第37話 ゲームイベントでハプニング!
☆☆☆ゲーム大会
八月中旬本格的な暑さが増していく。電車に揺られながら一人であるイベント会場へ訪れていた。
今日はGDOの大会が行われている。運よく観戦チケット二枚手に入れたので柴橋を誘おうとしたのだけど……
~~~二週間前に遡る~~~
チケット当落の日。当選メールを俺は受け取るとテンションが上がる。
「よっしゃぁ! 次のデートは柴橋が好きなGDO大会だ。話題も尽きないはずだ……誘うぞ!」
GDOグッズも恐らく販売しているだろうし、好きなゲームだから気まずい雰囲気にもならないだろう。
っふ……なんて完璧なデートプランなんだ……
『柴橋。来週の日曜日予定空いてるか?』
『ごめんなさい! その日はどうしても外せない用事があるんです。別の日なら空いているのですけど……』
……うそーん……柴橋とイチャイチャデートしたかった。だけど、仕方ないか、先に柴橋が予定を入れているとは計算外だった。うん。いいんだ……柴橋にだって外せない用事があるんだ。
多分家族で会うとかなんだろう……
『気にしないで、うん。それじゃ今度のデート場所どこに行きたいとかあるかな?』
とりあえず話題を反らした。
『先輩と一緒ならどこにいても幸せです。大好きな人と一緒に居られますから』
ほんと可愛いなこの後輩……少し従順過ぎないか!?
『今すぐ抱きしめたくなるから、そういうこと言うの禁止』
『抱きしめてほしいから言ってますから!』
~~~回想終わり~~~
とのことで、今俺はゲーム会場に一人でいるのだ……正直寂しい。だけど今日は推し配信者でプロゲーマーのクロスローズが大会に参加する。
生で見るのは今日が初だ。顔出しNGだけど生で同じ空気を味わえるのはファンとして嬉しい。
というか、柴橋と一緒に見てたらクロスローズにどういう反応すればいいんだろう。
気持ち悪い反応しそうだし……断られてよかったかな。
だけど、柴橋とイチャイチャしたい気持ちの方が強かったのも事実。
今回は運が悪かっただけだ。とりあえず日本大会を楽しもう……
まだ開始までは時間あるしグッズとか買おうかな……そもそも今日の格好はクロスローズが普段被っているパーカーを身に着けている。
赤い薔薇と青い薔薇のツタが交差しているデザインとなっている。
これを身に纏うということは完全にクロスローズファンである証だ。
「あ、新作グッズ出てるじゃん。スポーツタオルか~~まぁ買うんだけど……」
意外にもクロスローズは人気ある。物販の列も結構並んでいた。
スポーツタオル完売しないかな。凄く不安だ……
三十分ほど並びお目当てのタオルを手にした。首から掛けられる。
よし、装備も万全だ。全力でクロスローズの応援が出来る……
もうそろそろ試合開始の時間だ。クロスローズの出番はまだ先だが最初からしっかり見ておこう。
柴橋も三回戦ぐらいまでなら勝ち残れそうな実力してるよな。むしろ、今日断ったのって柴橋も大会に出場するからだったりして……だとして、どうして断るんだろう。内緒にする理由だってないし……
まぁ、柴橋が大会に出場しているなんてことはないだろう。あー柴橋とデートしたかった……
「ぴゃ!?」「うお!?」
すれ違いざまに女性とぶつかった。急いでいたみたいだ。堪えたせいかぶつかった反動で女性は倒れてしまった。
「ごめんなさい……怪我はないすか?」
女性は小柄で俺と同じくクロスローズのパーカーフードを深く被っている。
それは、クロスローズのファッションと同じだ。
「……い、いえ、大丈夫です……こちらこそ周囲を確認せずに走っていたので……え?」
すると、フードが反動でずり落ちる……その顔に見覚えしかなかった。
「え……柴橋……?」
そこにいたのはクロスローズのパーカーを着た柴橋だった。
「せ、先輩……!?」
☆☆☆クロスローズ
柴橋はクロスローズのパーカーを着ていた。よく見ると格好もまんまクロスローズだ。
「あぁ。なんだ予定って……」
なんだ。柴橋もGDOユーザーだから既にチケット取ってあったんだ。だから、ダブルブッキングしちゃったようなもんなのだろう。
でもゲーム大会に負けたのか俺のデート……気にしないでおこう。
柴橋はすぐにフードを被り直した。
「え、え……どうして、先輩がここに……え、そのパーカーえ、クロスローズ!? ……それに新作グッズのタオルも首に……え!? え、えぇ?」
何故か柴橋がテンパりだした。周囲の視線はこちらに向いている。
「ご、ごめんなさい。せ、先輩ちょっとこっちにお願いします……」
「え、柴橋……?」
すると柴橋に手を引っ張られた。人通りが少ないところに連れていかれる。
「はぁ……はぁ……久々に走ったので息切れを……ごめんなさい。急に走らせてしまって……!」
「いや、怒ってないから大丈夫だよ。それよりも……」
「あ、あのこれはですね……まず私がどうしてこんなところに来ているかってことですよね。せ、せっかく先輩がデートに誘ってくれたのにそれを断るほどの予定なんて! 世界に存在しないって私は言いたかったんですけど……」
「何もそこまで……でもそう言ってもらえると嬉しいな」
しかし、柴橋の格好を見るとクロスローズ一式身に纏っているんだな。フードの被り方もまんまそれだ。それから導かれる答えは一つだ……
「ごめんなさい……先輩。この姿を見られてしまったからには……そのですね……」
この姿を柴橋は見られたくなかった。……っは。なるほど全てが分かったぞ。
確かに言い出しづらいよな……俺も言い出しづらかったから気持ちは分かる。柴橋の肩に両手を乗っけて励まそう。
「大丈夫だよ。ほら、俺の格好見ればわかるだろう。だから安心していいんだ。遠慮なく俺に言ってくれ! 俺も流石に鈍くないから気付いている」
「せん……ぱぁい!」
泣き出しそうな柴橋が笑顔に変わった。よし、この流れなら柴橋に引かれる心配はないだろう。俺の恋人最高……!
「柴橋もクロスローズのファンだったなんてさ!」
「ごめんなさい。わ、私がクロスローズなんです!」
被った。でも言ってることが違うような……クロスローズ……?
「……え?」「……はい?」
……え? 今何て?
「え……柴橋?」
「その手がありましたぁあぁぁぁぁぁぁぁぁ! ぴゃあ……」
「……えぇぇぇぇ!?」
「せせせ、先輩!? ぴゃあああああああああああ!」
柴橋が……クロスローズ……?
「ごめんなさぁぁぁい!」
そのまま手を引っ張られ関係者入り口へ、クロスローズの控室に押し込まれた。
……柴橋が……クロスローズなのか?
だとしたら、推しが恋人ってことじゃないか!
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