第9話 夕食にはバジリスク

 新人冒険者に金貨を渡して冒険者ギルドの中へと入っていく。


 昨日と違って、AIゴーレムで作ったロックゴーレムは人一人分ぐらいのサイズにまでコンパクトにして、ローブを着せているので一目につかない。


 倒した魔物も、バズリスクを2体とファイアーバードが5体。


 どっちも解体して、自分で肉と骨を切り分けているので、解体不要の状態で持ち込んだ。


「ヒースさん。随分と遅かったですね」

「受付さん。俺のことを覚えてくれていたんですか?」

「はい。期待の新人さんですからね。何かあったのではないかと心配していたんです」

「いえ、ちょっとこの世界に渡ってきたばかりなので、スキルを試していたら夢中になってしまって」


 AIゴーレムもだが、新しい骨の素材が面白くて試し過ぎた。そんな話をされても興味がないだろう。

 それにゴーレムを作るのが楽しすぎると言ったら、キモい奴認定されるのも嫌だ。


 俺なりにエルシェンにキモいって言われたのは案外堪えているのかもな。


「ああ、そう言うことですか。それは冒険者なら、あるあるの話ですね。今日は買取をされますか?」

「はい。ファイアーバードを5体。解体して肉だけです」

「それは助かります。解体費の差引がないので、金貨5枚です」

「ありがとうございます。手持ちは減っていないので、そのまま貯金で」

「かしこまりました」


 金貨を貯金して、俺は火の鳥亭へと帰る。

 相変わらず食堂は賑わっていたので、少し落ち着いてから向かうことにしようと思い、自分の部屋に戻ってサウナを利用させてもらう。


 1日の疲れが汗と共に流れていくような気がして、最高だな。


 外の風は生暖かくて整うというよりも、少し冷めるという方が近い。

 体が冷めたところで、二度目のサウナに入る。

 本日は三度のサウナでしっかりと汗を流し切る。


「ふぅ、整ったな」


 今日一日頭を使ってゴーレム作成をしていたから、随分と疲れてしまったようだ。

 魔力も大分消費したので、明日からは気をつけてやらないとな。


 服を整えて食堂に行くと、少し遅めの時間だからなのか、賑わいは随分と落ち着いていた。


「おや、ヒースさんじゃないか? 言ってた通り遅かったね」

「はい。遅くなりました」

「あ〜、すまないね。今日はファイアーバードが品切れになっちまったんだよ。ウチのウリなのに悪いね」

「いえいえ、それもあるかなって思って、これを持って帰ってきました」


 俺はバジリスクの肉を女将さんに差し出す。

 解体して、血抜きも終えているので、臭みが残らないように持っていたローリエの大きな葉で巻いている。


「おや、あんたこういうことでもできるのかい? しかも下処理が完璧だね」

「はは、2ブロックあるので、一つは俺に。もう一つは火の鳥亭の皆さんでどうぞ」

「いいのかい? ファイアーバードよりも高価なんだよ? バジリスクの肉は元々臭みが少なくて歯応えがしっかりしているから屋台で甘辛いタレをつけて焼くのが主流なんだ」

「へぇ〜そうなんですか?」


 女将さんは、2つのブロックを厨房へ持って行って、細かく切り分けた肉を二本の串に差して戻ってきた。


 片手には炭火焼きを行う七輪を持っている。


「まずは、これとエールで一杯やっといてくれ。焼き方はわかるかい?」

「あっはい。大丈夫です」


 カウンターに一本ずつ焼くことができる串が置かれる。

 すでにタレが塗られていて、甘い香りが漂ってくる。


「うっ」

「はは、いい匂いがするだろ。屋台でやっていると時はその匂いに釣られて買いに行くんだよ」


 俺はじっくりとバジリスクの甘辛ソース焼きを仕上げて、一口目を頬張る。


「くっ!」


 筋が硬めで歯応えを感じる。

 弾力ある肉に甘辛いタレが染み込んでいて、「美味っ!!!」肉肉しい噛み応えと、口一杯に広がる甘辛いタレの旨み。


 さらに、焼いていることで、ほのかな香りと焦げた苦味がエールとマッチして最高だ。


「くくく、本当にお客さんは良い顔するね。付け合わせに激うまレタスを食べておきな。この辺じゃ珍しいけど、西に行くと海があるんだ。そこで採れた昆布と和えたレタスでね。さっぱりとした味わいが口直しに良いんだよ。塩加減は少なめにしてあるから素材の味を楽しみな」


 出された付け合わせに口をつければ、幸せを感じる。


 先ほどまでの甘辛いタレが、さっぱりとしたレタスの味わいと、昆布の塩味でちょうど良い味わいになっている。


「ふぅ〜」

「いい感じになってるみたいだね。さぁ締めだよ。バジリスクのポトフだ。臭みのないバジリスクは、こうやって野菜と煮ることで出汁が最高のスープを作ってくれるんだ」


 二本の串を食べている間にエールを三杯も飲んでいた。


 そんなところに優しい味わいのポトフがお腹を優しく整えてくれる。


「濃い味ばかりじゃないんですね」

「それはそうだよ。料理は無限の可能性を持っているからね。火の鳥亭の売りはウチの人が作るご飯だからね」


 女将さんは嬉しそうに旦那さんを指さして微笑む。


 ギルドマスターにここを紹介してもらって良かったなぁー

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