第10話 修行をしよう

 バジリスクのポトフで満たされた。

 

 火の鳥亭を紹介してもらって本当に良かった。

 毎日、美味しいご飯を食べられるって最高だな。


 ゆっくりと眠れる環境もありがたい。


「ふぁ〜。ベッドが最高すぎる」


 個室でゆっくりなんて考えたこともなかった。


 エルシェンたちのところにいるときは、エルシェンは女部屋に入って、俺は知らないやたらと大部屋で雑魚寝だった。


 その上で誰よりも早く起きて、冒険に行くための準備をする。

 ゴーレムを用意して、他の奴らの装備やアイテムチェックをしておかなくちゃならない。


 ゴーレムを作るためには、素材も用意しないといけない。全員分のアイテム管理も俺の仕事だった。

 冒険中は戦闘に、解体に、アイテム補給に、忙しかった。


 冒険が終われば、宿取りをして、不足したアイテムの補給。ゴーレムの素材集めなど、とにかくやることが多かった。


「自分なりに頑張っていたけど、解放されてよかった気がしてくるな。それに昨日のスケルトンゴーレム合成は、魔力の消費が激しかったな」


 魔力量は他の人からも多いって言われていたから油断していた。

 ゴーレムは常に魔力を消費して、発動しなくちゃならない。

 高位のゴーレムを作り出せば、それだけ魔力消費も大きくなる。


 魔力量を増やさないといけない。

 これまではゴーレムをひたすら使い続けることで魔力の強化を行なってきた。


 なら、今まで通りゴーレムを発動すればいいのかと言えばそうではない。


 今の俺に必要なのは、スケルトンゴーレムを土台とした合成ゴーレムを維持することだ。


「それも維持するために高位のゴーレムは消費が激しい」

 

 だから、俺は頭を働かせて、常に行動を共にするゴーレムを作ることにした。


 ただ、大きくしてしまうと目立つ。


 なので目立たない大きさにして、合成ゴーレムだからしっかりと能力を発揮できるような存在がいい。


 常に発動することを思えば、初日に作ったモフモフゴーレムが見た目はいい。


 スケルトンゴーレムとウッドゴーレムを合わせることにして、外装はモフモフボディだな。


 抱き心地を良くなる。


 大きさは抱きあげられるぐらいの大きさ。

 直径25センチ、周囲75センチ、重さは一キロぐらいの球体を作り出した。


 それを土台に正面に腕と手を。

 下方部に足をつけて、背面に羽のようなモフモフを増やした。


 外側だけ見れば、モフモフの回るい球に羽が生えている。


 AIゴーレムを使えば、イメージに合わせたゴーレムを作成してくれる。

 骨格も球体から手足と羽が生えているイメージで作ってやれば意外に完成は早かった。


「うん、いいな。今日から常にこいつを発動した状態で行動しよう。ウッドスケルトンゴーレム抱き枕バージョンを常に連れて歩くから、名前をつけるか?」


 抱き心地はモフモフの木なので、「モッティにしよう。お前は今日からモッティだ」


 モフモフウッドゴーレムこと、モッティを抱き上げてみる。

 一キロほどの重さがあるので軽くはないが、悪くはない。


「あとはプログラミングで出来ることの設定だな」


 スケルトンゴーレムを土台にしているので、手先は器用に動かすことができる。

 さらに羽もファイアーバードが空を飛ぶために使っていた物を大きさを調整しただけなので、火の耐性が強く、空を飛ぶこともできる。


 手先が器用で、空を飛べて、木が弱い火に対する耐性もあって、走ることもできる。


 荷物を持ってくれて力持ちで、戦闘でも他のゴーレムと遜色がないように強く。

 常に連れ歩くということは俺の護衛も兼ねているってことだから、ガンガンに魔力を消費しても特別賞なゴーレムにしたい。


 プログラミングを書き終えると、かなりの高スペックになったのはいいが、他のゴーレムが召喚できなくなるほどに魔力消費が激しいゴーレムになってしまった。


「うわ〜、これはやりすぎたか?」


 一体だけでは荷物を運んだり、仕事をしたり、とにかく色々と不便そうなゴーレムができてしまった。


「まぁいいか、モッティ。いくぞ!」


 俺が呼びかけると片手をあげて返事をする。

 そんな機能まで追加した覚えはないが、高性能にしたから自動で学習したのかもな。この辺もAIゴーレムのスペックなのかもしれない。


 制作履歴に残っているから、材料さえ揃えれば、簡単に作ることができる。

 魔力消費は激しいが、魔力を増やすことができれば、もっと増やしてもいいかもな。


 俺はモッティを連れて冒険者ギルドを訪れる。 

 昼前になってしまったので、他の冒険者の姿は見えない。


「あっ、ヒースさん。昨日は新人さんがお世話になったそうで、ありがとうございます」

「うん? 新人さん?」

「はい。うちの冒険者ギルドに所属している子たちなんですけど、まだまだダメダメで。昨日も全く成果がなくてムシャクシャしているところにヒースさんに出会って、助けてもらったと言われていました。ヒースさんみたいな先輩になりたいって、張り切って仕事に向かって行きましたよ」


 どうやら見た目は悪かったが、中身は悪くなかったようだ。


「いえ、俺も新人の時は苦労したもんですから」

「ふふ、さすがは期待の新人さんです。これからもどうぞ他の冒険者さんの目標になってあげてください。今日は仕事を受けられますか?」

「それなんですけど、ファイアーバードとバジリスク以外の魔物って出ますか?」

「はい。もちろんです。この辺りでそれ以上の危険な魔物となると」


 どうして危険な方になるのか知らないが、とにかく情報を得ることは大切だ。

 昨日みたいに、大量の魔物に襲われるのは困る。

 だけど、モッティの性能も確かめたい。


 だから、一頭で行動する強い魔物がいれば、戦わせてみたい。


「あっ、これなんてどうですか? 火牛グーモです」

「火牛?」

「はい。溶岩で泳いでいる牛なんですけど、熱耐性とか、火体制が高い魔物で、溶岩から上がってきた時にしか討伐できないんです。幻の牛と呼ばれています。強くはあるんですけど、遭遇率や、捕獲難易度の高い魔物でレア中のレアですよ」


 ウッドスケルトンゴーレムのモッティとは相性が悪そうに思うが、せっかく調べてくれたんだ。


 それを受けてみようか?


「わかりました。受注をお願いします」

「かしこまりました。もしも討伐できれば、金貨50枚。捕獲なら200枚になります」

「捕獲の方がいいのか?」

「はい。捕獲して火牛のミルクが取れると、それだけの高額取引ができるんです」


 色々と魔物にもある物だと受注した依頼をすることにした。

 期限は10日ほどで、失敗してもペナルティーはなし。遭遇が難しい魔物なので、見つけれたら奇跡と言われた。


 受付さんも俺がお金に困っていないことを知っているから依頼を出してくれたんだろうな。


 俺は早速モッティを連れて探索を開始した。


 


 

 

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