第49話 後夜祭

☆☆☆結果発表


文化祭も無事に終わりを迎え、各自のクラスに戻った。


「流石バイトマスターだ! 僕達の執事メイド喫茶は大成功を収めたぞ! 一位だ一位!」


集計の結果。俺達の執事メイド喫茶は売上一位だったらしい。それも全て池谷が頑張ったからであり本人は干からびていた。


「もう……執事喫茶は勘弁してほしい……俺は……やだ……」


皆が池谷を労う中。鈴木はもぞもぞしていた。というのも後夜祭で山本さんに告白するらしい。


「武野は……どうやって告白したんだよ。参考までにき、聞かせてくれ」


「成り行きでなったから何とも言えないけど、俺達の場合は両想いだったから成功はほぼ確定していたわけで……」


というか、さっきプロポーズまでしたんだよな。ずっと一緒に居たいって……


「とにかく当たって砕けろ。後夜祭のことで忙しいんだ……」


後夜祭は真子と会う約束になっている。


「武野……お前ほんと彼女のこと優先するよな。友情ってものがないのか……」


まあ、鈴木のことはどうでもいい。俺は俺の目的を果たすため教室を離れた。


☆☆☆後夜祭


執事服を脱いで制服に着替えると、そのまま体育館へ向かう。真子が笑顔で待っていた。


「せんぱぁい……会いたかったです~! やっぱ制服姿もかっこいいです!」


「俺も会いたかった」


「せんぱい……せんぱい……えへへ……」


そして、真子は一際甘えん坊になっていた。正直に言うと滅茶苦茶かわいい。


やがて、後夜祭に参加する生徒達が集まると、生徒会長が挨拶をした。今年の文化祭は俺個人としても最高に楽しかった。(彼女がいたからだろうが)


どうやら、催しでゲーム大会が開催されるらしいが……


「私は参加しませんね……その、あまり目立つのは得意じゃないですし……」


「今はクロスローズじゃないからね、それに真子が出たら優勝は確定だし……一方的なゲームになりそう」


「流石に手心は加えますけど……先輩が私の実力認めてくれて凄く嬉しいです」


「自慢の最強彼女だからな」


「せんぱ~~い~~~」


真子が抱き着いてくる。すると……


「あ、バカップル発見! 柴橋さ~んいたいた~」


そこに、先ほど怒られた佐奈川さんが来る。


「あ、佐奈川さん。どうも、私達に何か用事が?」


「柴橋さんはゲーム大会参加しないの? 凄く強かったから」


佐奈川さんも真子の実力知っているのか。


「さっきも言ったけど。絶対優勝しちゃうからしないよ~」


「優勝することは前提なんだ……でも、柴橋さんの実力なら分かるけど……そういえば優勝すると、文化祭で手芸部が作った衣装好きなの貰えるらしいよ?」


「……え、真子出ない」


手芸部はいろんな衣装を作っている部活だ。今回もクラスのコスプレ衣装を作ってくれていた……素人から見ても縫製がしっかりしていた。となれば……


「……何でですか!?」


「い、いや、真子のお化け衣装凄く可愛かったから見たくて……他にもメイド服とか着てほしい……」


俺が提案すると……


「します。優勝します……! 先輩に求められたのならば!」


すると、ありもしないフードを被ろうとする仕草をする。クロスローズのスイッチ入っていないか……?


「彼氏さんがお願いしたら一瞬で意見変えた……流石柴橋さん……!」


真子はゲーム大会に参加することになった。


「さぁ、始まりました! 後夜祭のメインイベント! シマブラゲーム大会! 勝てば手芸部の衣装が手に入ります! や! 太っ腹手芸部! 実況は放送部が担当します!」


歓声の中ゲーム大会は始まった。


☆☆☆優勝


まぁ……結果は言わなくても分かる通り、真子の圧勝だった。数々の自称猛者が参加したのだが……当然。歯が立たない。正直大人げない勝ち方をしていた。


真子は魅せコンを駆使して、いとも容易くに敵を葬っていく。


圧倒的な実力にその場にいた生徒達も声を出せず唖然としていた。放送部の実況担当の人すら唖然としていたし……


「え……あ……ゆ、優勝は一年生の柴橋さん! おめでとうございます! 圧倒的試合に皆さんも驚きを隠せていません!」


「すみません。では、これで失礼します。衣装が欲しいので……」


「ちょ、ちょっと柴橋さん~優勝者のコメントは……」


「ありません」


「「「「ええぇぇ……」」」」


こうして真子は恥ずかしがりながらも、ゲーム大会に優勝したのである。


「先輩! 優勝しましたよ~~! せんぱぁい!」


そして俺の元に笑顔で帰ってくる。


「本当に圧倒的だったよ。凄かった……真子はやっぱ凄いよ。優勝おめでとう」


「先輩が応援してくれたので凄く頑張りました! その、衣装も何着か……先輩の着ていた執事服も貰ってきましたよ……あと見たいって言ってくれた服も……その……二人きりの時に着ませんか……?」


……無言でうなずいた。真子って俺が頼んだら何でもしてくれそうだよな……


そしてこの後も後夜祭は続き二人で過ごしていった。真子は『シマブラの悪魔』と呼ばれて一瞬有名人となったがすぐに風化していくだろう。


ちなみに鈴木の告白は無事成功したらしい。これでもう小言を言われずに済む。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る