第13話 アイテムバッグ
美味しいご飯を食べた後は、モッティのカスタマイズをしよう。
今日は、意思疎通がなかなかできかったことが課題に思える。
羽をパタパタとさせて知らせてはくれるが、何を言ってるのかよくわからない。
まずは骨格を形成して、次に口となる空洞を開閉できるようにする。
さらに声帯の振動によって声が発生できるようにしてみる。
この辺の解剖学は正直詳しくない。
そこでAIゴーレムに声が出せるように口と声帯の生成を組み込んでみた。
モッティができることを確認しながらプログラミングの再確認をして、意思確認やこちらの命令に対してしっかりと行動ができるように命令系統の詳細を作った。
プログラミングを組む際に、どれだけ正確なアリゴリズムを繋ぎ合わせるかという問題が生じる。
だが、AIゴーレムは形成の手伝いをしてくれる。
複雑なプログラミングを組んでも、履歴として残してくれる。
それに一度作れば、次は精密に作り直してくれる。
これがAI技術だと言われれば凄いな。
「モッティ。どうだい?」
「グウゥ!」
親指を立てて小さい口でグウとなく。
どうやら、意思疎通のプログラミンは上手く行ったようだ。
返事をしてくれたんだろうな。
「うん。いい感じだね。否定はできるかい?」
「ブゥー」
今度は指を下に向けてブーと鳴く。
つまり、YESなら「グウ」、NOなら「ブー」というわけだ。
「うん。これなら意思疎通はできそうだな。さてモッティ。一緒に寝よう」
「グウゥ」
モッティが胸に飛び込んでくる。
「相変わらずモフモフだな」
抱き枕としても適度に柔らかく気持ちいい。
♢
早朝の準備を終えて冒険者ギルドに向かう。
パーティーといた時は他の奴らの準備をしていたけど、今ではモッティがいてくれれば、準備は自分のことをすれば終わるので早い。
三日目にして、早朝から冒険者ギルドにやってくるとたくさんの冒険者達で溢れていた。
「へぇ、こんなにも冒険者がいたんだな」
「おや? 兄貴じゃないっすか?」
「へっ?」
「あっ本当だ」
俺を兄貴と言って声をかけてきたのは、スキンヘッドに厳つい顔をした男と、出っ歯で小柄な男だった。
見た目はチンピラ風で、俺にも絡んできた二人だ。
「誰が兄貴だ」
「だって、俺たちが困ってた時に助けてくれたじゃねぇですか」
「そうそうです。うちの兄貴が怪我をして苦しんでいるのを助けてくれました」
おや? どうやら冒険で骨が折れていたのか? 本当に困っていたなら助かってよかった。
「今日はファイアーバードを一体討伐に行ってきます!」
「兄貴のように期待の新人になれるように頑張ります! 俺はゴンザですよろしくお願いします」
「頑張るっす! ザルです」
二人は自己紹介をして、見た目で人って判断できないな。
俺は二人組と分かれて、冒険者達が仕事に行くまで待って受付へと向かう。
「おはようございます。ヒースさん」
「おはようございます。昨日の買取ですが」
「その話で、ギルマスから話があるそうなんです。裏に回っていただいてもいいですか?」
「わかりました」
何か問題でもあったかな? 俺は裏口へと回ると解体所にギルマスが待っていた。
「おはようございます」
「よう、ヒース。来たな」
いつもの作業着姿のギルマスに挨拶をして出迎えられる。
「昨日はファイアーラビットをありがとな」
「いえ、俺も初めて食べましたが、凄く美味しかったです」
「ガハハハ、涙が流れるほど上手いのは初めて食べたぜ。それで今回の報酬なんだが、お前に提案がある」
「提案ですか?」
「そうだ。ファイアーラビットは相場で金貨100枚(1000万円)の価値がある」
「金貨100枚!!!」
俺は驚いて大きな声を出してしまう。
「おう、そうだ。しかも他国に流通させたり、冒険者ギルドが開いているオークションに出せばもう少し値段も上がるんだぜ。まぁ今回は一匹をギルドで食べさせてもらって、もう一つをオークションに出すつもりだ」
「そうなんですね」
「それでな。値段がつかない状態ではあるんだが、お前が良ければアイテムバッグと交換ということにしてくれねぇか?」
「アイテムバック?」
アイテムボックスはホビットのスキルとして聞いたことがあるが、同じようなものだろうか?
「ホビットのアイテムボックスよりは性能が落ちるが、バッグの中にアイテムを収納できるのは同じだ。時間は停止してねぇから保存は効果が薄いが、収納するのには十分な品物だ。普通は金貨300枚(3000万円)の価値あるんだが、二匹のファイアーラビットに今回の買取額と交換でどうだ?」
「逆にいいんですか? 俺としては便利な道具をもらえてありがたいです。今は貯金もあるので、浮いたお金ですから」
「そう言ってもらえると助かるよ!」
アイテムバッグなんて超レアなアイテムだ。
それがあればわざわざゴーレムには混んでもらって、衛兵さんや街の人に気を使わなくてもいい。
「でも、どうしてそんな良い物を俺に?」
「まぁ期待の新人ってこともあるが、お前が来てからの肉の供給量は確実に増えている。もっと取れるならこちらとしても価値があるって思ったんだ」
「ありがとうございます! 頑張ります」
「おう、なら手続きに入ろう」
俺はアイテムバックを手に入れて実感する。
期待されるって大変だけど、恩恵も受けられてありがたいな。
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