第6話 ゲームを終えて

☆☆☆休憩


モンヘンを中断して、俺達は休憩を取った。


「そ、その、ゲーム中はごめんなさい……」


「俺が邪魔だったのは事実だし……まぁ。友達出来たら言うのは良くないと思う……」


「は、はい……ごめんなさい。……その、普段は先輩のこと邪魔だなんて思わないです。今もこうして私と一緒に話してくれるのすごくありがたく感じています……先輩」


柴橋は微笑む。


「しかし、柴橋ってゲームほんと上手いよな……俺もクラスじゃ上手い方だったけど、ほんと天と地の差があるよ。滅茶苦茶練習したんだな」


「ゲームが好きですので……小さい頃からずっとやってまして……その私……小中は不登校でして……あ、ごめんなさい私……こんな私のこと興味ないですよね……どうでもいい独り言と同じです……」


……地雷だった……いや、コミュ障を克服する打開策が見つかるかもしれない。聞いておいた方がいいだろう。


「話してほしい……柴橋のこと教えてくれたら対策とかできるだろうし」


「先輩……」


「そんなに自分を嫌わなくていいよ。少なくとも俺は柴橋のこと尊敬している。こんなゲームが上手いなんて誇れることさ! もうプロ行けるよプロ」


「先輩……私は想像通り。小学生の頃から暗くて……クラスでもいじめられてまして……学校行くのが怖くなったんです。それで家で引きこもってしまって……ずっと、ずっといろんなゲームやっていました……それで、その周りよりゲームの腕が少し上になったんだと思います……」


少し上とはいったい……まぁ、そのトラウマがあるから、他人と仲良くなるのが怖くなったのか。


「……その時『ブス』とか『死神』とか『幽霊』とか言われてまして……やっぱ私暗いからですよね……先輩も私のこと暗いと思っていますよね」


明るいなんて嘘でも言えるかよ。


「うん……柴橋は自分に自信がないから暗く見えてしまうのは否定できないけど……変えたいって思っているのが大事なんだ。苦手なことを克服しようと考えられるだけ前の自分より良くなってると思う」


「私明るくなれますかね……友達作ったり、ナイトプール行ったりとか……」


「少なくともウェイウェイしてるパリピ姿は想像できないけど、友達を作るぐらいならできると思う。まずは人との会話になれることだな。俺に冗談でも言えればいいんだけど。いくらでもサンドバッグになるからさ、一緒に頑張っていこうな」


「は、はい……がんばります……先輩……」


気が付けば20時を回っていた。流石にこれ以上長くいるのは良くないな。


「それじゃ、そろそろ、俺は帰ろうかな」


「え、もう帰っちゃうんですか……泊まっていきませんか……」


泊まるって……柴橋は男というモノを理解していないのだろうか?


「い、いや、流石に……な、もう帰らないと」


柴橋は捨てられた子犬のような顔をして、寂しがっていた。それだけ誰かを家に招いたのが嬉しかったのだろうか。


「……そう、ですよね……先輩。これバイト代です」


柴橋から封筒を受け取る。ただ喋ってゲームしただけでこれだけ貰えるのか……


「本当にいいのか、こんなに貰って……」


「それと……その……先輩今度いつ一緒にいてくれますか?」


「それはだな……」


今バイトのスケジュールを確認するのも面倒だし……


「そうだ。柴橋LEMON交換しよう」


LEMONとは日本で普及しているメッセージアプリであり通話もできるものだ。


「え、いくらでですか? 先輩のLEMONって五万くらい……?」


「無料だよ。流石にこれ以上受け取れないって」


「いいんですか……先輩の連絡先……」


柴橋もスマホを取り出し交換した。ふと画面がちらりと見えたけど結構未読メッセージあるんだな。


「それと柴橋。男友達は作るなよ」


「……え」


「それじゃ、お邪魔しました」


そのまま俺はエレベーターに乗り自宅へ帰った


☆☆☆自宅へ


さっきとは比べものにならない古びたアパートだ。リビングに入る、父さんは酒に溺れて眠っている。母さんはその現状を受け入れられず苛立っていた。


「ただいま母さん。俺も新しいバイト見つけたからお金入れるよ」


「正也おかえり。お前も何か言ってやってよ! あの人本当に酒ばっか飲んで……今一番大変な時だってのに……」


「父さんいろんな人に騙されて借金背負ってるんだから仕方ないと思うけど。……俺はコンビニで飯買ったから一人で食べてるよ……その母さんも無理しないで」


「正也……」


俺はそのまま自分の部屋に行き、イヤホンをしてスマホをつける。動画サイトへアクセスした。


「今日は配信やってないのか、珍しい……」


俺が推しているネット配信者の配信は行われていなかった。


過去のアーカイブ漁ってみるか……


そのまま飯を食べ風呂に入りそのまま布団で横になる。こうすれば自然と眠気が来るだろう。


しかし……昨日と今日でいろいろあった。柴橋のバイトがなければ俺はバイトをもっと増やさなければならなくて、これまで以上に大変な生活になっていただろう。


柴橋真子……友達出来るのかな……正直めちゃ心配になってくる。何より『友達』のふりして、ATM扱いされないか心配になる(どの口が言うのか)


すると、LEMONの音が鳴ると柴橋からだった。


『先輩。今日はありがとうございました! 明日からもよろしくお願いします!』


『おう、これから一緒に頑張っていこうな。まずは友達を作ることだからな。おやすみ』


『おやすみなさい! 先輩!』


文章だとはきはき喋るんだな。向かい合ってないからってのもあるのだろうけど……


眠ろう。

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