第3話 買取金額は?

 四体のゴーレムに大量の魔物を持たせて、近くの街に向かった。

 門までもう少しというところで、数名の衛兵に取り囲まれる。


「なっ、なんだ貴様は?!」


 衛兵の一人が槍をこちらに向けながら問いかけてくる。

 俺は世界共通の身分証である冒険者証を提示する。


「俺は冒険者のヒースだ。ゴーレム使いをしている」

「ゴーレム使い? そっ、それだけの魔物をゴーレムで狩ったのか?」

「そうだ。他にゴーレム使いがどうやって魔物と戦うっていうんだ?」

「あっいや、すまない。あまりにも大量の魔物の死体だったので気が動転した。身分証を見せてくれ」


 俺は冒険者証を見せれば、衛兵も納得してくれたようだ。


「ようこそ溶岩と岩の世界グツグへ。ここは森の世界から来た者たちが最初に訪れる端の街ハザマだ」

「ああ、ありがとう。ここはあんたら人間しか住んでいない世界なのか?」

「いや、ドワーフたちも共存している世界だ」

「なるほどな」


 火と岩のあるところにドワーフ族が住みやすいと聞いたことがある。

 どうやら噂通りのようだ。

 ドワーフは鉱物を加工して、アイテムや装備など作る名手だから、この世界では道具の発展が他の世界よりも進んでいるんだろうな。


 七つの世界には、全て人間が住んでいて街や村を作っている。


 小人と森の世界と言われているが、ホビットと人間以外にも、エルフやシルフィーなどの妖精族も住んでいると言われている。


 俺が生まれた王国は人間が一番多いが、他にも住んでいる種族がいるそうだ。


 この世界に転生してきて、物心がついてから冒険者として活動きた。

 エルシェンに誘われるまではゴーレム使いになるためのレベル10を目指していたから、世界についての勉強が不足している。


 全ての世界を周り終えたなら、勉強をして世界を知ることもしたいな。


「とにかく冒険者ギルドに言って換金をしたいんだが、買い取ってくれるだろうか?」

「ああ、バジリスクとファイアーバードだろ? どっちも食材として買取が可能なはずだ」

「そうなのか?」

「ファイアーバードの唐揚げは、この街の名産になってるくらい供給量が多いから歓迎されると思うぞ。それにバジリスクの蒲焼も屋台の人気メニューだ」


 すっかり衛兵と仲良くなって冒険者ギルドの場所まで教えてもらうことができた。


「それにしてもその数は凄まじいな」

「ああ、俺もそう思う。一晩寝ていたらゴーレムたちが狩りまくってくれたみたいでな」

「おいおい、何を冗談言ってるんだよ」

「えっ?」

「ゴーレムを一晩中発動なんてできるわけないだろ。ゴーレムはそれでなくても効率が悪くて、一体を召喚するのに相当な魔力を消費するって聞いたぞ。しかも能力付与なんて使った日にゃ30分も召喚が保てないって不遇職業じゃないか」


 衛兵の言葉にポカンとしてしまう。

 

 俺はエルシェンに出会う前から一人でゴーレム使いとして魔物を狩っていた。

 確かに最初の頃はゴーレムを維持することは難しかったが、レベル10に到達するぐらいには一日中召喚していても問題なくなったはずだ。


 というか、ゴーレムは一日中召喚しているのが当たり前だと思っていた。

 そうじゃなければ、俺たちゴーレム使いは武器を持たないで戦場に行くようなものだからだ。


「そっ、そうか。あはははは」

「そうだぜ。だが、あれだけの魔物を狩れるんだ。相当に腕のいいゴーレム使いなんだろうぜ。頑張れよ」


 俺は背中をバンバンと叩かれて、衛兵に見送られた。

 冒険者ギルドは街の中に入ってすぐのところにあるので、あまり街の人に見られることなく冒険者ギルドに入ることができた。

 

 流石にゴーレムを正面から入れられないので、裏口に回って冒険者ギルドの職員に声をかける。


「すみません。誰かおられますか?」

「あぁ? なんだお前?」

「私、巡礼中の新人冒険者のヒースと言います。魔物を狩ったので買取をお願いします」

 

 作業用エプロンにタオルを頭に巻いた厳つい男性が冒険者ギルドから出てきた。

 物怖じすることなくお願いしてみると、怪訝そうな顔をして俺の冒険者証を確認した。


「確かに、それで? 魔物はあれか?」

「はい。全部そうです」

「スゲーな。魔物討伐履歴を見ても問題はなさそうだ。中に入りな」


 冒険者証には様々な機能が備え付けられていて、誰が魔物を討伐して、サポートをしたのか一目でわかるようになっている。

 だから、ゴーレムが倒した相手でも俺が倒したことにちゃんとカウントしてくている。


 エルシェンたちのパーティーでもサポートは俺が一番だったと自負しているぐらいだ。


「マジでスゲーな。天井に届いてんじゃねぇか」


 ゴーレムが運び込んだ魔物を積み上げると、解体する棚に山となって積み上がった。


「これだけの量だ。査定に1日はもらうぞ」

「あっ、それなら宿代だけでも先に買い取ってもらえませんか? 今日の宿代に飯代も持っていなくて」

「なんだ? 文無しか? いいぜ。なら、このファイアーバード一体で、金貨1枚だ。金の価値はわかるか?」

「もっ、もちろんです! ですが、金貨1枚って高額じゃないんですか?」


 金貨一枚はだいたい日本円で十万円ほどになる。

 宿代は、銀貨三枚が相場で、酒場で飲み食いをしても銀貨二枚もあればお釣りがくる。つまり残り銀貨95枚もお釣りがある。


「そうでもないぞ。このグツグの世界では食料は貴重でな。このハザマの街では毎日唐揚げとか油揚げを作るんだ。だから調理に欠かせない魔物は需要が高い。冒険者たちは頑張って取ってきてくれるが、それでも供給が足りてなかったんだ」


 需要と共有というわけか、それなら値段が高くなるのも頷ける。


「それになお前さんのゴーレムは殴って脳震盪を起こさせて倒してくれている。血を流す刃物を使っていると、切った箇所は肉が固くなるんだ。だが、お前のはファイアーバードを倒した直後で新鮮だ。今から血抜きをすれば柔らかくて最高の状態で売れるからな。相場よりも高くなる」


 ゴーレムたちの倒し方が功を奏した結果だったようだ。

 プログラミングで倒し方を決めといてよかった。


「とにかく最高の肉を提供してくれたお前さんにはそれなりの報酬を渡す。それがギルドマスターとしての矜持だ」

「えっ!? ギルドマスター?」

「なんだ、お前わかって声をかけたんじゃねぇのか?」

「いえ、あの魔物の量で正面から入るのは気が引けただけです」

「くくく、運も持ってやがんのかつくづく面白いやつだ。ヒースと言ったな。しばらく滞在するなら、じゃんじゃんファイアーバードを持ってきて。高価買取中だ。金額を弾むぞ」


 ハザマのギルドマスター直々のお言葉に、俺は嬉しくなる。


「できるだけ頑張ります!」

「おう、頼んだぞ」

「あっ、それと宿屋っていいところありますか?」

「それならここから真っ直ぐ言ったところに鳥の看板が見えるだろ?」

「はい」

「火の鳥亭のファイアーバードの唐揚げとエールは絶品だぞ」


 ついつい涎が落ちそうになった俺は駆け足だ火の鳥亭の宿泊を決めた。

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