第20話 素材合成 1(木+骨+肉)

 火の鳥亭に帰り着いた俺を待っていたいのはアーチェさんだった。


「おかえりなさい。ヒースさん」

「ただいま帰りました。あの、これお土産です」


 最速トビウオやウニウニ、それにしめしめと呼んでいたキノコなどをアーチェさんに渡していく。

 一応、ギルマスからカゴをもらってきたので、説明をしながらカゴの中に入れていく。


 火の鳥亭の旦那さんに伝えれば全ての調理が可能だと聞いたので、アーチェさんに説明しておけば大丈夫だろう。


「今日は海鮮丼ですね!」

「海鮮丼! 良いですね」

「ふふ、いつもお肉ばかりで、それはそれで好きなんですけど、たまには海の幸も食べたくなりますからね。ありがとうございます。キノコのスープと海鮮丼を作ってもらうように、お父さんに言っておきます」

「いつもありがとうございます」

「こちらこそですよ! いつも美味しい食材をありがとうございます!」


 火の鳥亭に泊まって四日目になるが、食事を一緒に摂るようになって、アーチェさんとは随分仲良くなれたと思う。


「あ、これからゴーレムの研究をするので、また食堂の賑わいが終わったぐらいに向かいます」

「わかりました。新鮮な食材なので、こちらの方で冷やして保存しておきますね」

「ありがとうございます」


 アーチェさんに全ての食材を渡して部屋へと戻る。


 帰りながら解体していたファイアーバードやバジリスクの肉を出していく。


「さて、肉ならば全ていいのか? それともアリゲーターだけなのか?」


 アリゲーターだけなら大分限定されてしまうが、それは懸念で終わった。

 どの肉を使ってもマッスルゴーレムを作ることはできた。


 基本はムキムキ巨大人体模型ゴーレムが完成してしまうのでかなり見た目が悪い。


 これをAIゴーレムや合成でどこまで変化させられるのか?


「グウゥ」

「えっ?」


 俺が考え事をしていると、マッスルゴーレムにモッフィが抱きついて、自分のモフモフな毛並みをマッスルにつけようする。


「えっと、肉のボディーが欲しいってことか?」


 球体のスケルトンゴーレムを土台にして、ウッドゴーレムのモフモフの花を咲かせる性質を使ってモフモフボディーを作り出していた。

 

 スケルトンゴーレムにマッスルゴーレムをつけて、その上からモッフィのモフモフボディーをつけるということだろうか?


「二つ以上の合成は初めてするなぁ〜。そんなことできるのかな?」

「グウゥ!」

「やってみろってことかい? わかった。とりあえず、モッフィに使っている魔力も必要になると思うから、一旦解除するよ」

「グウゥ!」


 まずはイメージがしやすいモッフィで合成をしてみることにした。


 マッスルゴーレムを使うことを思えば、マッスルゴーレムにスケルトンゴーレムの骨格を与えるところからだろうな。


 そのために人の体をイメージした方がやりやすい。

 

 そして、俺が最近触れた人の体……。


 不意にアーチェさんの体が浮かんできて、スケルトンゴーレムがアーチェさんと同じ身長ぐらいの女性の骨格を作り出した。


「うわ〜、俺って露骨すぎないか? 今日はイメージや感情に左右されすぎだな。まぁそれだけアーチェさんの胸の衝撃は俺にはデカかったということだろう」


 目の前でアーチェさんの骨格があると思うとドキドキしてしまう。

 これにマッスルゴーレムを合成する? いいのだろうか? いや、これはゴーレムだ! 決してアーチェさんの体に触りたくて邪な感情でやるんじゃない。


「よし! やるぞ! スケルトンゴーレムに、マッスルゴーレムを合成」


 AIゴーレムを使って、合成素材を開始する。

 出来上がったのは、女性の骨格と筋肉を持つ。


「人体模型じゃねぇかよ!」


 それはそうだ。


 筋肉がむき出しのまま、スケルトンゴーレムで土台を作っただけなんだから、見た目は人体模型のままだ。


 ただ、その胸元は明らかに膨らみがあるが、筋肉なので、ムキムキボディーでしかない。


「ぐっ! 自分の知識のなさがこんなところで致命的な欠陥を生むとは」


 だが、俺にはまだこの上の段階が存在する。


 モッフィに施したように、この上からウッドゴーレムのモフモフボディーを皮膚の代わりに合成していくのだ。


「魔力は持つか? 今日はレベルは上がっていないが、早めに帰ってきたから余裕はあるな」


 覚悟を決めて、ウッドゴーレムを出来上がったマッスルスケルトンゴーレムに付与していく。


 三つ目の合成は思った以上に魔力を奪われる。


「ぐっ! キツっ!」


 急激に減少する魔力に、集中力が奪われてキツイ。


「もう無理だ!」


 魔力を全て使い果たしたところで、なんとか全ての合成を完成させられたと思う。

 だが、完成品を見る前に、俺の意識は魔力が枯渇して、そのまま奪われてしまう。


 フカフカでモフモフな何かに包み込まれる夢を見る。


 それは触り心地が気持ちよくて、抱きしめられていると温かい温もりを感じられる。


 このままこの温もりに包まれていた。


 夢の中で俺は幸せを感じながら、眠りについた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る