第4話 後輩の自宅にて

☆☆☆タワマン


「え、柴橋タワマン住んでんの……す、すげぇ……うわ、エントランスめちゃ豪華だし……」


柴橋の持つカードキーで自動ドアが開いた。すると豪華なエントランスが広がる。いくらするんだろうか……


「柴橋。俺に変なとことかないか? こういう場所って制服NGとかマナーとかさ……」


「そんなマナーないですって。高級ホテルじゃないので……(小声で)慌てふためいてる先輩も良い……」


「そ、そうだよな。こんな壮大なエントランス初めてだったからつい冷静さを欠けちまった。本当にお嬢様なんだな柴橋……」


「お嬢様というわけでは……」


「おかえりなさいませ。柴橋様」


エントランスに在住するコンシェルジュが挨拶をすると……


「……っんもす……(かなり小声で)」


コンシェルジュにもコミュ障が発動して柴橋は頭を下げる。っんもすってなんだよ。


「どうも……お邪魔します」


こちらもコンシェルジュに頭を下げると、エントランスを通り過ぎエレベーターに入る。


「それで、柴橋は何階に住んでいるんだ?」


エレベーターの階数を見ると三十階ある。


「十七階のワンフロア貸し切ってます。隣人トラブルとか怖いので……」


柴橋は十七階を押した。エレベーターが上がっていく……え?


「ワンフロアって……めちゃお嬢様じゃん……『ですわ~』とか言わないのか」


「わ、私が言うと思っていますか……? 『おーっほっほっほ』とか、お金はその……たまたま運が良かっただけですから……お嬢様とか言わないでください」


「もしかして宝くじ当てたとか? 一兆円くらい」


一兆円が当たるかよ。と自分で突っ込むが……


「……そうですね。そんな感じです」


あ、これ適当に流されたやつだ……


そう話し込んでるうちに十七階へ到着したそのまま柴橋がカードキーを扉に近づける。


「先輩。どうぞお入りください……」


「お邪魔します……」


雨で濡れた長靴を脱いで上がると、相当な間取りがあるのが分かる。ワンフロアを貸し切ってあるためかなり広い。


リビングに案内されると70インチくらいのテレビがある。すごくでかい。いくらするんだ……


「ソファーにどうぞ。それで飲み物は……」


このソファーもいくらするんだろうな……本革レザーで羨ましい……座り心地良!


えー俺の布団よりも寝心地良さそうなんですけど……


飲み物……え、一体何が出てくるんだ? なんか職人が厳選した高級茶葉で入れた麦茶とかか? 


「あ、そうだな、水で……いっそ泥水でいいぞ、人生でこんなソファーに座れるなんて思わなかったからな」


「じゃ、じゃあ水でいいですね」


「まさか、高級な奴じゃないよな一杯八百円とかのやつ!?」


「せ、先輩落ち着いてください。ペットボトルに入ってる水ですから。そんなに先輩が慌てることないです」


コンビニで売ってるペットボトルが出てきて落ち着いた。


「すまん。あまりに予想外のことが起きすぎて頭がバグってた……」


☆☆☆シマッシュブラザース


「そ、それじゃあ。先輩ゲームしましょう……えいっ」


すると、柴橋は隣に座った。三人掛けのソファーなので相合傘ほどではないが近い。


「それで、先輩何やりますか? シマブラもありますし、モンヘンも一緒にプレイできますし」


シマブラはよくやるパーティーゲーの一種だ。モンヘンも一緒にモンスターを狩るゲーム。よく友人とやっている。放課後の神様的存在である。


「シマブラでいいと思うけど」


すると、慣れた手つきで柴橋はシマブラをつけた。


「先輩って実力どれぐらいですか? 何人VIP入れましたか?」


当然の様に柴橋はアイテムなしストックタイマン終点を選んでいた。キャラ見ると全員VIP入ってるし……


「え、柴橋。ストックでやるのか……」


「ストック終点以外に何かありましたっけ?」


「い、いや。柴橋……ガチでやろうとしていないか?」


「……あ」


そこで俺と柴橋の微妙な考えの違いに気付いた。


「先輩って、他の人ともシマブラやってましたか?」


「あぁ友達の家でやってたんだが、そん時は普通にタイム制アイテムありでやってたけど、各自のコントローラー持ち合ってさ。あれめちゃ盛り上がるよな」


柴橋は固まっていた。そしてすぐに表情が暗くなり。


「……そ、そうですよね。どうせ私なんか友達とシマブラしたことないですし、そもそも友達出来たことない……むしろ家に誰か呼んだの先輩が初めてですし……コントローラーの持ち込みなんてする必要もないくらいありますから……全部捨てます……」


「捨てなくていいから! これから友達を作ってやればいいんだよ。女子でもゲーム好きな子いるし……そのために俺がいるんだから。シマブラを楽しもう!」


「そ、そうですね……先輩の言う通りです。アイテムありでやってみます……私カズマ使いますね」


「じゃ、リング使うわ。えぇぇあぁあ!」


緑色の剣士で初代からいるキャラクターだ。そして、キャラの叫びを真似した。


「なんですかそれ? えぇえあぁあって?」


柴橋が首をかしげる。


「え、キャラ選んだらそのキャラの真似しないか? えぇぇあぁあ!」


「っぷ……先輩なんですかそれ……えぇぇあぁあ! って……ははは」


柴橋はツボに入ったみたいだ。


「からの……ダーリン!」


キャラのカラーを黒く変える。


タイマンアイテムありタイム制で対戦始まった。そして……戦いは始まった。


「行きますよ……先輩……!」


何か柴橋の顔が、空気が変わったような気がしたが気のせいか……


伊達に俺もリングを使って長くない。友達との対戦でも何回もメテオを成功させている。(自爆して良く死ぬけど)。まぁ勝てるとは思わないが一回は落とすことが出来るだろう。


「行くぞ。柴橋!」


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