第32話 夏祭りデート前
☆☆☆友達との会話
付き合ってから三日後。柴橋との夏祭りデート日が訪れる。待ち合わせは夕方だ。
と、その前に俺は池谷と近くの喫茶店で談笑していた。
「なあ、池谷。夏祭りデートの時って私服でいいのか、それとも雰囲気あった甚平とか浴衣の方がいいのではないだろうか」
「彼女いない歴年齢の俺に聞くのか……というか、後輩の子と付き合ったんだな武野。おめでとう」
相談に乗れる相手が池谷しかいない事実だ。川上とか秋山とか鈴木にできるわけがないし。
「それに関してはほんと感謝している。池谷のおかげと言っても過言じゃない。ありがとう……今度お礼をさせてくれ」
「あれは球技大会のお礼として、トレーニング法教えただけだけど……あの肉体になれたのは武野の努力だって」
池谷のアドバイスはとても参考になった。
「いや、流石に割に合わないだろう。あんなに相談乗ってくれたんだし、俺の気がそ収まらないんだ」
「う~ん。武野ってサッカーはできる?」
「一応。小学生の頃とか球技大会とかだけど。運動は嫌いじゃない」
「もし、俺らの部で欠員出た時あったら、助っ人に入ってほしいかな。それでチャラだ」
俺が入ったところなら力不足ではないだろうか……
「分かった。俺で良ければいくらでも入るよ」
「バスケしてた時思ったけど、武野は周囲の状況判断に長けているんだよ。最良のタイミングで、最良の相手にボールを回していたし、それをサッカーで上手く使えれば……全国も夢じゃないんだ!」
それはバイトとゲームで培われた状況判断だ。だけど池谷全国狙ってたのか……そりゃ球技大会の時のスポ根ムーブでテンション高くなるからな。
「そこまで評価されてるなら嬉しいけど……」
「しかし、武野に彼女か~これ他のやつに言っていいのか?」
「嫉妬で怒り狂っている鈴木とかに言ったら殺されるだろ。それに恋人とかひけらかすことじゃないし、何より柴橋に迷惑かけたくない」
俺がいくら言われようが大したダメージはない。幸せだし。
だけど、柴橋に飛び火するのだけは避けたい。鈴木が柴橋にちょっかいかけたら確実に殺す。
「まぁそうか、黙っとくよ。それで話は戻るけど、今日の夏祭りデートについてだね」
「そう、私服か和服か……違う格好だったら凄い気まずくなりそうだし」
「そうだなぁ……去年夏祭り部活メンバーで一緒に行った時は男子が甚平来ていたり浴衣着たりしたなぁ、女子マネージャーは浴衣だったり、それで、マネージャー争奪戦が始まったんだ……男子達が雰囲気に当てられて玉砕しまくってた」
結構気になる話してるけど。
「それでマネージャー争奪戦の結果は?」
「聞くかそれ、俺に告白してきたけど、もちろん断ったよ。俺は浴衣着ていたな、結構男子はまばらだったけど、女子は浴衣が確定だと言っていい」
流石池谷だ。一切ブレない……
「もし、武野がコーデ合わせたいなら、本人に直接聞くのが良いと思うよ」
「確かに!」
盲点だった。
「武野って意外と恋愛ごとになると周り見えなくなるタイプ?」
「……そうかもしれない。最近ずっと柴橋のこと考えてるし、推しの配信者に貢ぐことも無くなった……」
☆☆☆推しの配信者
そう。柴橋と関係を持ってから推しクロスローズの配信で貢がなくなっていた。
そもそもクロスローズは正体不明の女性配信者であり、大会にも出場している者の顔だしNGのため、素顔を知る者はいない。
そんな彼女に『結婚してください』とも書かなくなった。彼女もできたし。
「あーそれだ。配信者のクロスローズだっけ、俺あんまゲームやらないけど前の配信見たよ、すっげー上手いじゃん」
「そうそう。あ、配信見るか? 俺この回大好きでさ、まじ面白いよ」
すると俺はスマホでクロスローズの神回配信をつける。FPSのフリーマッチ動画だ。
クロスローズは敬語口調で話すが死ぬほど敵を煽り、確実につぶしていく。
『あははははは! 死んでください! 私の後ろ狙うなんて自殺行為であることを弁えてくださいよ……あ、ごめんなさい。私強くて! お願いですから私をいじめっ子にしないでくださいね! あははは!』
その一つの動きが全て神業。明らかに相手と実力差が出てしまう。
しかし、運も伴うFPSでは5人以上から一気に狙われれば流石のクロスローズも捌けなくなるので……
『フ〇ック! フ〇ック! はぁ!? あんたらいじめっ子ですかぁ! いい加減〇んだらどうなんですか!? 〇ザー〇ァッカー! 〇ット! 〇ッチ! そもそもそうやって群れないとやっていけない人間は本質的に弱いんです。どう見ても私の方が……ぎゃぁぁあああ! 一キルされたぁぁ! あいつら絶対ぶち〇す……全員名前覚えたかんな!!!! お前らは世界の悪意だ……お前らみたいなのがいるから世界は平和にならないんです!』
クロスローズ復帰直後有言実行し全員を倒す。たまにバーサーカーファイトエデンのラスボスみたいな口調のなるのもいいんだよな……
『はっはっは! ざまぁ見ろです……所詮。群れないと誰かを虐めることが出来ない奴は、雑魚の集まりだと私が証明しましたから! 人類は愚かですね! はっはっは! だから人類から戦争は無くならないんですよ! こんなゲームをやっている下手な奴が多いから!』
相変わらず性格が歪んでいるが、それでも実力は本物だ。毎回配信で炎上しているけど……そこも推せるポイントだった。
「相変わらずこの人凄いんだね、全方位に喧嘩売ってるし」
「口は悪いけど、実力は本物だから……ほんとに凄いと思う」
「そのこと彼女には言ってないの? 確か同じようにゲーム上手いんだろ?」
そう、俺が唯一隠し事をしているとすれば、推しの配信者がクロスローズであるということだけだ。
何って、最高に気持ち悪い事していたわけで、アーカイブ遡られて柴橋に引かれたくない。
「いや『結婚してください』とか言ってる、黒歴史バレるから……それにもう言わないだろうし」
「ははは、ほんと武野は面白い。そろそろ、彼女さんに連絡してみたらどうだろ」
そう言われLEMONを開いた。
〇〇〇浴衣の準備
デート当日。私は佐奈川さんと浴衣を選んでいる最中だった。
「う~ん。やっぱ柴橋さん。黒系が良いと思うだけど……水色もいいな~あーでも意外性のピンクも!」
そして私は佐奈川さんの着せ替え人形にされている。正直浴衣は着たことがなかったので思ったより窮屈というかかなりウェストが締められる。
「うぅ……佐奈川さん。浴衣で行けば先輩喜んでくれるってほんと?」
「絶対喜ぶと思うよ。先輩さん! 次! 次々! これも! これも!」
「ぴゃ~~~~~~!」
無数にある浴衣を着させられ佐奈川さんプレゼンツの私が完成した。
すると、先輩からLEMONのメッセージが来る。
『柴橋はさ、今日は歩きづらい恰好で来るのか?』
凄く遠回しだけど、これ先輩が浴衣かどうか聞いてくれてるんだよね。
『はい、下駄を履いてくるので、歩きづらいかもしれません』
『ありがとう。一緒に歩けること凄く楽しみだよ』
『私も凄く楽しみです。それではまた後で』
先輩が私の浴衣姿を楽しみに……
「ひひひ……先輩……先輩……」
「柴橋さんスマホ見てニヤニヤしているのは流石に怖いよ」
「ごめん。でも、先輩が私の浴衣楽しみにしてるって言ってくれてるから……嬉しくて嬉しくて……」
「ほんと、先輩さんが羨ましいよ。こんな一途でかわいい子独占できるって」
佐奈川さんは私のことを可愛いと言ってくれる。どう見たって佐奈川さんのが可愛いのに。
「むしろ、私が先輩を独占しちゃっていいのかなって思います。絶対先輩かっこいいからモテますし……」
「じゃ、私がアタックしてみよっかな~~~」
すると、佐奈川さんは豊満な胸を寄せる。そんなことされたら先輩は絶対に……だって、先輩の好み佐奈川さんっぽいし……
「駄目……佐奈川さん最強じゃん……」
「柴橋さんに猛烈アタック~好き好き~」
すると私に抱き着いてきた。
「そっち!? でもごめん。私先輩一筋だから~ごめんなさい~」
「フラれた~~~だが、それも悪くない~ありがとう~~」
なんか佐奈川さん誰かに似てるな……
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