムを主流で使うことになるだろう。
こうやって笑い合える時間も残りわずかだな。
「ごちそうさまでした」
「はいよ。片付けはしておくから、ゆっくりしておくれ」
「お疲れ様です」
女将さんとアーチェさんに見送られて、食堂を後にする。
部屋に戻った俺は先ほどの続きをしようとAIゴーレムの履歴を確認する。
「うん? なんだこれ?」
履歴を確認していると、見たこともない履歴が残されていた。
「もしかして、魔力が枯渇する前に完成してたのか?」
モッフィの新型である。
スケルトンゴーレムを骨格に、マッスルゴーレムで肉付きして、ウッドゴーレムで作ったモフモフな毛並みを再現した女の子が履歴に残されている。
プログラミングの設定はモッティが基準になっていて、マッスルゴーレムの肉付きがあれば声帯も再現できるか? 内蔵器官は必要だろうか? 解剖学はイマイチ自信はない。
そもそもゴーレムに内蔵は必要ないだろ?
声帯を作って、鼻や目は作りたい。
どうせなら美少女がいい。
美少女と思った俺の脳裏に、エルシェンが連れてきた小人族のルールーの顔が思い浮かぶ。
小人族は小柄な体をしていると言っても子供ではない。
ただ、その小柄な見た目のせいで美少女というイメージができてしまう。
「ベースの顔に使わせてもらおうかな。モッフィは可愛い美少女って感じがするんだよな」
今までモフモフボディーで癒されてきたから、これからも美少女になって癒してほしい。
そんな思いで、俺はルールーの顔をベースに目や鼻、口を作り、さらに話ができるように声帯を作っていく。
元々モフモフボディーなので、全身が羊の毛が生えた獣人のようになった。
「でっ、できた。だけど、これを召喚するには魔力が足りない。もう一度寝て魔力を補給しなくちゃな」
俺は設定とベースになるボディーをAIゴーレムで作り終えて眠りについた。
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