第47話 お化け屋敷で猛アピール
〇〇〇お化け屋敷
「それでは行きましょうかお嬢様……」
そのまま暗闇の教室へ入っていく。
「せ、先輩。手つなぎたいです」
「……今回だけ特別ですよ。お嬢様。腕を貸します」
せせせ、先輩!? 普段なら二つ返事で頷いてくれるが、今は執事という立場であるため直接的な接触を避けている。そ、そこまで徹底しているとは……
私はそのまま先輩の腕に抱き着く。
そのまま暗闇の中をゆっくりと進んでいく。先輩は私の歩幅にいつも合わせてくれて凄く歩きやすい。
あぁ、執事に守ってもらうシチュエーションを先輩が再現してくれてる……嬉しい……嬉しい……
先輩……先輩……そのいいよね……怖がってるふりすれば……お化け屋敷なんだから……あと二秒後にお化けが出てくる。
「ぐぉぉぉ!」
「きゃーこわいです~~~せ~んぱい~~~」
そのまま先輩の腕に大して大きくもない胸を押し付ける。
「……!」
一瞬。先輩の腕が硬直する。
「お、お嬢様。お怪我は御座いませんか?」
先輩の声動揺してる……可愛い……もしかして、私が抱き着いたからかな。だとしたら凄く嬉しい……もうちょっとだけいいよね……
「だ、大丈夫です。先輩が守ってくれましたから……先輩……もっと私のこと守ってくれますか?」
ぐいぐいと押し付ける。えいえい……
「と、当然です……真子お嬢様は私の命に代えても守りますので……!」
「ありがとうございます……先輩……」
最高過ぎる……もっと……もっと……
この後。確かもう一人お化けが出てくるので……
「ぐぉぉぉ!」
よし来た! そのまま……
「きゃ~~~怖いです~~~~先輩~~~~せんぱいせんぱい~」
先輩に胸を当て続ける。先輩との距離が近い。すると、先輩が硬直する。
「……あーごめん。真子。もう無理……」
あれ、先輩敬語じゃない……え!
そのまま強く抱きしめられた。
「せ、先輩……っ!?」
先輩はキスをして……突然のことすぎる!?
「真子……そういうことやめてほしい。その、我慢できなくなるから……あれだけ守るって言ってんのに……俺が襲う側になるから……」
……私何してたんだろう。とんでもない大胆っぷりだ……先輩の腕に胸を当て続けるなんて……!
「ごめんなさい……せんぱい……つい……」
「流石に許さないからもう一回する……真子……」
先輩が顔を近づけてくる。好きすぎる!
「どうぞ……せんぱい……ちゅ……」
「真子……真子……」
「せんぱい……せんぱい……もっとキスしてください……」
先輩好きすぎる……先輩大好き……
「う~~~ら~~~め~~~し~~~や~~~……え、柴橋さん……先輩さんも……え、こんなところで……?」
あれ、まだ出てくる場所じゃないはず……どうして佐奈川さんがこんなとこに……
「「あ……!」」
そして、キスしている所を佐奈川さんに見られた……
「……ちょっと奥で話聞こうか二人共……!」
笑顔の裏に怒りを感じた。佐奈川さん……キレている!
「「ごめんなさい」」
☆☆☆説教
真子の友人である佐奈川さんに控室まで連行された。
「あれ……でも、佐奈川さんってこの時間お化け役やらないのにどうして……誰も出てこない時にいちゃつこうと思ったのに」
……真子。計算してあれをしていたのか……
「それは、君達みたいなバカップルが変な気起こさないか取り締まっているからだよ。いくら暗闇だからって見えるものは見えるんだからね。ちなみに二人以外で五組ほどいたよ」
同じ考えの人がいたのか……やっぱり暗闇って開放的になるのだろうか……
「それに関しては俺が悪いんだ。真子を責めないでやってくれ、咎は全て俺が受けるから」
「いいえ! せんぱいは悪くないんです! そもそも私が出来心でその……胸押し付けたのが悪いんです!」
……やっぱり気のせいじゃなかったんだな。本人の口から聞くと破壊力がある……小さいけど柔らかったな……
「え、柴橋さん大胆……私の提案を今になって実現したんだ……じゃなくて! それはお化け屋敷じゃなくてもできるでしょ! 先輩さんもまんまと乗っかっちゃダメでしょうに!」
佐奈川さんが真子に胸を押し付けること提案したのか……? 正直ありがたいけど……
「……二回は我慢できたんだ。二回は……もう三回目でだめだった。俺は執事失格だ……」
「え、じゃあ、我慢してなかったら一回目で襲われちゃってたんだ……嬉しい。先輩そんなに私のこと求めてくれるんですか……執事さんかと思ったら狼さんって素敵ですね……」
頷く。正直滅茶苦茶求めるよ。今でも我慢してるぐらいなんだから。まぁ現に狼になってしまったのだが……真子可愛い……
「真子……」「せんぱぁい……」
「そこいちゃつかない! お腹いっぱいなんだよ。とにかくそういうのはちゃんと二人きりでやる分には私文句言わないから! むしろ応援してるし!」
「「すみませんでした~~~~~!」」
☆☆☆部室へ
佐奈川さんの説教が終わり解放される。そのままのんびりと人気の少ないところへ向かう。
「ごめんなさい……私のせいで怒られてしまって……」
「正直佐奈川さんが止めてくれて助かったと思ってる。俺も冷静さを失ってたんだ……ほんとごめん……急にキスなんて……」
「いえいえ、キスは嬉しかったですから……!」
気まずい……あんなにキスをしてたから少し距離が出来てしまった。何か明るい話でもしようかと思った。するとPC部に着いた。
幽霊部員しかいないPC部には当然出し物は存在していない。だから部室は自由に空いているので、二人きりになれた。隣同士椅子に腰を掛ける。
「先輩と初めて出会ったところです……あの時先輩が声をかけてくれなかったらって思うと……ほんとPC部に入って良かった……」
「うん……」
すると真子が口を開く。
「も、もし……胸を押し付けたのが……わ、私の家で二人きりだったら……先輩はどうしてましたか……? き、キスの続きをしてくれましたか……?」
その質問の意味は……きっとそういうことなんだろう。
「……こ、答えないとダメか?」
「『命令』です。今の私は『お嬢様』なんですよね……あ、喋り方はいつも通りで大丈夫ですよ……」
せこ……どう答えればいいんだ……俺は!
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