最終話 センパイ!買わせてください!

☆☆☆帰路


後夜祭も終わり、夜遅いこともあって、真子を家に送っている。


「真子。今日の文化祭楽しめたか……?」


「はい……初めてでしたけど、先輩と過ごした文化祭でしたから……その、全部が楽しかったです」


「よかった」


「それに、せんぱいが……プロポーズしてくれましたので……私野田さんに前向きな方向で話してみようと思います……」


すると真子は腕に抱き着いてきた。


「英語覚えないとな……」


「私も汚い配信とかだと英単語ぐらいしか会話で使ってなかった気がします」


放送コード的に大丈夫かなってこと言ってたよなクロスローズ……


「それに、あっちでできる仕事ってあるのかな……」


「先輩は私に永久就職してほしいです……その、二人で働かなくてもいいんですよ。せんぱいは家に居てその家事とかしてくれたりとか……帰ったら先輩がいてほしいので……」


「え、俺ヒモになれってこと……? いや、流石にそれは、真子に負担かけたくないし……」


「その、それでもいいんです。先輩と一緒に居られる時間が欲しいので……先輩が働いてたら一緒に居る時間が減りますから……お金は私が出します……あれ、これ振出しに戻ってますね……あの雨の季節から始まったんです」


そう、俺達の関係が始まったのは結局お金だった。


「私は先輩と一緒に居られる時間をお金で買いました。その、最初は本当にチャンスだって思ったんです。不謹慎ですけど先輩がお金に困ってるなら……私ゲーム以外の趣味とか特にないからお金使い道なくて……先輩といられる時間にお金を費やすことがその……」


「真子……」


「その結果。先輩との距離は近くなったわけで……その……先輩は私に買われるの嫌でしたか……?」


「う~ん……それはその、なんか申し訳ない気持ちになってた。こんなにいい思いしてお金貰えるのは変だなって……真子は俺がクロスローズに赤投げ銭した時どう思ってた?」


そう、どうしてもお金を貰えることをしてないと思ってしまうのだ。ちなみに『結婚してください』と言うメッセージ送るのに毎回一万以上はつぎ込んでいる。


「あ、それはなんで私なんかに投げ銭してるんだろうって思いますね……」


「そういうこと。なんか真子を利用しているみたいな感じがね……俺は真子の隣に居たいのに、半歩下がって後ろにいる気持ちになるんだよ」


「……いっぱい利用してほしいです……あっ、そういうことです……私。せんぱい推しだったんですよ! だから私先輩にならDVとかされても全然嫌じゃないと思うんです。せんぱいならクズ彼氏でもそれはそれで素敵で……」


真子ってそういうとこあるよな……


「いや、流石に暴力は振るわないよ。あと真子はさ。その、悪い男に騙されたいタイプなの……?」


「そうですね……先輩にならちょっといじめられてもいいというか……せんぱい……ちょっと、強引に腕掴んで引っ張ってもらっていいですか……」


「……分かった。こう……かな?」


真子の腕を少し力を入れてこちらに抱き寄せる。


「……ぴゃあっ……先輩凄く力強い……こんなの一瞬だって抵抗できないです……絶対に支配されちゃいます……せんぱい……せんぱい……」


真子の顔は火照っている。かわいい。


「真子って……M?」


「……そうみたいです……でも、せんぱいだけですから……そんな気持ちにさせてくれる人って……だから、せんぱいからされることなら、私全部受け入れちゃいますよ……せんぱい……」


……反則じゃん。それ……


そうしていると、真子のマンションに着く。


☆☆☆真子の家


言葉で確認もないまま俺も家に上がっていた。というより、真子もそのつもりだったのだろう。


部屋に入った途端に玄関で抱き着かれる。


「せんぱい……せんぱいせんぱいせんぱい~~~」


首筋にキスをしてきた。本当に甘えんぼである。


「真子……」


そのまま真子をお姫様抱っこの要領で持ち上げる。凄く軽かった。


「ぴゃぁ……せ、せんぱい……重くないですか……?」


「前背負った時もそうだけど、細いから軽くていいと思う」


「よかった……」


「でも、心は重いかもな~俺への愛情が凄く重い」


「せんぱいだって重いですよ~~~!」


すると二人で笑い合う。


そのままソファーに座る。


「ところで、先ほどの回答はぐらかしたままですね……せんぱい」


真子は抱き着いたまま放さない。


「なんのこと?」


「先輩は……私に買われるの……好きですか?」


そう、結局のところここに行き着くんだ。俺達の関係は……


「今は真子に買われてよかったって思ってる。真子があの時俺を引き留めてくれたから、こうして恋人同士になれてるわけで……」


あの時は借金を背負ったため、部活に顔を出すことをやめようとしていた。そのままバイト生活に明け暮れようと考えていたが……


「よかった……あの時の私……勇気出して良かったです」


「真子が勇気出してくれたからだよ。正直もっと過酷な『お願い』されると思ってた。奴隷の様に扱われると覚悟していたんだけど……」


「せ、せんぱいを奴隷扱いなんてできませんよ! その、キスしてとかは『お願い』しようかなって考えたことありましたけど……」


考えてたんだ……


「でもそれで、先輩に嫌われたりしたら死ぬので……我慢してました」


我慢してたんだ……


「ほんとに……私。これからもせんぱいと一緒に居られるんですよね……」


「うん。俺も真子と一緒に居たい。ずっと一緒にいよう」


「……はい。せんぱい……私を選んでくれてありがとうございます……」


これからも俺達の日常は続いていく。問題は山積みだ。


だけど、隣に最強プロゲーマーに真子がいてくれれば乗り越えていける。それに俺は世界に羽ばたく真子の夢を応援したい。


そのためだったらどんなことだってできるんだ。きっと躓くことだってあるに違いない。別の国で生きていくというのは生半可なものではないのだ。


「真子……愛している」


でも、真子の愛があれば俺は大丈夫だ。


「はい。私もせんぱいを……愛してます……!」


俺達はそのままキスをした……


――完



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