第21話 夏休みの約束

〇〇〇先輩を誘え


女子同士のトークって凄く神経を使った……とても疲れた……何とか佐奈川さんにフォローしてもらい潜り抜けることが出来た。


滅茶苦茶先輩のこと聞かれたし……


午前の授業が終わり昼休みになると、佐奈川さんとご飯を食べる。これが友達のご飯か……


「先輩さん夏休みに誘うことできたんだ。おめでと~」


とにかく佐奈川さんに相談してみよう。だめだ。佐奈川さんいないと私先輩関連で詰むこれ……


「う、うん。でもさ、それからどうしたらいいかとか分からなくて……」


「デートの行くところはもう決まっているの?」


「デデデデッデート……じゃなくて! いや、行先はまだ決まってなくて、ショッピングモールとかでいいのかな映画館もあるし……」


「う~ん。先輩さんと映画の趣味合わなかったら凄く気まずくなりそうだけど……恋愛映画とか見てるタイプ? と言ってもそれは恋人と行くしな~」


「……あ、私って先輩のことあまり知らない……」


ゲーム以外で何が好きかも聞いてないし、好きな食べ物とかも推察でお肉かなってところだし、どんな子がタイプかも分からない……


「水族館とかは? 涼しいし雰囲気あるけど」


「でも、先輩水族館凄く速いタイプだったらどうしよう……ウォーキングになっちゃうよ……」


先輩がすたすた歩いて行って、魚に見向きもしないタイプだったら……『待ってください~先輩~~~』みたいな……それもいいかも。


「そうか~先輩さんの好み分からないか~~ならいっそプールとかに誘ってみるのはどうかな」


「ナナナナッナイトプール!? あのパリピが訪れるという神秘の地!? 確かに私ゲームの光には強いかもしれないけど、陽キャの光に当てられると死んじゃう……」


光る水とか飲まされそうだし……


「いや、ナイトとは言ってないよ。普通のレジャープールだよ。遊んだりできるし、泳ぎ教えてもらったりして先輩さんと触れ合えるよ」


「で、でも、それって、先輩に水着見せるってことだよね……無理。水着小学生の頃のやつしかないし……それ以前になんか変だろうし……」


そもそも私は体型に自信ない。


「でも、先輩さんの水着も見れるよ?」


「うぐっ!」


先輩の上半身……見たい。どんな感じなんだろう……先輩の水着姿……絶対かっこいいし、筋肉とかあるのかな……凄い先輩の水着姿見たい……


「それに先輩さんとの仲を進展させたいならプールいいと思うけど、流れるプールとかで混乱に乗じて抱き着いたりできるし……『きゃ。先輩……』これで、腕に胸押し当てて上目遣いしたら先輩さんもイチコロだよ」


胸……正直私そんなないから、先輩当ててもあまり喜ばれない気がする。いや、大きくても私の胸にそんな価値ないし……


佐奈川さんのなら多分イチコロなのだろうけど……でも先輩の腕に抱き着くのは……


「え、ご、合法的に抱き着ける……? ぴゃ……そ、そそそ、んな破廉恥な! せ、先輩に、迷惑かけちゃうのは……だ、ダメだと思う……」


正直なことを言えば滅茶苦茶抱き着きたい。


「まぁ、それは上手くいけばだからね、でも、柴橋さんには課題が一つできたね」


「?」


首をかしげる。私に課題……?


「先輩さんのこともっと知っていくべきだと思う。好きなタイプとか、好きな髪形とかね。あと趣味も!」


「先輩の好きなタイプ……好きな髪形……うぅ……私と真逆のタイプだったら死にそう……」


「そんなストレートに聞かなくても大丈夫。とのことで次のデート先はプールに決定かな」


「先輩の水着見たいから……うん。が、頑張ってみる。先輩の水着見たいから……絶対かっこいいし……っふ……ふへへ……先輩の胸板……」


「じゃ、さっそく水着を選びに行こう。ハグした感覚だけど、柴橋さん身体の線細いから凄いスタイルいいよね~」


「あ」


そうだった。先輩の水着見たさにまんまと佐奈川さんの術中にハマっていた。


でも、先輩に水着見せて……どんな反応してくれるんだろう。いや、思いあがってはだめだ。褒めてくれるだろうけど……多分それはお世辞だ。


☆☆☆誘われる側


「っくしゅ!」


不意にくしゃみが出た。


「どうした。バイトマスターよ。風邪か? それとも誰かが君の噂をしていたというのかね?」


昼休みに川上とご飯を食べていた。


「いや、俺の噂してる奴いないだろ。それにしてもな……」


「どうした。バイトマスター悩み事でもあるのか?」


こいつらには相談しない。あと、変に鈴木に聞かれると変な因縁つけられそうだし……


「いや、なんでもないんだが……ぁあ……」


すると柴橋からLEMONが入る。


『先輩。プール行きませんか』


「……は」


プール……え……てっきり柴橋の家でゲームするものだと……どこか出かけるものだとは思わなかった。プール行くということは、でも柴橋がプール……?


「どうしたスマホを見つめた途端顔色を変えて、そんなことより僕の弁当に入った沢庵を見てくれ、とてもいい黄色をしているだろう?」


水着をどうにかしないと……いや、そもそも、脱いでも大したことないから、がっかりされないか?


腹は出ていないけど、食生活も偏りがちだし、運動もこれと言ってしてない。だからひょろがりだ。


せめて分厚い胸板とかシックスパックの腹筋とかつけておきたい。


『先輩?』


しまった。色々考えすぎて既読無視だと勘違いされてるかもしれない。そもそも俺に拒否権なんかないんだけど。


『うん。大丈夫だよ。そうなると電車乗っていく必要があるかな』


どうしよう……それよりも、プールってことは柴橋の水着が見れるってことか……?

どんな水着なんだろう……


『ありがとうございます。それで……『お願い』いっぱいしちゃうかと思うんですけど。大丈夫ですか?』


水着の柴橋にお願い……考えるな。それよりも力だ。筋肉だ。


『うん。詳しい日程は今度送るよ』


「僕のたくあんを贈呈――」


席を立ち池谷の元へ向かう。


「いきなりで悪い池谷。サッカー部のトレーニングメニュー教えてくれないか?」


「どうしたんだ武野。サッカー部に入りたいのかい? 君のポテンシャルならレギュラー狙えると思うよ!」


池谷はかなり過酷なサッカー部トレーニングに耐えてエースの座を手に入れてる。体育の時間に見た時かっこいい肉体をしていた。


あそこまではなれなくても、少しはマシにしておきたいのだ。それこそ池谷が頼りになる。


「いや、サッカーするわけじゃないんだが……」


すると池谷がにやけながら俺と肩を組み囁いた?


「……もしかして、デート?」


池谷ならふざけずに聞いてくれるだろう。相談するのは池谷しかいない。


「デートなのかな、女子と……プール行くことになってさ……俺、そんな見せられる身体じゃないからさ、マシにしておきたいんだ」


「そういうことなら、俺に任せとけって……まったく。相手は鈴木が言っていた後輩の子かい?」


隠す必要はない。


「あぁ」


「球技大会のお礼返せそうだしさ、でも、厳しめに行くからな!」


「頼んだ」


この後地獄のトレーニングが始まったが割愛しよう。

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