第5話 ソロ冒険者としての実力は?

 最高の夕食と、個室のベッドで寝たことで完全に回復することができた。

 やっぱり野宿じゃ疲れは取れなかったんだな。

 二日間ほど寝てないような状態で、ベッドに入ったからヤバかった。

 エールの回りも良くて酔いまくった。


「ウッドゴーレム抱きしめて寝てたよ」


 酔った勢いでAIゴーレムを発動して、持ち歩いている素材の一つである木を使ってウッドゴーレムを作成してしまった。


 抱き枕に最適なモフモフゴーレムとか意味がわからない創作にAIゴーレムが一生懸命頑張ってくれたのが伝わってくる。

 ウッドゴーレムは羊の毛を思わせるモフモフな花?を生やして、枕ぐらい小さなウッドゴーレムが出来上がっていた。


 それを抱きしめて十時間ぐらい爆睡してしまった。

 冒険者として早起きなのに、完全に寝坊した時間に起きた。


「あははは、相当疲れていたみたいだね」


 服を整えて食堂に行くと、バーバラさんに笑われてしまった。


「朝食は麦粥にファイアーバードで出汁をとっているから食べていきな」


 鶏ガラスープの麦粥は、昨日のパンチが効いた唐揚げと打って変わって胃に優しくて美味しかった。


「美味い」

「そうだろうそうだろう」

「今日は狩りに行こうと思っていますので、遅くなります」

「ああ、優秀な冒険者さんだから大丈夫だと思うけど、気をつけるんだよ」

「はい!」


 暖かいお茶をいただいて、俺は火の鳥亭を後にした。


 今日はゴーレムを連れていないので、正面から冒険者ギルドへ入っていく。

 AIモフモフゴーレムは履歴に残されているので、また作りたくなったら作ろう。

 意外に可愛かったから抱き枕にはありだな。


 ハザマの街の冒険者ギルドは、そこまで規模が大きくない。

 受付と依頼を貼り付ける掲示板、さらに簡単な軽食を摂るための食堂が備え付けられている。


 2階もあるようだけど、あまり広くはなさそうだ。


「おはようございます。どうかされました?」


 俺がキョロキョロと冒険者ギルドの中を物色していると、受付さんに声をかけられた。冒険者ギルドの受付さんは世界共通で花形職業なので、美人さんが多い。


 このハザマの街でも例外なく、赤い髪のワイルド美女さんだ。


「おはようございます。買取をお願いしていたヒースと申します。これが冒険者証です」

「ヒース様ですね。確認をして参りますので、しばらくお待ちください」

「はい! よろしくお願いします」

 

 狭いながらも冒険者ギルドの中を歩きながら、掲示板に目を止める。

 溶岩と岩の世界グツグって言っていたが、魔物討伐や、鉱石採取はどの世界でも同じだな。


 昼前に来たから、すでに冒険者たちが仕事に行っているんだろう。


「ヒース様! お待たせしました」

「はい」

「目録をお持ちしました。解体費用は差し引かせていただいております。全て買取でよかったでしょうか?」


 ゴーレムが居れば防具もいらない。

 それに魔物たちが素材になるわけじゃない。


「はい。よろしくお願いします」

「それではこちらが全ての買取査定額になります」


 解体費用は引かれた査定額が、提示されて俺は目を見開く。


「えっ?!」

「どうかされましたか?」

「あっ、いえ凄い金額だったので、これって間違いじゃないですよね?」

「はい。ファイアーバードが32体。バジリスクが10体でした。ファイアーバードは一体に付き金貨一枚なので金貨32枚。バジリスクは一体につき金貨2枚になりますので、10体で金貨20枚になります。合計52枚の買取金額です。一応前金で金貨1枚と買取代金として金貨1枚を引いておりますので、合計金貨50枚ですね」


 いきなり金貨五十枚(500万円)ゲットしちゃったよ。

 今まではパーティーとして、これぐらいの金額は稼いだことはあるけど、俺はせいぜい月で金貨3枚程度しか使えなかった。

 それも宿代や食事代、装備や素材も全て含んでの値段だ。


 それなのに、一人で金貨50枚。

 しかも素材費もほとんどかかってない。


「よろしくお願いします」

「はい! 大金になりますので、冒険者ギルドに貯金されますか?」

「お願いします。金貨5枚だけ手持ちで1枚は銀貨に両替をお願いします。残りの金貨45枚は貯金で」

「かしこまりました」


 冒険者ギルドの仕組みは知らないが、全世界に共通で存在していて銀行としてお金を預ければ、どの世界でも引き出すことができるので便利な話だ。


「それとヒースさんはソロの冒険者さんでよかったですか?」

「はい。前の世界ではパーティーを組んでいたんですけど、今はソロで活動しています」


 エルシェンたちのことを思い出すと腹が立つが、意外に一人で行動した方が効率がいいんじゃないか? レベルも上げられるし、お金も独り占めできる。


「巡礼中の冒険者さんには規則的に仮ランクを定めることはご存知ですか?」

「あ〜、すみません。なんとなくしか」

「そうですか。では、簡単に説明すると、冒険者さんには将来性に応じたスターが授与されます。新人で功績のない冒険者さんはスター0。レベルを10まで上げてスキルの熟練度を上げられた方はスター1。それからは世界を渡ってスキルを習得したり、倒したことがある魔物に応じてスターのランク決めを冒険者ギルドが行う規則になっています」


 色々と冒険者ギルドのルールがあるんだな。

 だけど、スターがたくさんもらえたからってどうなんだろう?


「スターがたくさんもらえると、冒険者ギルドからの信用を得られ、引いては世界から信用が得られると思ってください」

「世界からの信用??」

「そうです。七つの世界は、別々の歴史や生活を歩んでいますが、冒険者ギルドと扉によって繋がっています。冒険者ギルドの信用を得られていると、どの世界に行っても優遇処置を受けられるんです」


 全然知らなかった。

 

 俺はアイテムの買い出しや宿取りをしていて、仕事の受注はほとんどがエルシェンに任せていた。

 エルシェンが取ってきた仕事に同行して、荷物持ちと臨機応変な対応をしているだけだった。


「そうだったんですね」

「それでヒースさんの現在のスターはご存知ですか?」

「すみません。全然知りません」

「それでは現在のヒースさんのスターをこちらで査定して、ご報告させていただきます。冒険者証を提示いただけますか?」

「はい」

 

 俺は言われるがままに冒険者証を渡すと、受付さんが現在のスターを教えてくれる。


「まず四つの扉を越えられていて、スキル値としてスター5。レベル40としてスター4。魔物の討伐数スター30付与となりますので、現在は39スターになります」

「それってどうなんですか?」

「そうですね。新人さんという枠組みではありますが、期待の新人ってところでしょうか?」

「それはいいんですか?」

「はい。普通の方なら、スキルとしてスター、2〜3。レベル10〜20としてスター、2。魔物討伐でスター、7〜8ぐらいが平均です」

「へぇ〜そうなんですね」


 色々と基準があるんだろうけど、よくわからん。


「あっ、それと冒険者ギルドとしての貢献度を追加させてもらうと、依頼の達成ランクが平均4なので、凄いですね。高評価ばかりです。合計43スターをお持ちなので、新人さんとしてはかなり冒険者ギルドからの信用が高いようです」


 知らない間に、俺って冒険者ギルドに評価されていたんだな。


「今後も冒険者として活躍されるのを期待しております」

「はい! 頑張ります」


 お金には困っていないけど、レベル40になったので次の素材を探したい。

 

 

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