第29話 先輩との出会い
〇〇〇高校入学
これは私が高校に入学した時の話。
中学時代は一回も通わずに卒業した。両親は私のダメな性格を理解してくれているため、引きこもっていてもやることさえやっていればあまり口出しをしてこなかった。
だからこそ、一人暮らしをしたいと言った時は凄く驚いていた。
このままでは良くないと……一人暮らしを決めた理由は、こんな状況を一刻も早く脱却するため一人になることを選んだ。
元々学校に行かない間も独学で勉強はしていたので、受験自体は苦ではなかった。
知り合いがいないように地元から離れた高校を選ぶ。
その後。一人暮らしの相談を両親として、セキュリティがしっかりとしたタワーマンションに住むことが決まった。
両親とは凄く仲が良いけど、やっぱり未だに心配があるようで連絡や仕送りをくれる。
正直お金に関しては困っていない。一応蓄えはあるので……
やがて春になり入学式が訪れた。慣れない制服を着て鏡を見る。相変わらず私可愛くないなと思った。他人と顔を合わせるのが苦手だから前髪も伸ばしているし、ゲームのやりすぎてクマもできて猫背だし……かっこ悪い……
「はぁ……」
三年ぶりの学校。正直怖い。またいじめられたりしたらどうしよう。
一応選んだ高校を調べたけど、いじめはない感じだった。でも実情は通ってみないと分からないし……
うぅ……恐ろしい……
結局入学式も一人。私は得意の存在抹消を使いクラスでも目立たなくなっていた。
自分から誰かに声をかけるなんてできるわけなく、存在すら気付かれないまま日々は過ぎていく。
結局友達なんて私にとっては夢物語だった。
うぅ……学校辞めたい。正直。もう義務教育じゃないし……
やがて授業が始まった。何もない時間が流れていく、ここは部活に入ることが必須らしくて私もどこに入るか考えていた。そんな時見つけたのがPC部だ。
PC部は比較的自由らしくてゲームが得意な私でも、もしかしたらやっていけると思っていた。ゲームが好きな人だっているから、仲良くできるかもしれないという希望を抱いて……
夕暮れと共に放課後が訪れる。初の部活……!
だけど、PC部は事実上の帰宅部らしくほぼ幽霊部員だった。結局部室で一人になる。何人か来ている部員もPC使って変なサイトを見ていたりして。あの輪の中に入るのは無理だった。
結局。私から誰かに声をかけることはなかったし……私に勇気がないのは分かっていたけど……やっぱり、変われなかったんだなと精神的にも追い詰められてた。
やめようかな。両親だって許してくれるはず……そもそも、高校に行こうと思っただけで努力したんだ。
ため息吐きながら私はGDOというスマホでできるFPSを開いた。やっぱりゲームをやっている時は落ち着いてる。
何も考えずに敵をキルしていけばいいんだから。やっぱゲーム最高……
「あれ、それGDO?」
「ぴゃ!?」
男子に声を掛けられた。すぐに振り返るとネクタイが青色で先輩であると気付いた。
☆☆☆放課後のゲーム
「あ、驚かせたならごめん。そのゲーム俺もやってるんだ」
どうして、この人は私に声を掛けたんだろう。他にもこのゲーム人気だからやってる人はいるはずだし……
「あ、あ……あ……私……あわわわわわわ……」
同性でも会話をあまりしない私が異性の年上と会話できるわけもなかった。挙動不審すぎて不審者だと疑われないかな……
きもいとか言われないかな……変人すぎる……うぅぅ……それか、カツアゲ?
スマホを出していた。
「とりあえず対戦しないか?」
この人私と対戦してくれるんだ。こくりと頷くと会話なくGDOの対戦モードをやった。
手加減しよう……手加減手加減……あれ、この人。全然ゲーム上手くない……
当然。勝敗は私の勝利に終わった。
「あー負けた。負けた。君はゲーム上手いんだな……対戦ありがと。えっと……」
なのに本人は満足そうな顔をしていた。負けたのに楽しそうな顔してるなんて変な人だなと思った。
そうだ。まだ名乗っていなかった。
「あ……え……し、柴橋……真子。一年生です……その、対戦あ、ありがとうございます……先輩……」
「俺は武野正也二年生。ここは帰宅部みたいなとこあるから、こうやってゲームしても怒られないんだよね」
「……ほ、ほんとに幽霊部員ばかりなんですね……びっくりしました……わ、私も真面目に部活動取り組もうとしたわけではないので……」
でも、こんな私にどうして構ってくれるんだろう……
「じゃ、また対戦やろか、今度は負けないよ」
こんないい人コテンパンにできない。実力差は歴然だし……
「や、こ、今度は協力プレイしませんか……チーム戦出来ますし?」
「いいけど。足引っ張るかもしれないけど大丈夫か?」
「……はい」
二人でもフリーマッチなら余裕で生き残れると思う。
そうして協力プレイのフリーマッチが始まる。先輩は開始早々敵にキルされたけど、何とかリスポンさせて、一緒に敵をキルしていく。やがて生き残り続けて終盤になった。
「……先輩。後ろに敵二人。今三チームに囲まれてますね。今凄く不利な状況です。いったん場所を移動して漁夫の利狙いに行きましょう」
銃声から相手の位置と数を割り出す。
「え、あの一瞬でそんな状況把握したの……とりあえず分かった」
先輩は私に頑張って付いてきてくれた。
「あ、一人キルした。柴橋の方もう二人行ったぞ。挟みこもう」
「はい……!」
そのまま二人をキルして私達チームが生き残ることに成功した。
「「やったーーー」……あ」
私も一緒に喜んでしまった……!
「柴橋ってホントゲーム上手いんだな。凄かったぞ」
「あ……は、はい。そのありがとうございます……」
こうしてリアルで一緒にゲームをプレイしたのは初めてだったけど。凄く楽しかった。
何より先輩が優しかった。私の指示に従って動いてくれたし……
「いやいや、このゲームで生き残れたの初めてだから、凄く嬉しかったわ。楽しかったよ。ありがと」
「わ、私もです……せ、先輩。あ、ありがとうございました」
やがて下校の時間が訪れた。先輩本当にいい人だ。また一緒にゲームできたらいいな……
「せ、先輩って明日も部活来るんですか……?」
つい聞いてしまった……私何やってるんだろう。
「明日はバイト入ってる。ごめんな」
そうか、元々PC部は帰宅部だ。何かしら学校外の活動をしたい人が入っている。
先輩はバイトしたいからPC部に入っているんだ。
「でも、バイト休みの日はなるべく顔出すようにするよ。そしたらまた一緒にゲームしようか」
これが先輩との出会いだった。
「は、はい……」
そして、この日先輩を好きになってしまったんだ。あの後ろ姿。かっこよかった。
一人ぼっちの私に声をかけてくれた先輩を……
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