第5話 協力プレイ

☆☆☆負けました


柴橋と対戦パーティーゲームの王道シマブラをプレイして、そして俺は手も足も出ることなく即死コンボを叩きこまれた。


ゲームセットの音が鳴り、タイム制なのにアイテムも取ることなく戦いが終わる。


「あれ、え……今何が起こったの……え?」


「ご、ごめんなさい……あ……」


「柴橋……俺に実力がないのは分かったけど、これじゃ戦いにすらなってないから……柴橋に友達出来て俺と同じ事したら多分いなくなると思う……」


正直に言えば、割とショックだった。俺の場合最初から勝てると思ってなかったからまだ傷は浅かったが、自信満々に『俺シマブラ強いよ?』と言ってくるクラスの男子がやっていたら、メンタルやられるぞこれ……最悪コントローラ―投げるな。


「そ、そうですよね……ほんっとごめんなさい……やっちゃった……先輩。罰として私をコントローラーで殴ってください!」


今にも泣き出しそうだ。トラウマが蘇ったのだろうか?


「いや、暴力はダメだからね。それに今日気付けたんだからいいじゃないか、そういう契約だしさ、いくら俺で失敗しても離れることはないんだから」


「せ、先輩……あ、ありがとうございます……ほんとに優しくて……」


少し落ち着いたようだ。


「その……先輩、私のダメな所見つけたら、どんどん言ってほしいです。頑張って改善していきますから……」


☆☆☆モンスターヘンター


「とりあえずシマブラはやめよう。協力プレイできるモンヘンにしようか」


シマブラをやっていたら回数重ねるたび自分の情けなさが露見してしまうのでモンヘンに変えた。


「そ、そうですね……モンヘンなら一緒にできますので、サブのこっち使ってください。武器と防具もほとんど揃っていますので」


テレビにも繋げられる携帯ゲーム機を受け取るとランクがカンストしていた……装備も滅茶苦茶強いの揃ってるし、ハンマー使いなので一番強そうな装備にするか、スキルに集中もKOもついてるし大丈夫だろう。


「最近作やってなかったし……って、つっよ……ヘンターランクカンストしてるじゃん」


プレイ時間1000超えてるし……


「結構やりこみましたから……先輩はハンマー使いなんですね」


「あぁ、モンスターからスタン取るの楽しいしさ。柴橋は弓なんだな、一番得意な武器なのか?」


「はい。このモンスターだと一番火力出せるのが弓なんですよ。全武器使いましたけど私は一応片手剣使いですね……」


「すげぇ……全武器とか使ったことない。ハンマーと大剣だけだわ」


「……とりあえず、何狩りましょうか、ラスボスにします?」


いきなりラスボスは俺が三落ちするだろ確実に操作法も昔のままなんだから……


「ラスボスは流石に……看板モンスターで良くないか? 俺前々作の携帯ゲーム機でしかやったことないから分からないけど……多分パッケージ飾ってるだけあって良いモンスターだろうし」


「あ、先輩今作のやってないんですね。そうしますか。私キャリーしますよ……クエスト貼りますね……」


俺も張られているクエストを受注した。柴橋の装備は弓か。


「うおーーマップすげぇ! ……え、犬ナニコレ。知ってたけどエリア移動のロードないって快適だなぁ……って俺どこにいんだ……モンスターの元へ行かないといけないのに!」


「先輩が迷ってる……あ、モンスターと接触しました……先に戦ってますね」


画面の左上にある柴橋の体力を見るとほぼなくなりかけてる。


「柴橋大丈夫か!? 今粉塵飲むぞ!」


仲間を回復させる。アイテムを使うが……


「あ、先輩。火事場発動してるんで大丈夫です。むしろ回復されると……あっ」


邪魔ですって言おうとしてなかったか?


「す、すまん……すぐ向かうからな。あれ、今俺どこいるんだ……」


「先輩。その崖登って虫を空で二回使えばショートカットできますよ」


何言ってんだ柴橋は……マップをうろうろしているが一向にモンスターの元に辿り着けない。


そして……


「あ、倒しちゃいました」


「え」


結局モンスターと戦うこともなくクエストが終わった。


そして再び気まずい空気になる……


「あ、あの……せ、先輩。こ、これは……その違くて……その……」


「い、いいんだ。俺が迷子になっただけ……でも、その、言わせてもらうと……マルチプレイで火事場使っている奴初めて見たんだけど……」


「……私マルチプレイしたことないですので……」


「あ」


柴橋の地雷を踏んだ。シマブラと俺と柴橋ではゲームの向き合い方に差が生まれてしまったいる。


「そ、その柴橋にとって……モンヘンとはどんなゲームなんだ……」


「どれだけ早くモンスターを倒すかのタイムアタックだと思っています。先輩は?」


「二落ちしてからが本番のゲーム……特に友人とやってる時死にかけてめちゃ『粉塵! 粉塵!』とかやるんだけど、それが楽しくってさ……あと、仲間が落ちたら、エリア移動しまくって剥ぎ取りの時間稼ぐとか……あ……」


そして死にそうな柴橋を見る……


「どうせ私なんか……そんなプレイできずに一人でクリアしちゃったから……私に友達なんて一生できないんでしょうか……友達……私なんか……私なんか……」


「今度は移動がないステージのモンスター狩ればいいんだよ! そうすれば一緒にモできるし、柴橋が粉塵飲んでくれれば……まだ諦めることはない!」


「そうですね。私……やってみます」


そして……


「あ」


【力尽きました】


「先輩!」


【力尽きました】


「先輩!?」


今やっているモンスターは強敵らしく、俺は手も足も出ずに二落ちする。


「いや、ここからが本番だから……二落ちまではクエストに影響ないし……せめて一度はスタン取って。一矢報いてやる。うおおおおお!」


「先輩邪魔です! ……あ」


うん分かってる。俺が下手なことくらい。でもさ……うん。聞かなかったことにしよう。


「今ブレスきますから! ちゃんと攻撃パターンを……三落ちは不味いですから!」


「俺も大体攻撃パターンが読めて来てる……行けるぞ俺も……こんな攻撃よけられるさ! ……え、薙ぎ払いブレス……?」


武器を展開していたため、緊急回避も間に合わない。モンスターの強力な薙ぎ払いブレスが飛んでくると吹き飛ばされる。


「先輩!!!!」


体力ゲージがぎりぎりになり、起き上がると気絶状態になっていた。


「粉塵! 柴橋粉塵! やばい落ちる落ちるから! マジで死ぬ!」


高速でスティックを動かしているがモンスターの狙いはこっちに向かっている。


「先輩今飲みますから……あ、粉塵持ってきてない……」


あ、それもそうか……マルチになれていないんだもんな……


「柴橋!!!」


「先輩!!!」


モンスターが此方に向かって突進してくるが危機一髪。気絶が解けて緊急回避が成功した。


「せーふ……はぁ……はぁ……」


「先輩!!! 早く秘薬飲まないと!」


「柴橋!!!」


「先輩!!!」


そして……


「はぁ……はぁ……何とか倒せた……」


「そ、そうですね……このクエストもう無理だと思ってましたよ……」


何とかモンスターを倒すことに成功した。何度俺が死にかけて慌てたことか……


「どうだ。これがモンヘンだ……はぁ……死ぬほど焦ったけど」


「わ、私も……こんなことになったのは初めてです……とりあえず休憩しましょうか……」

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