第12話 熱血!球技大会決勝!
☆☆☆決勝の相手
運よく俺達は決勝へ進出した。
思い返すと、俺自身あまり活躍できてない。自陣のゴールを守備したり、零れたボールを拾ったり、池谷達にボールを回したりしていたためだ。結局一回も入れることなく決勝に来てしまったのだ。
「そうかE組は海外からの留学生がいたな……完全にノーマークだった。ジョン・ゴゴゴン。幼い頃からバスケの英才教育を受け――(以下略)」
海外勢の体格はどう見ても俺達とは比べ物にならないほど大きい。流石に部活でやってるA組もきつかったようだな……勝てるのかこれ。
「エーグミクヤシガルカオハ、トテモオモシロカッタデスネーHAHAHA!」
「
ジャンプボールはもちろん相手の物だった。パスの隙間を狙って何とかボールを奪い返すと……
「武野! 俺にボールを回せ! 今の俺ならこの距離からでもスリーポイントを……っぐあぁぁ!」
「鈴木ぃ!」
「ダカラ……アマイトイッテイルンデスヨ。ニホンノバスケハ……」
「まさか、ファウルすれすれの動きで鈴木を場外に追いやるとは……ジョン・ゴゴゴンおそるべし……だが、対策はある……武野注意して掛かれよ」
これ球技大会だよな。
「HAHAHA! ニホンノゴールハチイサイデスネー! ナンドデモイレラレマス!」
戦いは一方的なものだった。俺達は為すすべなく、E組にゴールを許してしまう。
ここで前半戦が終わる。
「くそ! なんだよあいつら、反則じゃないか! なんで審判は反則を取らないんだ! こうなったらこっちも、日本人らしく木刀で対応しないと!」
鈴木が怒りを露にしている。ほんとだよ、もうこれバスケじゃないもん。
「落ち着いた方がいい。木刀を持ち込むことこそ、E組の思う壺だろう。だが……今のままでは僕達が負ける確率は……100%だ」
「だけど俺達にできることってもうないと思うんだけど……俺もサッカーじゃないから限界がある……」
皆が沈んでいた。そんな時だった。
「――待たせたな。今何点差だ?」
ジャージに着替え遅れてきた男。この場にいた一同が彼の登場を待っていた。
「「「「「遅刻マスター秋山……!」」」」」
「『――ヒーローは遅れてやってくる』(クイ)」
だから煽り分で言うのをやめてくれ川上。
やがて休憩は終わり、後半戦がスタートする。
遅れてきた『遅刻マスターこと秋山』の登場によりB組の雰囲気が変わった。
「ホホウ。サッキトカオガカワッタミタイデスネ。ケッカハカワリマセンガ……アナタフウニイワセテモラエバ、マケルカクリツ100%デス。HAHAHA!」
「いいや、俺が来たんだ。100はない。60%くらいに落ちているはずだ」
秋山は常に学年トップの成績でありながら、運動神経も抜群という超高スペックなやつだ。ただし、異常なほどの遅刻癖があり、何かと遅れてやってくる。
原因も寝坊したというわけではなく、信号を渡るおばあちゃんの荷物を盛ったり、迷子の子供を交番に届けたりと、遅刻理由の大喜利大会みたいになっている。
そして、当然秋山はバスケも完璧だった。E組の反則すれすれ攻撃を完璧に捌き切っている。
「秋山は間違っている。君がいてくれれば僕達の勝利の確率は80%いや90%になる……(クイ)」
秋山の参戦により、試合の空気が変わっていく。まだ体力にも余裕のある秋山を主力にしてB組は点数を入れていく。
俺は一度もシュートのチャンスがないまま、試合に出続けていた。息はかなり上がっているし、身体も重くなっている。
そして、全力で戦っているB組全員同じだ。所謂ランナーズハイになっていた。みんなが目にビニールテープを張っている。それは池谷も同じだった。
「俺は……サッカーがしたい……そうか……バスケもサッカーだったんだ……だったら……うおおおお! スリーポイントシュート!」
「池谷がボールを蹴っ飛ばした!? まさか蹴りでスリーポイントシュートを決めただと、流石池谷だ!」
いや、バスケで蹴りはだめでしょ、だけど試合は止まらずに流れ続ける。ルールどうなってんだよ……
後半戦も残り短い。だが、秋山の頑張りで89対84まで追い上げた。もしかしたら逆転の可能性は十分残っている。
「くそ……今の僕では、あのボールを取ることが出来る確率は0%だ。そう、それが僕のデータの限界。僕が定めだデータは間違いはない。だけど……その確率を1%に近づけることができるのなら……うおおおおお! 川上典敏! 自分自身が定めたデータの限界を超えろ!」
データの限界を超えた川上がボールを取りそのままスリーポイントを入れた。
☆☆☆最後の力※※※(ここから、本編になります)
B組が87点E組が89……あと一歩で俺達が勝利できる。だけど負けたくないのは相手も同じだろう。これを守り切ることが出来れば……
息が切れそうだ。心拍数も普段の倍以上跳ね上がっている。残り時間8秒だ。試合は再会する。まずは相手は守備に徹するはず。そこを……秋山の外国人留学生にも劣らないフィジカルで奪い取った。しかし速攻で秋山は囲まれた。
「っく……川上……受け取れ」
残り五秒。今の川上ならスリーポイントシュートが入るはず……しかし相手チームも予想していたようで一気に走っていく。
「僕がスリーポイントを決める確率は100%……」
届くか……? え?
「残念。フェイクだよ……後は頼んだぞバイトマスター」
しかし、川上がボールを俺にパスした。このタイミングで俺に渡すのか?
池谷に回すか……? いや、今、この状況でマークされていないのは俺一人だけだったから、川上は俺にボールを回したんだ……
だが……俺に……
「――っぱい! せん……ぱいっ!」
大きな声援が飛び交う中でその声だけは聴き逃さなかった。今まで聞いた声の中で、一番大きい柴橋の声だ……それも、多分俺を応援する。
「……!」
もう迷いはなくなった。自然とボールをゴールに向けて投げていた……
試合終了の笛が鳴る。ボールは……点数は……B組が90点……
「入った……?」
「「「「「武野!」」」」」「バイトマスターぁ!」
バスケチームは俺を抱きかかえ胴上げをした。い
俺にバスケの経験はない。まさかバイトで新聞を正確にポストへ投げ入れられたことが活かされるとは思わなかったけど……なんとか活躍することが出来た。
兎にも角にも優勝することが出来た。
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