第8話 変なクラスメイト達

☆☆☆クラスにて


翌日。新聞配達のバイトを終え、いつものように学校へ向かった。そのまま2年B組の教室へ入り席に着く、HR開始まで時間があるため動画を見ていた。


そういえば柴橋のこと考えないとな……友達をどうやって作るか……


そもそも俺の交友関係って……思い返せば……


「やぁ。朝からスマホをいじっている若者は、スマホ中毒に陥っている可能性が高い。そうデータが告げている。『バイトマスター』もその一員なのかい……?」


眼鏡をくいっと上げた男子が俺に話を掛けてくる。ちな――


「――ちなみにバイトマスターというのは、僕の友人『武野正也たけのまさや』の通り名である。そして、僕の名前は川上。またの名を『データマスター』という……のさっ(眼鏡をくいっとする)」


誰に向かって説明してんの。ちなみにこいつは眼鏡をかけているが成績は中の下である。所謂眼鏡馬鹿だ。テストを受けるたびに『データにないぞ!』と叫んでいる。とてもうるさい。


「このクラスには四天王がいる。バイトマスターの武野。データマスターの僕。遅刻マスターの秋山。砂マスターの小林だ」


どうでもいい情報だな。なぜ俺が変人達の中に入れられたか納得できない。


「そういえばさ、川上。お前のデータを見込んで聞いてみたいんだが」


「何度言わせるんだい。僕のことは『データマスター』と呼んでくれたまえ」


「俺ってモテるか?」


「……君がそんなことを言うとは珍しいね、バイトに生きてバイトで死ぬ。稼いだ金を推しの配信者に貢いでいる男がモテると思うのかい?」


事実である。実際――


「――君が今見ている女性動画配信者『クロスローズ』はプロゲーマーだ。口が悪いためよく炎上しているが、ゲームの実力は本物だ。チャンネル登録者も十数万人いて、ゲーム大会も総なめしている(眼鏡クイ)」


推しの説明全部取られたよ。補足するとFPSでは後ろに目がついているかのような反応速度を持っている。本当にプロの実力を持ち憧れるほどだ。だけど顔出しNGのため素顔は知らないが絶対に可愛い。いや、ほんと可愛いと思う。


「毎回スパチャで『結婚してください』と飛ばしているのは素直に気持ち悪いと思うのだがね、そんな行動をしている男子がモテる確率は0%だ……(クイッ)」


「はいはい分かった。川上もう喋んなくていいから……」


結婚してくださいと言うのもネタであるし、毎回返ってくる『しねぇよバーカ!』を待っているだけだし、本当に結婚できるとは思ってないよ。


「大変だぞ砂マスター! バイトマスターが色恋沙汰にうつつを抜かそうとしている! モテるわけないのになぁ!」


川上は近くで砂を双眼鏡で見ている小林の元へ向かう。


小林は女子であるが――


「――彼女は恋愛に興味なく、各地域でしか取れない砂を集めることを趣味としている。見た目は良いのに砂にしか興味がないため、未だフリーだ。男子の撃沈率は脅威の100%……(クイ)」


だから誰に説明してんだよ……


「……えー武野がモテるとか思ってるのー? 現実見なよー私は砂見てるけどー」


小林いつも通り凄い脱力しているな……すげぇ興味なさそうだ……いいんだけど……


「それでいいよ。お前に聞いたのが間違いだった」


「ふむ……その訪ね方からして何か悩み事かい? バイトのことだね?」


「まぁ。バイトのことだな。バイト先の後輩に相談されてさ……」


川上に柴橋のことを嘘交えて話してみた。


「なるほど、会話が苦手な後輩に友人を作り方を教えたいということだね。ふむふむ分かった分かった……っで?」


「っでー?」


どうやら聞いていた小林からも返ってくる。流石にいらいらした。


「お前らマジで何なの? 時代に感謝しろ、昭和だったらグーが出てるぞ」


「悪い悪い。しかし、バイトマスターから相談に乗られるとはね、今までの君ならばそんなデータはなかったようだが……っは! データにないぞ!?」


こいつらに相談したことなんてないし、しかも、こいつらのせいで俺まで変な奴扱いされてるからな……


「と言ってもー私友達いないしー参考にならないからーごめんね武野ーもしその子が砂好きだったら私紹介していいよー?」


絶対に違うだろう。


「おい、砂マスターまさか僕達が友人ではないと言いたいのかい? 二年B組四天王の絆は!」


「川上が勝手に纏めてるだけでしょーそこに絆とかないしー」


「そ、そんなぁ!」


川上がショックを受けていた。


そして全く有意義な情報が得られないまま朝のチャイムが鳴る。


冷静に分析したけど俺の交友関係もろくなものじゃないのでは……?


「バイトマスターも僕を友人だと思っていないのかい?」


「まぁ、お前が思うならそういうことでいいよ」


「恩に着るよ」


普通に気持ち悪いなこいつ。言い合いになるのがめんどくさいから否定するの諦めただけだ。


「武野も人が良いことでー正直ー私達去年クラスから一緒だったから話しているだけだしねー」


そう、俺も――


「バイトマスター。データマスター。遅刻マスター。砂マスター……あれは去年の四月……伝説の四人は同じクラスに集まった。一年C組こそが伝説の始まりと言っても過言じゃない……」


川上がどうでもいいことを話し出したのでカットしよう。


「だから誰に説明してんだ川上」


「僕はデータを集めて語るのが好きだからね、いつだって誰かを語るし、いつだってデータを集めるんだよ……データに終わりはないからね(クイ)」


「武野の配信者推しも終わってるけどー川上のデータ馬鹿も終わってるねー」


砂をずっと見てる人には言われたくないのだけど。


教員が入ってくると皆が席を付き、その後に遅刻魔の秋山が遅れてきて、授業が始まった……

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