第20話 広がる交友関係
☆☆☆打ち上げ後
酷い打ち上げだった。何が酷かったかはご想像にお任せしよう。
寝支度を整え、布団で横になる。リビングで両親の喧嘩が絶えないのでイヤホンをした。
そういえば。柴橋は上手くいったのかな。打ち上げ中も失敗してないか不安だった。暗闇の部屋でLEMONを開く。
『夜にごめん。友達とは上手くいった?』
『はい! もうハグするくらいの仲になりました!』
ハグするぐらいの仲に一日で? 一体何があったんだ。そんなに急接近するのものだろうか?
『おめでとう。良い友達に巡り合えたんだな』
『はい。これも先輩のおかげです。ありがとうございます!』
俺のおかげなのだろうか?
『少し心配してたけど。大丈夫なら安心したよ』
『はい……それで先輩は夏休みの予定ってありますか?』
もう少しすれば夏休みになるので、日雇いのバイトに入りやすくなる。だから、何個も入れようと思っていたところだ。
『日雇いのバイトに入る予定だけど、まだ入る前だから調整できるよ』
『バイトの予定。全部キャンセルしてほしいです。バイトなら私と一緒にいた方がいっぱい稼げますから』
その通りなんだけど、相変わらず柴橋からお金を貰うのは気が引ける。
なんというかもうそれヒモじゃん……それに労働してんのかな俺。柴橋と一緒にいるだけで金がもらえるっておかしいだろう。
『急にごめんなさい。先輩の都合もあるのに、どうしても嫌なら大丈夫です。ほんとごめんなさい』
『大丈夫。その、なるべく予定空けておくからさ』
『ありがとうございます先輩。一緒にゲームしましょうね!』
夏休みは柴橋と遊ぶことが多くなりそうだ。そもそも買われているんだから俺に拒否権などないのだが、なんかもっとこう……召使みたいに扱われるかと思ってたけど。
「――先輩。私の靴を舐めてください。できませんか? お金あげませんよ……(札束を投げる)」
みたいな……柴橋がそんなことするわけないか。そもそも、甘えん坊って本人が言ってたし……
『うん。それじゃ、俺はもう寝るよ。今日は凄く頑張ったな柴橋』
『おやすみなさい先輩。球技大会お疲れさまでした!』
こうやって柴橋とLEMONでやり取りするのも当たり前になったな。
『うん。おやすみ』
そのまま俺は眠る。
翌日教室の男子達に噂が広がっていた。どうやらゲーム関連らしい。
「おいおい。川上! 地元最強と言われたゲーマー。エクステンド村田が完敗したんだってよ、それもナンパした女に!」
……誰だよそいつ。ナンパして返り討ちって凄く情けない。
「エクステンド村田。周辺のゲーセン仕切っているゲーマーの一人だ。格ゲー県大会の出場経験している。しかし実力者の彼が一方的に負けるとは考えられないのだがね(クイ)僕の予想だが女性に良いところ見せたいと魅せプ覚悟で負けたんだ」
川上は何でも知ってるな。流石データマスターだ。
ふとゲームが上手かった柴橋のことを思い出すが……まさかな。
〇〇〇一緒の登校
今日も普通通りに登校しているが筋肉痛だ。球技大会で久々にあんな動いたからだろう。とても痛い……
佐奈川さんに言われた通り、夏休みに先輩を誘うことに成功した。お金をちらつかせての作戦だったけど……
しかし佐奈川さんのアドバイスはほんと参考になるな……
「柴橋さ~ん! おはよう! 柴橋さ~~ん~~~!」
「ぴゃあああああ!」
登校中後ろから突然抱き着かれた。抱き着いてくる人なんて一人しかいない。
「い、いきなり後ろから抱き着かないで、ほんと心臓止まるから……佐奈川さん……」
「あ、ごめん。つい我慢できなくなっちゃって」
何の我慢なんだろ……
「と、とにかく、お、おはよう。佐奈川さん……」
昨日できた初めての友達。今日も相変わらず美少女である。
「うん。うん……じゃ、柴橋さんハグしようよ!」
「え、登校中にするの?」
「ダメ?」
子犬のような顔で見られると……
「する……」
即答するしかなかった。佐奈川さん良い匂いするな~じゃなくて……まさか、これがと、友達との登校……しかも滅茶苦茶美少女だし。
一緒に教室へ入ると、私の机まで付いてきた。
「あ、あれ? 佐奈川さん」
「じゃ~ん柴橋さん。私も実はゲームもっててね、HR始まるまで対戦しない?」
シマブラを出してきた。
「あ、私ももってるけど……その」
先輩とやった時のことを思い出した。
あの時の先輩は何が起きたか分かっていなかったらしい。
「一回私のこと本気で倒してみてほしいんだ。私も全力でやるからさ」
「あ、その、えと……」
何て言えばいいんだろう。あのキラキラした笑顔を振る巻いている佐奈川さんを曇らせたくない。
「どうしたの柴橋さん? 何か問題でもあるかな」
「た、多分。なんだけど、私が本気出したら……佐奈川さんに嫌われちゃうから……何もできないと思うし」
「そんなことないって。私そんなにガチじゃないからね。まずは一緒にやろやろ~ねぇ!」
「あ、う、うん……」
結果は見えていた。正直手加減していても簡単に勝てる。というより自滅していった。
女子が使いがちなピンクの飛ぶキャラで浮いているだけなので簡単に即死コンボを叩きこむ。
「うわ~~~~~」
「ご、ごめんね……佐奈川さん」
「すごい~~~~柴橋さんシマブラも上手いんだ」
なんで全力で潰されたのに笑顔なんだ佐奈川さん。再び抱き着かれる。
「流石柴橋さんだよ~~」
「ぴゃ、ぴゃあ……さ、佐奈川さん……」
「え、何? 佐奈川シマブラやってんの? 俺めっちゃ上手いよ? 一緒にやらない?」
「そうなんだ~でも私柴橋さんとやってるから邪魔しないでよ~」
そこでクラスの男子が会話に入ってくる。私は存在感を消そう。ただ背景の様に……背景の様に溶け込むんだ……
「え、柴橋? ……え、どこに居んの?」
「あれ、柴橋さん……? って、私の腕の中にいるじゃん! 存在感消しても私には効かないよ!」
結構得意だと思ってたのに~~~
「あ、ほんとにいた。光学迷彩してるのかと思ったわ。あれ、でも佐奈川と柴橋って仲良かったっけ?」
そう、佐奈川さんはスクールカースト上位に位置する存在。彼女の周りにはいつも人が集まっているはず。
だけど今は、その佐奈川さんを私が一人占めしているのだ。
「うぅぅぅ……ど、どうせ私みたいな、お笑い芸人のじゃないほうみたいな存在だから……その、誰かに認識してもらう必要なくて……」
「そんなこと言わないで柴橋さんはめっちゃかっこいいから、私をナンパから助けてくれた恩人だもん……ほんと王子様みたいだったから~~だから私と柴橋さんはずっ友なんだ!」
「ちょっと抱き着きすぎだよ。佐奈川さん~~~ぴゃあ~~」
「え~~さなさなナンパされたの? その話詳しく聞かせてー」
そして普段。佐奈川さんと会話している友人が集まってくる。所謂スクールカースト上位の陽キャだ。見た目が派手であり私とは一切無縁の存在だと思っていたが、佐奈川さんと友達になるということは、そういうことなんだ……
正直ちょっと怖い。
「そのね~~柴橋さんがね~~~」
「うそ~」「うける~」「がはは!」
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