第22話 先輩のことを知りたい
☆☆☆終業式
蝉が酷くうるさい季節になった。
今日は終業式で明日から学校が休みになる。池谷にしごかれたこともあって、服を脱いでもマシにはなった。かなり肩と腹筋を重点的に鍛えた気がした。しかし暑いな……
放課後は柴橋と会う約束をしていた。というの普段通りに自宅でゲームをするだけだが。
下駄箱で柴橋と待ち合わせをしていた。
「せ、先輩……お待たせしました」
柴橋は友人が出来てから少し見た目が変わった。制服のスカートが少し短くなり、細く白い太ももが良く見える。以前は長く下ろしていた黒髪もポニーテールでまとめているのだ。
凄く可愛くなったと思う
「じゃあ、行こうか」
「はい……先輩……しかし暑いですね」
「熱中症にならないように気を付けないと」
真昼の帰路は異様に暑い。水分取らないとほんと死ぬなこれ……
「外……こんなに暑かったんですね……暑い~~~暑い~~」
そうか、柴橋はあまり家から出ないんだ。中学も不登校だったと聞くからこの暑さに耐性がないのも頷ける。
一旦日陰に避難させて休憩させよう。
「水分取ってるか? ほら」
近くの自販機でスポーツドリンク買って渡す。
「ごめんなさい。まさかこんなに暑いなんて……もうタクシー呼びませんか……あと十分も歩いたら死んじゃいますから……」
すると柴橋はスマホでタクシーを呼ぶ。
「確かに暑いよな。今日はこの辺37度超えるって聞くし」
「……先輩は平気そうで凄いです……」
正直俺も暑いとは思うけど、まだまだいける。真夏のラーメン屋バイトとか馬鹿みたいに暑かったし慣れている。
少し待つとタクシーが来てクーラーが効いた車内は快適だった。
「生き返ります~~~クーラーは18度以外ありえませんよぉ……」
凄くリラックスした柴橋が体を伸ばしている。
「柴橋が回復して何よりだ」
やがてすぐに柴橋の家へ着く。既に料金が払い終わっており、そのままマンションの中へ入る。
「お邪魔します……涼しいな部屋」
何回も訪れている柴橋の部屋。夏は外からの眺めも良く、日差しも良好だ。ただ、クーラーが効きすぎている。電気代が恐ろしいな……
「先輩……その私。シャワー浴びてきていいですか? 汗凄いので」
確かに首筋とか凄い汗かいているな……柴橋ってこんなに汗っかきだったのか……
「あ、だ、大丈夫。俺はリビングで待ってるから」
「ご、ごめんなさい……汗っかきなもので……」
そのまま柴橋がシャワーを浴びに行く……
…………
……
……柴橋は今シャワー浴びているんだよな。
気にしてはいけない。俺は適当にゲーム柴橋の家でゲームをやっていればいいんだ。
すると柴橋は上がってきた。
「お待たせしました……」
柴橋はルームウェアに着替え戻ってくる。ハーフパンツであるため柴橋の白く細い足がまじまじと見つめてしまう。綺麗だな……
「せ、先輩……わ、私の足がど、どうかしましたか!? 変だったりとか!」
柴橋の顔が赤くなっていた……やばい。足を見過ぎたか……
「悪い! どこもおかしくないから大丈夫だよ。と、とにかく、ゲームやろう。今日は何やるのかな~~~」
話を別の方向に持っていこう。ダメだ、足が綺麗とか、言ったら絶対気まずくなる。
「そ、それなんですけど……その、先輩にプレイしてほしいゲームがあるんです」
「一緒にやるんじゃないのか?」
「はい、このゲーム一人専用ですので……私はそのプレイしてるところ見るだけで大丈夫ですから」
「柴橋が言うならいいんだけど。いったいどんなゲームやるんだ? ホラーとか俺結構苦手だけど……」
コントローラー受け取るとテレビ画面に……
『プリティラブラブサマーバケーション!』
制服を着た美少女達が画面いっぱいに映し出された。
「……え?」
これは所謂恋愛シミュレーションゲームだ。
「……え、これ俺がやるの? え、だってこれ……」
普通こういうのって一人でこそこそやるもんじゃないのか?
「は、はい……私間違えて買ってしまって、一切プレイしないのももったいないので……でも、こういうのって、男の人の方が楽しめると思って……先輩……『お願い』します……」
ゲームって間違って買うモノなのか? 隣に柴橋がいる前でこれやるって……確かに男性向けのゲームであろうけど……
「わ、分かった。でも俺やったことないんだけど、大丈夫かな」
「先輩こういうのしないんですね……私も専門外です。対戦ゲームの方がやりがいありますし」
まぁ、俺が断ることは絶対できないのだけど。
「じゃ、始めるぞ……」
恐る恐るコントローラーを握る。
〇〇〇恋愛シミュレーションゲーム
さ、流石。佐奈川さん! 先輩の好みを知る方法にまさか、恋愛シミュレーションゲームで来るなんて。
一緒にゲームをする仲なら、恋愛ゲームを選んでも問題はないし、自然に好みのヒロインを知れるんだ。必死に調べて一番評価が高いゲームがこれだった。
プリティラブラブサマーバケーション。略してプリバケは常夏の島に主人公が転校してきて、女子達と恋愛に発展していくゲームらしい。
ヒロインも10人以上おり、プレイヤーの選択肢でエンディングが変わっていくとのこと、ヒロインが多い方が先輩の好みも知りやすい。
ゲームが好きな私でも、恋愛ゲームはやったことがない。そもそも、操作性のないゲームはどうしても性に合わない。
そういえば、先輩私の足ずっと見てたけど……何を考えてくれたんだろう。思い切って足を見せるのって大事なのかな……
もっと、先輩に足見られたいな……
『君の名前を選んでね! 女の子が呼んでくれるよ!』
「え、名前どうすれば。『にくたべたい』でいいかな」
「ヒロインが主人公の名前呼ぶたびに『にくたべたい』って言ったらおかしくなりませんかね……」
「確かに、普通に『まさや』でいいか」
先輩は自分の本名でやるんだ……
『まさやくんでいいんだね。さぁゲームが始まるよ!』
「な、なんか怖いな……なんだろ……」
すると、ゲームのヒロインが出てくる。
『あ、久しぶりだね……私は幼馴染のサクヤだよ。覚えてるかな?』
ヒロインとの会話で選択肢が出てくる。
『久しぶり!』『覚えてない』『人違いだよ』
「……これを選んでけばいいってことだよね……どうしよ」
選択肢に迷ってる先輩可愛い……最高……
「は、はい。先輩の好きに選んでください。私は先輩のプレイしてるところ見ているだけで楽しいですから」
「分かった。多分これ『久しぶり』なら好感度アップだし、後の二つは好感度を下げるんだと思うな」
「まぁ、そうですよね……でも、ほんと先輩の好みで大丈夫ですよ」
なんかしっくり来ていなかった。直感が『人違いだよ』を選んでほしがっているように、このゲームから聞こえる。
「ゲーム配信者みたいにやろうかな」
「そ、そうですね……」
その後先輩とプリバケを一緒にやっていっが。
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