第28話 二人の距離と覚悟
☆☆☆特大ウォータースライダー
やばい、柴橋の肩を掴んでしまった。正直細くて肌も綺麗だし最高だった。
楽しそうにしている姿を見れただけで誘った意味があったと言える。
最大規模のウォータースライダーへ俺達は登っている。結構高さあるな……
「うわぁ……ここから落ちるんですね。凄く楽しみです~~~」
「前よりも高くなってるけど大丈夫か?」
正直。想像よりずっと高くて俺が怖気づいている。え、これ大丈夫か?
「全然平気です! うわぁ~~~凄い~~~」
やがて俺達の順番がやがて訪れる。
「はい。カップル二名様入ります~」
当然の様にカップルに見られているけどもう否定する気はない。
「先輩。先輩! 後ろどうぞ!」
テンション高くなってる柴橋……滅茶苦茶かわいい。
「ぴゃ~~~~~~~~!」
絶対に情けない声は出さない。無心を貫け無心を……あ、速い……
しかし、俺にはスクワットで鍛えた体幹がある。どんなに揺れようが下半身の力で防げるのだ。
「うおおおおおおおお!」
そのまま高速で俺と柴橋はプールに落ちる。
「ぴゃ~~~~ぴゃ~~~~~~! 楽しい~~~~」
俺と柴橋はプールに浮かぶ……良かった。何とかかっこ悪いところを見せなかった。別に絶叫マシン苦手なわけではなかったが思ったより怖かった。
「ははは……柴橋が楽しめたのなら何よりだ」
「も、もう一回乗りましょう先輩! あはは~~~楽しいです」
え?
「ぴゃ~~~~~~」
「……」
「ぴゃ~~~~~~~」
「……ぎゃ……」
「あ、体勢変えればさらにスピード出ますね。ぴゃ~~~~~~~~~~」
え、おい待ってくれ。そんなスピードが出たら……
「ぎゃあああああああああああ!」
あぁ……流石に限界だ。怖すぎる……
だけど子供の様にはしゃぐ柴橋を見れたんだ。それに比べれば些細なことだ。
「楽しかったです~あれ、先輩?」
「はい。どうした?」
「せ、先輩は楽しくなかったですか? 顔青ざめていますけど」
しまった。情けない奴だと悟られてはならない……!
「さっきしたスクワットの疲労が今訪れているんだ。なにせ千回したからね」
「そうですね、流石に疲れましたし。そろそろお昼の時間ですから、休憩にしますか?」
「そうだな。お腹空いた……肉食べたい」
腹筋を見せるため朝は抜いていたので……
その後俺達は昼食を取り、午後もプールで遊び続けた。正直滅茶苦茶楽しかった。
夕方には遊び疲れたのでシャワーを浴びて、レジャープールの出口で待ち合わせをする。
☆☆☆帰りの電車
先に着替え終わり、柴橋が来るのを待っている。
「お、お待たせしてすみません……先輩」
「いいって、いいって……それより、肌のケアとか大丈夫? 詳しいこと分からないけど、あまり日焼けしない人が焼けると痛いって聞くし」
「はい、少し赤くなってますけど、ちゃんと保湿液塗ったので大丈夫です。それとプールで凄くはしゃいじゃって、すみません……」
「楽しそうな柴橋見れて嬉しいから謝らないで」
本心だ。
「じゃ、先輩……一緒に帰りましょうか」
「うん」
そのまま俺達は電車に乗る。帰りの車内はかなり混んでいたが、運よく二人で座ることが出来た。
「こんな体動かしたの球技大会以上ですよ……明日絶対に筋肉痛ですよ」
「ちゃんとストレッチすればそこまで響かないけど、あと肉食べれば治り速いって聞くよ」
「ほんと先輩お肉大好きですよね。ふわぁ……あ、ごめんなさい! 先輩の前で欠伸なんか……」
すると、柴橋は疲労が溜まったのか欠伸をする。とても可愛い。
「眠いの? 俺起きてるから寝ててもいいよ」
正直に言えば寝顔が見たい。絶対に可愛いし……
「いえいえ、先輩がいるのに失礼ですから……ふゎぁ……ごめんなさい!」
「か、肩なら貸すからさ、どうかな……」
「先輩……いいんですか? そんな失礼なこと」
上目遣いやめてくれ……
「失礼じゃないって。柴橋は俺に遠慮しなくていいからさ……」
すると柴橋は俺の肩に頭を寄せてくる。
「し、失礼します……先輩」
柴橋のポニーテールがとてもふわふわしている。
「……先輩。嫌じゃないですか……なんか不快だったりとか、痒いとか……」
やっぱり……柴橋のことが好きだ。近くで触れて理解した。
「全くないよ……柴橋だから……」
「……先輩……先輩……」
柴橋は数分で眠りに付き、寝息を堪能する。
……告白したい。告白したい。告白したい。
でも、もし付き合えたとして、このままヒモになってしまうのではないだろうか?
柴橋はかなりのお金を持っている。どのような方法で稼いでいるか想像できないが、タワマンで一人暮らししていたり、親がお金を持っていたりするのだろうか?
そもそも金で買われた身の俺が告白してもいいのだろうか……
結局買われたというのも、家の借金が原因で起きたことだし、柴橋の良心で俺を救おうとしてくれたのだろう。だから貰ったお金には一切手を付けていない。
使う気が起きないのだ。結局家に入れているお金は普通のバイト代にしているし。
正直な気持ち。この関係を終わりにしたい。『お願い』なんてしなくてもよくて、対等に付き合いたい……
それに、俺には後ろめたさもある……だって柴橋に声を掛けたのも……
柴橋が眠っている。今ならいいかな……
眠っている柴橋の頭を撫でる。やっぱり撫で心地が良いな……球技大会以来の頭だ。
「……せ、先輩……あの、これは……」
え……起きてた。
「悪い。起きていたのか……ごめん……」
すぐに撫でるのを辞めようとすると……
「や、やめないで……もっとしてほしいです」
「……うん」
……その後柴橋の頭を撫で続けた。やがて地元の駅に着く。
名残惜しいけど、これで柴橋と一緒に居られる時間は終わるんだ。
「駅に着いたぞ、柴橋」
時間は午後七時を回りこのままいけばここで解散だ。
「先輩……今日凄く楽しかったです……先輩と一緒のプールが……ありがとうございます」
「俺も柴橋と一緒に行けて、楽しかった……ぞ」
「先輩……」「柴橋……」
……見つめ合っている。今すぐにでも『好き』と言いたい。
だけど……俺は……このままでいいのだろうか……どうしても先ほどの考えが頭に過り、踏みとどまってしまう。
だから俺は切り出そうと思う。この関係を終わりにして、本当の恋人になるために……!
「……家……来ますか?」
「……うん」
柴橋に関係の終わりを切り出そうと思った。
そして告白するんだ……
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