第7話 《勇者パーティー》 ルールー視点
《sideルールー》
ホビット族は他の種族のように戦闘技術は高くないっす。
その代わりに特殊技能をたくさん持っているっす。
「なぁ、お前はホビット族だよな。アイテムボックスを持っているか?」
そう言って軽薄そうな男が近づいてきたのは、今から一週間ほど前のことだったっす。
ウチは見た目が可愛いと言われ、人間族から声をかけられることが多かったっす。
だから、またナンパ男がやって来たぐらいに思っていたっす。
「持っているけど何か用っすか?」
「おっ! マジか! 僕の引きスゲー! 僕は勇者の職業を女神様に授かったエルシェンだ」
「えっ? 勇者? 凄いっすね」
勇者は戦闘に特化した職業で、スキルも戦闘強化が多いっす。
魔物が多く出現する七つの
だからと言って珍しい職業でもないので、崇めるほどでもないっす。
「だろ。実はパーティーメンバーを探してんだよ。アイテムボックスを持っているなら、僕のパーティーに入ってくれないか?」
ナンパ男かと思ったらパーティーの勧誘だったっす。
それは別に悪い気がしないでもないっす。
ウチも16歳になって冒険者の仕事をしているっす。
それに世界渡りに興味がないわけではないっす。
「今までいくつ扉を超えたっすか?」
「三つだ。つまり四つのスキルを所持している」
ウチはまだ扉を一つも越えたことがないっす。
ついていくのはいいっすけど、三つ越えたところで、もういらないと捨てられても困るっす。
それに最初から感じる、この軽薄そうな感じがどうにも信用できないっす。
「あなた以外にパーティーメンバーはいるっすか?」
「ああ、いるぜ。紹介してやろう」
そう言って酒場に連れて行かれると女性が三人待っていたっす。
三人とも種族の違う女性で綺麗な人ばっかりだったす。
人間族で魔法使いのシルディアさん。
精霊族で僧侶をしているアリスさん。
蝙蝠族で黒い羽と耳を持つミアさん。
三人ともどこか虚な瞳をしていたっす。
だから、すぐにピンと来たっす。
スキルか、薬で三人をどうにかしているんじゃないかって、ホビット族はアイテムボックスを持つ同時にアイテムにも詳しくなるっす。
その影響で異常状態もすぐに見極められるっす。
そうしないと適切なアイテムが使えないから、いやでも知識はついてくるっす
「どうだ? 優秀なパーティーメンバーだろ?」
「そうっすね。これで全員っすか?」
「いや、あと一人いるが、そうだな。そいつはお前と同じポーターをしていたが、ゴーレム使いで不遇職だ。使い物にならないやつでな。お前が入ってくれるなら追放するつもりだ」
何言っているっすかこいつ? 仲間をそんな簡単に切り捨てる奴を信用できないっす。
それにさっきから気持ち悪いっす。ウチに異常攻撃をして来ている気がするっす。
ウチにも異常攻撃を仕掛けて、催眠にかけようとしているっすか?
「そうっすか、それじゃ一週間ほど時間をもらってもいいっすか?」
「一週間? すぐに決めてもいいんだぞ」
「女には色々と準備があるっすよ」
ウチは少し体をクネらせて上目遣いにエルシェンと名乗った勇者を見つめてやったっす。
そしたらデレデレとした顔で「まっまぁ仕方ないから待ってやるよ」とキモい顔をしていたっす。
すぐに冒険者ギルドの受付に、評判を聞きに行ったっす。
「勇者エルシェン? ああ、今巡礼中の新人さんですね。確か、凄いゴーレム使いを連れている人ですよね」
「凄いゴーレム使いっすか?」
「はい。普通のゴーレム使いさんって、一時間ぐらいゴーレムを出していると魔力切れを起こしてしまうんです。ですが、4体同時に出して、一日中召喚してられるとか、普通はゴーレムが馬車を引くなんて芸当はできないのですが、馬車を引いて走るとか、もう嘘でしょって思うようなゴーレム使いさんです」
受付さんに聞くと、勇者よりもゴーレム使いの評判が凄くいい。
女性たちも優秀だと言うことはわかった。
勇者エルシェンは確かに強く、三つの扉を超えてきただけの実力はようだったっす。
「色々とありがとうございます」
「いいのよ。色々あると思うけど頑張ってね」
人族の受付さんは凄く美人で、ウチもそんな風になりたいって思うっす。
ウチは異常状態を解除するアイテムをゲットして、勇者パーティーの動向を見ていたっす。
もしかしたらゴーレム使いさんも異常状態で、操られているのかと思っていたっす。
だけど、実際は一人で魔物を掴んで、解体、宿取り、買い出しまで全てを請け負っていたっす。
あれをウチにやれってことっすか? 正直雑用を押し付けられて嫌っす。
だけど、ある日、ウチはソロで受けた荷物運びの任務で失敗をしてしまったっす。
アイテムボックスに入れて、隣町に運びだけ。
それだけなのに、蜘蛛の魔物に遭遇して、蜘蛛の巣に捕まってしまったっす。
近くに人がいなくて途方に暮れていると、一体のゴーレムが近づいてきて私を助けてくれたっす。
「あっ、ありがとうっす」
ゴーレムに向かってお礼を言っても仕方ないのはわかっているっすけど、それでも本当に助かったっす。
誰のゴーレムなのか確認に向かうと、それは勇者パーティーのゴーレム使いさんだったっす。
人助けをしても見返りを求めない。
勇者とは違って悪い人じゃなさそうっす。
そう思ったウチは決心ができたっす。
あの人を解放して、他の人たちの目も覚ましてみよう。
だから、勇者エルシェンに告げたっす。
「仲間になってもいいっすよ」
「そうか! 歓迎するぞ! その前にヒースは追放を告げないとな」
意気揚々な態度をとる勇者エルシェンに、ウチはバカな奴だと呆れてしまうっす。
本当に疑いもなく仲間に入れられて、追放劇が始まったっす。
あの人は、きっと一人になっても成功できるっす。
勝手に動くゴーレムが、ウチを助けるぐらいだったっす。
当たり前に人を助けが出来る人を救えて嬉しくなってしまっていたっす。
あの人が追放されて、いきなり同じホテルで寝ようと言い出す勇者エルシェンに信じられない気持ちになったっす。
どうしてお前みたいな奴と一緒にいないといけないっすか? ありえないっす。
なんとか勇者エルシェンを追い出して、女性だけでスイートルームに入ったウチは準備に取り掛かるっす。
三人にかけられた異常状態を解除するアイテムを作って飲ませるっす。
そうやって三人に薬を飲ませて、事情を話すと聖職者は泣き崩れたっす。シーフは怒りで震えていたっす。
魔法使いだけは悲しそうな顔をしていたっす。
その後は私が預かっていた装備とお金を全員に返して、ウチは薬代として金貨一枚だけ受け取ったっす。
後は勇者パーティー同士で勝手にやればいいっす。
ウチは世界を航る決心ができたっす。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます