第15話 受付さんの名前

 新しくサンドスケルトンゴーレムを作ることに成功した。

 そのおかげで手持ちができる武器を手に入れることができた。

 モッフィの討伐記録も更新して、アイテムバッグもいっぱいに良い子ばかりだ。


「うん。恐ろしいぐらいに順調だ」


 やっぱり四つ目の門を通ったのが良かった。

 新しいスキルは新しい力の覚醒と繋がっている。

 それをどれだけ理解するかということだと思うけど、やっぱり職業に応じたスキルは凄い。


「レベルも50になったし、とりあえず今日は帰ろう」


 受付さんにモッティが捕獲してきたのが、火牛なのか確認をしてもらおう。

 朝は賑わっていた冒険者ギルドも、早めに帰ってくるとまだ混む前だったようだ。


「あっ、ヒースさんおかえりなさい」

「あの火牛を倒せたかもしれないんです。合っているのか解体所で確認をお願いできますか?」

「凄い! 見つけるのも大変な火牛を! わかりました。それでは裏口にどうぞ」


 俺は受付さんに案内されて裏口に回る。

 そこにはギルマスが、解体作業をしていた。


「おう、ヒース。今日は早いじゃないか」

「ギルマスがくれたマジックバックのおかげです」


 昨日はコンパクトにしようと解体をしたり、モッティとの意思疎通がうまくできなくて、帰るタイミングを逃したりと色々大変だった。


 だけど、サンドスケルトンゴーレムの研究と、モッティの狩りがタイミングよく終わったところで、帰還したのでいつもより早い。

 何より、いつも寝坊気味だったから開始が遅かったのだ。


 今日は朝から活動しているので、これが普通なのかもしれない。


 朝早くに働いて、お昼すぐに仕事終える。


 なんだか効率が良くなった気がする。


「ヒースさん。確認をさせていただきますね」

「はい!」


 俺はマジックバッグから、今日の成果を作業台の上へと取り出していく。

 一応、火牛とファイアーラビットは避けて出した。


「マジか! 今日もファイアーラビットとってきたのかよ!」

「うわ〜火牛です。間違いありません」


 真っ赤な毛並みに、手足が車輪のように丸くなった牛らしきものは火牛で間違いないようだ。溶岩を泳ぐために変な進化を遂げたんだな。


「やばいな。この二つで金貨150枚(1500万円)だぞ」

「……依頼達成ですね。ヒースさん、これ」

「はい?」


 赤髪の美人受付さんが、俺の手を握ってきた。

 ドキッとしてしまう。

 解体所では、全身が見えるのでスタイルの良さもあり緊張する。

 

「私、セレナって言います」

「えっ?」

「冒険者ギルドでは、受付は気に入った冒険者さんにしか名乗らない規則なんです」

「そうなんですか?」

「はい。ですから覚えておいてくださいね」

「はい! ありがとうございます」

「それでは依頼達成の手続きをしておきますね」


 受付さんことセレナさんが立ち去った後で、ギルマスがニヤニヤした顔をしている。


「どうかしたんですか?」

「お前は新人だから知らないだろうから教えておいてやる。受付嬢が自分の名前を名乗る時は二つの意味をもつ」

「二つの意味?」

「そうだ。一つは専属冒険者として、あなたのサポートをしますという仕事の意味だ」

「専属って、新人の間はつけられないはずですよね?」


 冒険者ギルドは世界中に存在して、専属は巡礼を終えて冒険者ギルドへ貢献度が高い冒険者に受付さんが色々とサポートについてくれる制度だ。


 新人の間は世界を渡ることが当たり前なので、専属はつけられない。


「おう、だからもう一つの意味として、期待の新人さんのお嫁さんに立候補するって意味だ」

「はっ!?」

「くくく、まぁそんな堅く考えるな。受付嬢達も美人で色々な冒険者に声をかけられる。だけど、自分が選んだ人間と結婚したいって思うだろ? だから色々な冒険者に名前を伝えることで唾をつけてんだよ。まぁ美人に声をかけられたぐらいに思っておけ」


 ギルマスは楽しそうに言われるが、未だに誰とも付き合ったことがない俺としては女性からそんな行為を向けられるのはあまりないから正直よくわからない。


 アーチェさんからも肉のことで好きにしていいと言われたが、怖気付いて何もできなかった。


「まぁ、お前はまだ若い。これから多くを経験するんだ。細かいことは気にするなよ」

「ハァ」

「くくく、それで全て買取でいいのか?」

「あっ、火牛の肉は少し分けてもらえませんか? どんな肉なのか興味あるので」

「おう、なら一番貴重な部位と、個人的に好きな部位を切り分けてやる」


 ギルマスと肉の話をするのも当たり前になってきた。

 まるで精肉店に買い物にきたような気分になるが、まぁこれはこれで面白いからいいのか?


「タン、ハラミ、ツラミ、ロース、ミスジ、そんで霜降りだ。あとは火の鳥亭の亭主に渡せば、調理はしてくれるぞ。一応十人前ほど渡しておく。これでもまだ2000人ぐらいは食べらるだけの肉が取れるからな。他のファイアーバードなんかよりも貴重なんだ」

「そうなんですね」


 俺はなんだか疲れた気分になり、早めに帰ろうと決意する。

 セレナさんに依頼達成報酬を受け取り、解体費用は明日もらうことにしてもらった。


「それでは」

「またね。ヒース君」


 最後にウィンクをもらったけど、どうしていいのかわからなくて手を振りかえすことだけしておいた。

 

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