第19話 アリゲーターの皮は高級品

 冒険者ギルドに立ち寄って、昨日の買取金額を受け取る。


「お疲れ様です。セレスさん」

「ヒースさん。お疲れ様です」


 美人に笑顔で対応してもらえるって、凄く嬉しい。

 それだけで心が癒される。


「昨日の買取金額を受け取りに来ました」

「はい。明細がこちらです」


 ファイアーバード40体で金貨40枚。

 バジリスク10体金貨20枚。

 水牛1体金貨50枚

 ファイアラビット1体100枚(オークションに提出するので上乗せ金額は別途)


 解体費用と手数料(オークション出品費用も含む)として、金貨10枚。


 合計金貨200枚(2000万円)


 こんなにも凄い大金を1日で手に入れてしまった。

 マジックバッグの時にも思ったが、モッティとサンドの能力が高すぎる。


「ありがとうございます。また買取と鑑定をギルマスにお願いしたいんですが、空いてますか?」

「はい。裏口に回ってもらえれば。またお肉ですか?」

「いえ、今回は溶岩の方ではなく、海辺の方へ行ってきたので肉はありません」

「そうですか」


 なぜかガッカリされてしまったが、連日で大量のファイアーバードを納入しているので、量は足りていると思いたい。


「また、お肉もとってきますので」

「はい! よろしくお願いしますね!」


 満面の笑みで言われれば、期待に応えなければならない。ハザマの街の女性たちは肉が大好きな人が多いよな。


 俺は裏口に回って、ギルマスに挨拶をする。


「よう、今日も早いじゃねぇか」

「はい。今日は素材を探しに行っていただけなので」

「素材? 何か武器でも作るのか?」

「いえ、スキルの関係でゴーレムに使う素材を探していたんです」

「そういうことか、スキルについて詳しく聞かないのがマナーだからな」


 AIゴーレムや素材合成については、俺も詳しく聞かれてもよくわからない。


「すみません。俺も詳しく聞かれても、自分のスキルをまだ理解できてないんです」

「ゴーレム使いなんてのは不遇職と言われ続けて研究してるやつが少ないからな。何より、一つ目の門を通るのも大変だって話だからな」

「はい。確かに一人で通るとなると最初は相当苦労すると思います。ですが、俺は仲間と一緒だったので」

「そうか、良い仲間を持ったんだな」


 良い仲間とはお世辞にも言えない。

 最後は追い出されてしまった。

 俺なりにパーティーに貢献していると思っていたが、エルシェンにはそう見えなかったようだ。


「良い仲間ではなかったです」


 可愛いゴーレムたちをブサイクと言ったことは絶対に許さない。


「おいおい、怒るのはいいが、ゴーレムを暴れさせるのはやめてくれよ」

「えっ?」


 エルシェンのことを思うと自然に怒りが湧いてくる。

 モッティとサンドが俺の感情に反応して、シャドーボクシングをしたり、武器に形を変えたりしていた。


「はは、すみません。大丈夫です。それよりも今日は海鮮とキノコを取ってきたので、鑑定をお願いできますか? それとアリゲーターの皮もあります」

「おいおい、それは凄いな!」


 俺は肉の代わりに取ってきた食材を解体所のテーブルにぶちまける。


「うおっ! 最速トビウオにウニウニじゃねぇか!」

「食べられます?」

「当たり前だろ。最速トビウオは刺身にしてもいいが、出汁を取って鍋にしても美味いぞ。ウニウニは見た目は黒いが、ちゃんとした調理方法をマスターすれば最高級の食材になるんだ。どっちも火の鳥亭の主人ならできるだろ」

「そうなんですね」


 他にも大量発生していたしめしめと呼ばれるキノコに、香りが良いマッツンキノコ。

 貝類も味わい深い物から、毒性の強い物まで教えてもらって、食べられる食材を三分の一だけ引き取って、後は買取してもらった。


「目玉商品はやっぱりアリゲーターの皮だな。肉は硬くてそれほど人気はないが、皮は別だ。水属性の耐性があって、頑丈。装備品の防具としても人気だが、最近は別世界の女性たちが持つ鞄によく使われているんだ。それが高値で売れる売れる」

「そうなんですか?」

「おう、しかもヒースが取ってきたアリゲーターはかなりの大物だ。大きさ、質、触り心地全てが完璧だな」


 ギルマスさんは鑑定や解体もできて凄い。

 今回の商品を一級品として引き取ってくれたので、オークションに出すことになった。


「肉ほど高くはないが、アリゲーター以外の買取で金貨30枚(300万円)ほどだ」

「全て貯金で」

「お前は欲がないなぁ〜、金を持ってんだから、たまには娼館に遊びに行くなり、パァーと冒険者仲間と食事でもしろよ」

「はは、まだこの世界に来たばかりで、知り合いが少ないんです」

「それもそうか、今度連れて行ってやろうか?」

「考えておきます」


 鑑定をしてもらったキノコや海鮮類をマジックバッグに詰めて火の鳥亭へ戻ることにした。

 今日も火の鳥亭の皆さんが食べられるように十人前ぐらいの食材はよけてもらった。


 セレスさんとギルマスにもお裾分けをして、それでもあれだけの金額を稼げているんだから十分だ。


 それに、肉の素材をこれからどうやって使うのか実験をしなくてはいけない方が俺としては頭が痛い。


 グロいからあまり使いたくはないが、それでもゴーレムたちを強化するためには必要なんだ。

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