第11話 熱血!球技大会始動!

☆☆☆球技大会当日


一週間が経つ。それまでのことは柴橋とゲームをしたり、ゲームをしたり、新聞配達のバイトをしたり。ゲームをしたり。コンビニでバイトをしたりの日々が続いた。


柴橋には球技大会時間が合えば見に行くと告げる。


競技の時間を確認すると、俺達の男子バスケットボールが午前の部であり、柴橋が出ることになる女子ドッジボールは午後の部となっていた。


ジャージに着替えると、体育館へ向かう。


「っふ……ようやくか……あの雪辱から一年。漸くリベンジの時が訪れたんだ」


一人だけスポ根モードに入っている川上は、普段よりも血気盛んだった。いや、池谷以外の男子のやる気が満ち溢れている。


「「「「モテたい……モテたい……女子にモテたい!」」」」


モテる男池谷は男子達の飢餓状態に若干引いている。


「み、みんな凄いやる気だね……頑張ろう……!」


「打倒池谷……池谷以上に俺達が活躍するんだー! 絶対勝つぞ!」


「俺が敵なのか!? でも、皆がやる気ならいいんだけど……!」


池谷が悪役にされているが、そのおかげで士気が上がった。池谷もあまり気にしてないのが彼のモテる要因だろうな。


下級生クラスの女子がイケメン池谷を観戦しに来ていた。


「「「「「池谷先輩頑張ってください~~~」」」」」


「うん。ありがとう(イケメンスマイル)」


爽やかすぎるぞ池谷……!


「「「「「きゃ~~~~~!」」」」」


「「「「「くそぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」


そういうとこだぞお前達……あ


一緒に行動していた柴橋を見つけた。


柴橋も俺を見つけたようで会釈だけして、クラスメイト達の後ろを歩いて行った。


その後LEMONからメッセージが来る。


『私達のクラス時間ありそうなので、先輩の試合見てていいですか?』


『かっこいいところ見せられるか分からないけど、本気で取り組むよ』


柴橋をやる気にさせる試合をしなくては……だから俺にできることをするつもりでいる。


『頑張ってください先輩。応援してます!』


『応援ありがと』


こうして球技大会は始まった。


☆☆☆球技大会でスポ根はないよ


※※※(ここからのエピソードはラブコメ関係ありません。球技大会を巡る男たちの話です。興味ない人は次話の※が出るとこまで飛ばしてください)


初戦の相手は二年C組か。すると……


「二年C組のバスケ部は一人だけ。高坂だ。190㎝超えの長身であり、我が校バスケ部のフォワードを務めている。彼の長い手足から繰り出されるドリブルが平衡感覚を狂わせることから『催眠術師の高坂』と他校から恐れられている(クイ)」


……えぇ、ドリブルで平衡感覚狂わせるってどういうことなんだ? いや、データマンが誇張しているだけかもしれないな。


なんでそこまでスポ根漫画にしようとしてんだよ。球技大会だぞここ……せめて地区大会とか練習試合とか……球技大会でスポ根してる人見たことないよ。


「他のメンバーは野球部を退部になった鈴村。卓球部で全国大会に行きたいと宣言していた松島。テニス部の西田などがいる、その他には……おっと、どうやら、相手の登場だ……(眼鏡クイ)」


そこで、一際長身の高坂が現れた。確かに川上のデータ通り。手足が長いな。俺達を見ると……指を差し――


「小さいのが一人……二人……三人。な~んだ。雑魚ばっかじゃん……君達。俺いなくても勝てるよね……俺、無駄な体力を使いたくないんだよね。このクラスには俺と同じ『天啓ギフテッド』を持つ奴いないしさ……俺はあいつらの相手をするよ……」


なんか突然知らない用語出てきたんだけど……天啓ってなんだよ。


「宣言しよう。僕のデータが君を引きずり出してやるさ……僕には見えているんだ。高坂が悔しがる確率は……86%だと(クイ)」


「いいえ、私の占いによれば、B組が負けることはほぼ決定していますよ……おほほほ……」


データキャラの天敵。占いキャラが出てきただと!? バスケットボールを水晶に見立て占っているのか……! なんだよその雑なキャラ付け


「ほう……僕のデータが占い如きに測れるとは舐めてくれるな!」


「データは所詮予測の息を出ない。だが占いは未来を見ている……私の方が上だと証明してあげよう……おほほほ……」


占い部の人もすげぇノリノリじゃん……そもそもお前らバスケ部じゃないだろ。


こうして、球技大会一戦目が始まった。ここからは、データマスターこと川上のダイジェストでお送りしよう。


☆☆☆川上の独り言タイム


「絶対勝つぞ! おう! 皆もやる気に満ちているようだ。まずジャンプボールは相手に取られた。だがこれはデータの内だ。守備に回るんだ! 23%! 45%! っく……先手は取られたか! 占い部の卜部の策略にまんまと乗せられている場合じゃない。確かに池谷はバスケの経験は浅いがサッカーで鍛えたフィジカルを活かせば、ポイントを稼げる! 今のフリースローが入る確率89%……入った! しかし、C組の反撃が始まる確率100%! 流石元野球部だ……走るスピードが落ちていない。っく! 池谷にボールを回しすぎるな! 三人で囲まれては確実にブロックされるぞ! 他のやつでボールを回すんだ……ほう、僕と一対一でやるとは……『データ』か、『占い』か、今ここで決着をつける時が来たようだ! フェイントの確率87……いや、25%! っく! 占いが僕のデータを妨げている……!? うお! だが、そんなことも想定できるのが僕のデータなのだよ……貰ったよ占い師! データは未来にないんだ……ずっと僕の脳に存在しているのだよ。うおおおおおお! よし、僕が二点を入れることに成功した……このままの勢いを大事にしていこう! 君達も……――目立ちたいんだろ――そうだ。よくやったぞ鈴木! 田中! 山田! 連続で点数が入った! よし、かなりの点数をリード出来た。このままの調子で油断せずに行こう! ……ほう……ここでようやく、『催眠術師の高坂』を呼び出すことが出来たか……皆。彼のドリブルに惑わされるな……うぅぅ! 頭が! 何……僕達が怯んだ一瞬の隙にスリーポイントを決めたというのか……? 僕達は何もできないままだった……何……なんだと……今まで稼いできた点数の差がみるみる埋まってきている……これが『天啓ギフテット』を持つ者と『持たざるノーマル』の差……だというのか、だが……初戦敗退など僕達に許されるわけない……そうだろ? 皆。皆……そうだな。あれは僕がまだ小学二年生の頃。夏の季節だった。とあるスポーツ漫画を読んでいた。『どうしてデータキャラはかませ犬扱いされるの?』そう。いつもデータキャラは、対戦相手にデータを上回る試合をされて負けてしまう。あの時の僕はそれがどうしようもなく嫌だった……だってそれは、今までデータキャラの努力が真っ向から打ち破られるみたいで……悔しかったんだ。僕は中学生に上がると野球部やサッカー部やバスケ部やテニス部を兼部した。そして、試合中に喋るなと言われほとんどの部活を辞めたんだ。データマスターが喋るなと……? 駄目だ。僕は僕の信念を捨てきれるわけがないんだ。僕が僕であるために、僕が僕らしくあるために……、その時僕の中の何かが弾けた……これは一体。身体と脳が全て透き通った感覚に陥った。これから起こる事象を全てデータ見えるような……そのために僕は……僕は! うおおおおおおお! 『――データマスターの覚醒……その天啓は……』 残念だったな。高坂。長い手足を使うドリブルは全てデータによって見切らせてもらった……いや、これから起こる事象は全て……僕のデータの内だ……貰った! っふ! 53%! 83%!  32%! 93%! 池谷。決めろ……駄目か! あとちょっとで逆転できるというのに……試合時間は3秒だと言うのに! 何。おい、鈴木! 大丈夫か! C組のファウルにより僕達はフリースローを手に入れたわけだ。点数は62対62……鈴木がフリースローを決めることが出来れば、僕達の勝利だ……何? 緊張しているって鈴木。大丈夫だ。鈴木がフリースローを入れる確率は……100%だよ。ほらな。言った通りだったろ100%ってな、どうだ。これがデータの勝利だ!」


とにかく俺達は勝利した。


……こいつ、試合中ずっと喋って息上がらないの凄いな……途中からスポ根漫画にある回想全部独り言のように喋ってるの恐怖だったし。次週に続く煽り分みたいなのも言ったいた。途中%しか言ってなかったけど、何の確立だよと突っ込むのを諦めていた。


データが覚醒して目にビニールテープ貼り出した時は相手のチーム引いてたぞ。確かに漫画とかでゾーンに入ると、目に残光出る派手な演出なんだろうけど……ビニールテープじゃすげぇ安っぽくて笑いそうになったな。相手の高坂は楽しそうにしてたけど……


「……もう少し俺が早く出ればよかったな……悪いなメガネのやつ……舐めた態度とっちまってよ」


「最高の勝負だった。おかげで僕のデータは更なる高みに行くことが出来た。礼を言うぞ」


スポーツマン特有の爽やか要素!


「俺も、俺の弱点を知ることが出来た。いつまでも催眠術に頼ってられないってことだ。だが、俺達を倒したからっていい気にならない方がいいぜ。メガネ。C組には天啓持ちのバスケ部は俺しかいなかったが、Aクラスには5人いる。それもレギュラーだ……恐らくA組が優勝候補だろうな……ったく、とんだダークホースがいたもんだよ」


パワーインフレ起きてんな。その後もB組は川上の頑張りもあって勝ち進んでいった。運が良いのか優勝候補と呼ばれているA組とは当たらずに、決勝へと進むことができた。


「ようやく去年と同じ舞台に立てた……武野声低いぞ……モテたくないのか! 初戦でフリースローを入れた鈴木は休憩中。見ていた女子の加藤とちょっといい感じになっていたのだが! (眼鏡くい)」


「マジか鈴木おめでとじゃん。逆転のフリースロー凄かったからな」


「ほんと球技大会最高だよ。こんな非モテの俺に加藤さん声かけてくれたんだぜ? 俺さこのバスケ優勝したら、加藤さんに告白しようと思うんだ……」


それ、死亡フラグじゃないか……


「どうやら、決勝の相手が勝ち進んできたみたいだ。僕のデータによれば案の定A……何? A組が破れただと……相手は……E組だと!? 『――優勝候補まさかの敗退……E組その実力は……?』」


「ニホンノバスケハキレイスギマスネ……ガイコクデハソウハイカナイデスヨ!」


……球技大会だよなこれ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る