第44話 文化祭に向けて

☆☆☆昼休み


当然であるが、昼食は真子と食べることになっている。昼休みに入ると食堂で待ち合わせをしていた。


「せんぱい~~お久しぶりです~~今朝方ぶりです~~~」


そして俺の彼女である。天使が来た。


「うん。久しぶり……真子……」


「せんぱぁい……」


今すぐ抱き着きたいけど、ここは人の目がある。我慢だ。我慢。


「じゃ、一緒に食べようか、ちょうど席は……」


「えっと……階段裏とかで食べませんか……その……二人きりが良いです」


二人きりになれる場所……うん。俺もそうしたかった。


「うん。そうしよう。少し暑いかもしれないけど大丈夫?」


「はい、暑ければ暑いほど……せんぱいの匂いいっぱい嗅げますし……」


真子は匂いフェチなことを忘れてた。


二人で人気の少ない階段裏へ向かう。少し埃っぽさがあるけど、一応ご飯を食べるには……いや、いちゃつくにはここがいい。


椅子が何個かあったので隣同士で座る。机がないため足に弁当を乗せた。食堂より不自由だけど二人きりになれる利点が大事だ。


「「いただきます」」


各自が用意した弁当を食べてる。真子の弁当はやっぱり美味しそうだ。いや、そうじゃない……二人きりで食べたいと言ったのなら、多分……


真子もしたいはずだ。


「……あ~んしてほしい」


夏祭りデートでは俺がするだけで、してもらってなかった。だから真子にあ~んしてもらいたいのだ。


「せんぱぁい……私のこと求めてくれて嬉しいです……は、はい……ど、どうぞ……」


真子は弁当にある卵焼きを一つ箸で掴むと……


「せ、せんぱい……あ~~~ん……」


そして口に入れる……うん。


「最高に美味しい……最高……」


「わ、私もしてほしいです……」


俺も弁当から卵焼きを取ると真子の口に……


「真子……あ~ん……」


「美味しすぎます……せんぱぁ~い~~せんぱいせんぱい~~」


すると、食べてるにもかかわらず真子は抱き着いてくる。拒まずに頭を撫でた。


最高過ぎる……あぁ、彼女が最高に可愛い……


そのまま昼食を終えると、ハグし合う。


「そういえば真子。今月の後半に文化祭あるよね、そのさ、一緒に回りたいんだ」


「私も一緒に回りたいです……せ~んぱい……すりすり……すーは~良い匂い……好きな匂いですぅ……」


一緒に回る約束はした。少し汗をかいてるから正直匂い嗅がれるの恥ずかしいんだよな……真子が喜んでくれるならいいんだけど。


「真子のクラスは出し物決まったの?」


「いえ、まだです……そもそも文化祭自体初めてですから、勝手がわからなくて……先輩の方は決まっていますか?」


そうか、真子は文化祭したことなかったのか……


「俺の方も決まってないよ。でも、真子は初めての文化祭だから最高なものにしたいなって思う。学校でも思い出作っていきたいし……一緒に楽しみたいんだ」


「せ、せんぱぁい……これ以上好きにさせないでください~~~せんぱい~せんぱいせんぱいせんぱ~い~~」


結局昼休みが終わるまでずっといちゃついていた。


☆☆☆文化祭の出し物


そのまま午後のHR。今回は文化祭の出し物についてだ。実行委員の川上が仕切っている。


「しかしバイトマスターよ随分幸せそうな顔しているではないか。昼休みに良いことでもあったのか?」


「それより出し物だろ。今年はどうするんだ?」


「僕はデータ的にも実績的にもクラスの売り上げを一位にしたいからたこ焼きが良いと思っている。調理も簡単だし、何よりもたこ焼きバイトの経験者バイトマスターがいるからね。君が作ってくれるのなら味は保証されたも同然だ」


たこ焼き屋でバイトもしていたけど……いやいや……


「おい、それだと、俺が一生厨房に入ってることになるぞ。俺の自由時間はどうするんだよ」


なるべく、当日は真子と一緒に文化祭を回りたい。明らかに拘束時間が長いポジションに着きたくないのだが……


「それの何が不服かい? 文化祭で一位を取るには避けては通れない道だろう。僕のデータもこれが最適解だと言っている。データに従うのが僕達だろう」


「そうだそうだ。武野が厨房に入ってれば一位獲れるだろう! お前はナンパしないって言ってたし暇なはずだ!」


鈴木……お前彼女持ちの俺に嫉妬してるだけだろう。


「ふむ、鈴木もデータを持ち出してくれている。どうだバイトマスターよ、君がたこ焼きを作ってくれればクラスの売り上げが上位に行く確率が一番高いのだ。納得してくれるとありがたいのだが……」


「いや、バイトに何を求めてるんだよ。女子は良いのか女子は提案あるだろう?」


「え~私は~砂集めがいいと思う~砂の良さをみんな知るべきだよ~たこ焼きに砂入れていい?」


それ個人の趣味だろ小林。


「絶対にたこ焼きに砂入れたらダメだからな小林」


「えっと~わたぴは~彼ぴっぴといちゃつきたいから~なんでもいい~」


「それには同意見だけど……! 川上。俺は別に協力しないとは言ってない。だけど、俺にだけ仕事が集中する状況を避けたいんだよ」


「なるほど……たこ焼きはキャンセルだと……ならばそれ以上の提案があるのだね? バイトマスターよ……」


そんなのあるわけ……あ。そこで池谷と目が合う。運動部は文化祭で出し物はないので池谷もそんなに忙しくないだろう……池谷はイケメンだ……ならば……


「執事かメイド喫茶はどうだろうか? 池谷いれば売り上げ伸びるだろうし」


「まさか!? そんなデータ僕にはなかった!?」


「え、武野。なんで俺が執事……?」


「「「「「「賛成!!!!!!!」」」」」


女子の圧倒的賛成。


流石に執事喫茶のバイトはしたことがないが喫茶店ならある。どうにかなるだろう。


「川上の提唱した。たこ焼き屋なんかより、池谷君の執事喫茶の方がお客さん入るよ! 池谷君どう? やるよね! よしやろう!」


女子の圧力……おそるべし……


「俺は構わないけど……でも、俺で大丈夫かな? 執事とかよく分からないけど」


「そ、そ……そこはわ、私が教えますので執事の所作とか詳しいですから……!」


授業中ず~~っと絵を描いている眼鏡の山本さんが池谷に話しかけてる。明らかに執事とか詳しそうだもんな……


「分かったよ。でも言ったからには武野も執事服着てもらうよ、他の男子もだ」


……たこ焼き作りで軟禁されるよりはマシだろう。これで真子との時間も取れる。


「うん。その覚悟は出来てる……」


「待てよ……俺が執事服を着たらもしかしたら女子にモテる可能性がある……ナンパも成功する確率が……完璧じゃないか!」


鈴木は何を言ってるんだ。


「執事はそんな邪な心を持っていませんから、鈴木君貴方何を言ってるんですか? 出会いの場を求めるために執事を利用してもらっては困るのですけど!!!! 大体執事の心得として……他の皆さんもです! 執事喫茶に決まったからには私が指揮を取ります! 良いですね!」


山本さん怖い…… 


「ごめんなさぁぁぁい!」


こうして俺達のクラスは執事喫茶に決まったわけだが……


……真子のクラスは何に決まったんだろう。そっちの方が気になる。

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