第48話 二人の未来

☆☆☆決意


俺達の関係は着々と進展している。手だって繋いだし、抱きしめたりもしたし、キスだって済ませた。


真子が訊いているのはキスの先のことで間違いない。胸を押し付けたりというのも彼女なりのアピールだったんだ。


真子はその先のことをしたいと考えてくれているのだろうか……


「……それとも、先輩はそんな気がないとか……ごめんなさい。私に魅力がないから……私の胸じゃ……小さいですし……先輩は……」


「……真子は凄く魅力的だ。その……真子。俺も男子だから当然そういう気はある。抱きしめたりとかキスとかしているけど、それ以上のことだってしたい……」


正直に話した。


「せ、せんぱい……それは……」


「でも、それ以上に俺達の関係をしっかりしたいと思っているんだ。そのさ『将来』のこともあるし……」


「将来……ですか……?」


「真子は高校を卒業したら、どうするとか決めているの?」


これはマネージャーの野田さんから聞いた話だけど、クロスローズはいずれ世界進出を目標としているらしい。


だが真子は海外に行くのが怖くて日本でやっていきたいらしいが、現状で釣り合う実力者が国内にいないのは大会を見ていれば分かる。


「野田さんから聞いているかもしれませんけど……海外でゲームをやるという話をしていまして……一応プロゲーマーですので……」


「うん。聞いているよ。クロスローズの実力を見ていれば当然だ。それに世界へ出ることが不安だろうってこともさ、真子のことだから……」


「……私一人の時はその……高校を卒業か中退したら海外も悪くないって少しだけ思っていたんです。でも、今は先輩と一緒に居る時間を大事にしたくて、海外の進出を断ろうと思っていて……」


やはり、俺との時間を大切にしたいと言ってくれていた。素直に嬉しいのだけど……


「そのさ、俺は真子の恋人だけど、クロスローズのファンでもあるんだ。俺との時間を取ってくれるのは凄く嬉しい。でもさ……真子は世界に行って見たいと思わないの? クロスローズとしてゲーム世界でトップに上がりたいなんてことはないかな」


「そ、それは……」


「俺のことは抜きにしてくれていいんだ。真子がどうしたいか知りたい」


「……世界でやってみたい気持ちはあります……その、大変だとは思うんですけど……ゲームは好きですし……でも先輩の方がもっと好きですから……一番を大切なものは先輩です。だから……ゲームか先輩を選ぶとすれば……私は迷わずに先輩を選びます」


それが真子の答えか……ならば……


「俺は真子の重りになりたくない……俺がいるせいでクロスローズが世界に羽ばたけないとかそういうのが嫌なんだ。真子が俺のことを選んでくれるのは死ぬほど嬉しい……でも……」


「……せん……ぱい……まさか……? わ……別れ話……」


真子は青ざめて泣きそうな顔に……あれ、これどこかで……


「――落ち着いて、別れ話をするつもりはないから。死んでも別れたくないし」


以前の失敗は起こさせない。


「そ、そうなんですか……でも……私は先輩が重りなんて考えていませんから……むしろ私の方が重りになっているか心配なくらいで……」


「俺は真子がゲームしている所好きなんだ。だから俺が原因で世界に出ないとか、俺自身クロスローズのファンとして許せない……その、だからさ……」


だからこそ言う。


「もし、真子が海外に行くって決心したら、俺もついていくから……それぐらいの覚悟はもうできてる。真子の夢を応援したいんだ。だからさ……真子は真子のやりたいことを選んでいいんだよ」


「せん……ぱい……」


「と言っても、高校卒業するまで俺は一年ちょい。真子は二年あるんだから、もっとよく考えてからでいい。真子がどこに居ようが俺は付いていくから。これからもずっと真子と一緒に居たいんだ」


俺の気持ちは言えた。


「……せんぱい……それって……もう、プロポーズですよ……せんぱい……」


「うん。そう解釈してくれていい。だから、真子。それが俺の答え。ちゃんと『そういう』気持ちもあるけど、『そういう』関係になるのは、真子の夢が叶ってからでもいいと思っている……んだけど、さっきみたいなことやられたら、抑えられないから控えてくれるとありがたい……」


「せんぱい……大好きです……ほんと、私のこと考えてくれて……せんぱぁい……」


「真子は……これからも一緒に居たいと思ってくれるかな」


「当然です……! せんぱい……せんぱい……」


すると、真子は再び涙を流し抱き着いてきた。


「好き……大好き……愛してます……せんぱい……せんぱい!」


「……私。世界大会で一番になりたいです……せんぱいがそう言ってくれるなら、私挑戦したいと思います。きっと大変だと思うんですけど……せんぱいがいてくれれば私いくらでも頑張れると思うんです……せんぱい……せんぱぁい……好き……」


真子の頭を撫で続ける。


「……改めてこれからも一緒に居てくださいね……せんぱい……」


その後PC部には人が入ってこないのでキスした。そして文化祭をもう一度回り、色々な食べ物を食べた。


真子はその間もずっと幸せそうな笑顔をしていた。やっぱり、真子の笑顔可愛い……


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