第33話 いざ、夏祭りへ

☆☆☆逆ナン?


正直男の浴衣って女子と比べてどれも同じにしか見えない。そこまで柄も少ないし黒と灰色の浴衣にした。


池谷もサッカー部と夏祭りで合流するらしく浴衣に着替えていた。相変わらず何着ても似合うイケメンであるな池谷。


というか、柴橋の浴衣って絶対に可愛いよな。髪も黒いから大和撫子のイメージあるし、身体も細いから浴衣絶対似合うだろう。え、あんな可愛い後輩とデートできるのか……俺は……凄くワクワクする。


今日は柴橋と恋人になってから初めてのデートだ。絶対に失敗できない。


しかし下駄は歩きずらいな。柴橋は大丈夫だろうか……


時間は十五時を回っている。待ち合わせの時間まではまだ二時間くらいあるが、そのまま池谷と神社へ向かった。


既に神社周辺は屋台も出ている。チョコバナナやソースせんべいやたこ焼きの良い匂いがしていた。


「まだ部活のメンバー来てないか、一緒に回ろうよ武野」


「うん。肉系食べたいな肉」


「「すみませ~んこの後予定とかありますか~?」」


すると、顔も知らない浴衣の女子達に話しかけられる。


「サッカー部のマネージャーか?」


聞くと首を横に振られた。え、じゃあこれは一体……?


「ごめん。君達とは回れないんだ。既に予定があるし」


すると女子たちは、残念そうに引き下がっていく。


……これって、逆ナンってやつではないだろうか……


「こういうことよくあるのか?」


「まぁ……俺は全くその気ないのに、どうして声かけてくるんだろうね」


君がイケメンだからだろと言おうとしたがやめた。現にテレビで見るアイドルと変わらないルックスしてるし、女子が声を掛けたがるのも仕方ないと言えば仕方ない。


「あの~」「すみません~」「かっこいいですね~~」「きゃ~~~」


更にまた別の女子が、更にまた別の女子が……その数多の逆ナンを池谷は断っていく。


「ごめん武野。ほんと前はこんなことなかったんだけど……とりあえずこのプイポアのお面付けてれば話しかけ辛くなるだろう」


池谷は日曜朝にやっている魔法少女アニメのお面をつけていた。それでもイケメンを隠せてないが……


「その時。マネージャーも一緒に居たからじゃないか? 今は男二人だし、でもまあ、俺はハッ〇ーセットのおまけ見たいな感じだけどな」


「でも、前の前の前の前の子は武野に話しかけてたじゃん。結構見た目良かったのに凄い塩対応だったよね」


池谷の言う通り確かにいた。でも全くと言っていいほど興味を持てなかったのも事実。それはもちろん……


「はぁ? 柴橋の方が可愛いが……?」


「武野って彼女出来たら、他の子に目を向けないタイプか……」


「正直。柴橋以外からもう一生モテなくていいって考えてる」


本心である。


「一生って凄いな武野は……一途なんだな」


結婚した近所のお姉さん思い続けている池谷も大概だろうに……


池谷の逆ナンに疲れたので、俺達は近くの電柱に寄りかかっていた。


時計は十六時を回り日暮れが近くなる。人の流れが増し祭りも本番だ。


「あれ、先輩……? まだ時間じゃないはずですけど……」


すると、浴衣を着た柴橋がいた。友達も一緒みたいだ。


☆☆☆遭遇


「柴橋。来ていたのか……っは……」


柴橋の浴衣は黒を基調にして、ピンクの花柄が特徴的だ。


長い髪もかんざしで後ろに纏めてありモフモフ感が出ている。めっちゃ触りたい。


「え、先輩さんいるの? どうも親友の佐奈川で~す。あ、池谷先輩じゃん……あのサッカー部エースで学校のアイドルの! え、なんでポアプリリンのお面付けてるんですか~? ギャップ?」


なんで、そのプイポアの名前知ってるんだろう佐奈川さん。


「あはは、どうも。アイドルかどうか分からないけどサッカー部の池谷だよ。プイポアは逆ナン対策だ。あれ、このキャラそんな名前なんだ。初めて知ったよ」


「……あはは~~~妹が見てるんですよ~」


「あの~先輩。あれ……? 先輩? あ、浴衣姿……凄くかっこいい……先輩との浴衣デート楽しみです……えへへ……」


だめだ。柴橋の浴衣姿が可愛すぎて意識が飛んでいた。


「……っは! すまんちょっと脳がフリーズしていた……柴橋も浴衣姿凄い可愛いから……髪型も和を感じて似合ってるし……滅茶苦茶可愛いよ」


「あ、ありがとうございます先輩……先輩に可愛いって言ってもらいたいからその、頑張りました……えへへ……」


「柴橋……」「先輩……」


駄目だ……この後輩可愛すぎる


「……池谷。俺の後輩が可愛すぎるんだが……!」


「佐奈川さん……先輩がかっこよすぎます……!」


「俺達いらないな……」「私達いらない……」


「そ、そんなことないよ。佐奈川さんと夏祭り楽しかったよ」


「柴橋さぁぁん~~~」


そして、佐奈川さんという人は、やけに柴橋とハグしてくる。女子同士であることは重々承知しているけど、凄い羨ましい……


「武野って、独占欲強い方なんだな」


「……柴橋には内緒にしてくれ」


「それでどうしますかー? お二人はデートもうはじめるんですかー?」


佐奈川さんナイス提案だ……正直今すぐに柴橋と手を繋ぎたい。イチャイチャしたい。


「せ、先輩……」


多分……柴橋も同じ気持ちのはずだ。多分……


「今すぐにデートしたい。すまん池谷!」


「先輩!」


柴橋も同じ気持ちだった。凄く嬉しい……


「いやいや、そろそろ部活のメンバー来るし俺のことは気にしないで、ところで佐奈川さんはどうするんだい?」


相変わらず池谷は良い奴だ。モテるのもうなずける。


「どうしましょう。あ、LEMONグループで誘われてたからそっち行こうかな。じゃ、柴橋さん頑張ってね~後で詳しく聞かせてもらうから。とりあえずナンパ対策のため池谷先輩に守ってもらいます~」


「それは俺も願ってもない事だけど、佐奈川さんといたら、カップルと勘違いしてくれそうで助かるし」


「あはは~まぁ、付き合う気なんて全くないですけどね~」


「俺も同感」


なんだこの二人、滅茶苦茶お似合いじゃん……


「じゃ、リア充さん達。夏祭りを楽しんできてくれよ」


すると、池谷と佐奈川さんは人混みの中に消えていった。プイポアのお面もう外していいんじゃないだろうか……?


「あの二人凄くお似合いでしたね……」


と言っても、あの二人が結ばれることはないだろうが……互いになんか変な距離感があるし……


「俺達の方がお似合いだから……」


「え? あ、先輩……」


俺は柴橋の手を握る。やっぱ柴橋の手綺麗だな……


「もう一度言うけど。柴橋の浴衣姿凄く可愛いよ。あんま褒めるの慣れてないからありふれた言葉しか言えないけど……その気持ちは本当だから。凄く可愛い」


「ぴゃぁ……」


「じゃ、一緒に回ろうか……柴橋」


「はい、先輩……」


こうして俺達のデートは始まった。

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