第41話 乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-5
一方その頃闘技場では……。
「ハァァァァァ!!」
羅刹の拳撃と羅漢の拳撃が激しくぶつかり合う。
するとお互いの拳から火花が飛び散り一瞬視界が真っ白に染まる。
羅刹はそのまま強引に拳を押し込む! しかしそれはフェイント! 本命は蹴り! それもただの回し蹴りじゃない! 身体を捻り遠心力を加えて放つ渾身の後ろ回し蹴りだ! だがそれを読んでいたかのように今度は羅漢がカウンター気味に左ストレートを放つ! 拳と脚が激突する! その瞬間またもや閃光が走る! だが今回はそれで終わりではなかった! なんと!拳と脚がぶつかった瞬間、両者そのまま振り抜いた! そしてお互いに後ろに吹き飛ばされた! 二人の距離が離れたところでお互い構え直す!
「さすがだな羅漢!」
「……そっちこそ!」
二人は互いに認め合っていた!
この戦いを楽しんでいるのだ!
「ハァァァァァッ!!!」
先に動いたのは羅漢の方だった!
地面を力強く踏みしめ一気に間合いを詰めると、素早い動きで連打を繰り出す!
しかも一発一発の威力が半端ない!
まるで機関銃のようだ!
それに対し羅刹は回避に専念していた!
最小限の動きで確実に攻撃を捌いている!
その証拠に羅漢が打ち込む度に地面が大きく陥没していく!
まさに一撃必殺の攻撃ばかりだ!
だけどそれでも羅刹は余裕の表情を崩していない。
むしろ楽しそうだ。
多分彼女はこう思っているのだろう。
ああ、やはりこいつは強いな……と
ともに同じ封獣を持つ者同士
封獣の支配権は両者同じレベルなのでどちらも封獣抜きで戦うしかない。
もっともそんなことに関係なく、お互い拳技のみで闘う事を選んだだろうが…
そんな二人を見て雷音は思った。
(ああ、やっぱり兄貴達はすごいなぁ……)
俺があの場にいてもおそらく何もできないだろう。
いや、そもそも勝負にならないかもしれない。
何せ封獣の力を引き出しても、あの二人には敵わないだろうから。
でもだからこそ憧れる。
あの強さに、美しさに……惹かれる。
もっと見ていたいと思う。……っていかんいかん!!今はそんなことを考えてる場合じゃなかった!!
激闘のどさくさに紛れナイアルラトホテップは最後の悪あがきをしようとしていた。
ナイアは両手を頭上に掲げた! すると奴の身体からドス黒いオーラが立ち上ぼり始めた!!
「うぉおおおおおおっ!!いでよ!!私の最強の配下よっ!!!」
次の瞬間ナイアを中心に巨大な魔法陣が展開されレッド侍、ブルー騎士、倒れたニンジャ、拳士、狙撃手、観測手、そして六本足の戦車を陣に取り込んだ!
「にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! にゃる・しゅたん! にゃる・がしゃんな! 邪神オード・ジ・アシュラ顕現せよ!!」
六人の死人兵と六本足の戦車が融合し六本足六本腕の巨人が生まれる。
身長は10メートルほどある。
それぞれの手に赤い野太刀、メイス、大楯、狙撃銃、二対の忍者刀を持っている。
下半身は六本足戦車で鎧は赤と青の和洋融合した鎧だ。
頭部は大きな兜のような形状で顔の部分からは鋭い牙が生えていた。
その姿はまさしく地獄の鬼のようだった。
挿絵(By みてみん)
『ぐおおおおおおっ!!』
雄叫びを上げると口から炎が吐き出された!
凄まじい熱気に思わず顔を背け腕で顔を庇う一同。
さらに奴は手に持った武器を振り回す。
その風圧だけで吹き飛ばされそうになる雷音とオーム。
だが、なんとか踏みとどまった。
「こいつ!」
「なんてパワーだ」
二人はとっさに距離をとる。
神羅達もそれぞれ散開して攻撃を避ける。
雷音は敵の死角に入り込み拳を繰り出す。
だが、その攻撃を大楯で難なく防ぎ逆に反撃に出るアシュラ。
「ちぃっ」
舌打ちしながら空中で一回転し回避する雷音
今度は自分が攻撃を仕掛けようとするが敵の動きの方が速い。
あっという間に距離を開けられ狙撃銃が放たれる。
「くっ」
銃弾を紙一重で躱すも完全に避けきれず数発被弾してしまう。
そこへ追い打ちをかけるように大剣による斬撃が来る。
それを拳で受ける雷音
ガキィインッ!! 拳と剣が激しくぶつかり合い火花が飛び散る。
拳には赤い籠手が装着されておりそれで受け止めたのだ。
「ぐぅうっ!!」
それでも勢いに押されて後方に押し戻されてしまう。
そこに畳み掛けるように追撃が入る。
咄嗟に横に飛び退き避けるもすぐに体勢を立て直す暇もなく次の攻撃がやってくる。
だが雷音はすかさずその懐に潜り込むと強烈なボディブローを叩き込んだ。
一瞬動きが止まるアシュラ。
その隙を突いて今度は膝蹴りを入れる。
目にも止まらぬ速さの連打を受け続けるアシュラ。
しかし倒れないどころか全く怯む様子もない。
それどころか殴られながらもカウンターを仕掛けてきた!
雷音はそれをまともに受けてしまい吹き飛ぶ!
「ぐはぁっ!?」
ゴロゴロと転がりながら地面を滑っていく雷音。
何とか立ち上がるもののダメージが大きいらしく動きが鈍い。
そんな彼に容赦なく襲いかかるアシュラ。
そしてトドメとばかりに大剣を振り上げた時だった。
わ突然横から飛んできた何かが直撃する! それは槍だった。
それが奴の横腹に突き刺さっていたのである。
「なっ!?」
突然のことに驚く雷音達。見るとそこにはオームがいた。
彼はグングニールレプリカの投擲で援護してくれたようだ。
「いくでオーム!」
エドナの言葉に反応する雷音達。
見れば既にオームは必殺技を放つ寸前であった。
雷音達はオームが放つ必殺魔法の威力を知っているため警戒して距離を取る。
呪文が完成したオームが叫んだ。
「皆離れろぉおおーーっ!!」
その声に反応し慌ててその場から飛び退く雷音達。
次の瞬間、オームが放った魔法が発動したのだった。
『黒雷よ!!』
その言葉と共に放たれた巨大な雷が放たれる。
アシュラは青の大楯で雷を防ごうとする。
だが横腹に刺さった槍が避雷針となり雷はアシュラを身体の内側から焼いた。
「うぎゃああああっ!!!」
全身を焼かれて苦しむアシュラを尻目に、オームは更に呪文を唱える。
「雷音!魔剣クトゥグァの準備はいいか!?」
そう叫ぶとクトゥグァを構える雷音。
すると彼の持つ魔剣に膨大な魔力が集まっていった。
そんな二人を見て慌てたように声を上げるナイア。
「まずい!あの合体技はダメだ!!」
そう言うと急いで魔法を発動させるナイア。
『触魔封陣!』
途端に地面から触手の群れが現れ、二人の身体を包み込む!これで二人を無力化できたかと思われたのだが……!? ナイアはすぐに自分の考えが甘かったことを知ることとなる。
なんと、二人は全身傷だらけになりながらも拘束している触手を蹴散らし立ち上がっていたのだ。
しかも彼らの身体からは凄まじいオーラが立ち上っていた。
ナイアはその姿を見て驚愕する。
(まさかこいつら、あれ程の攻撃を受けてまだ意識があるのか!?)
確かにナイアの魔法による拘束は完璧ではなかったかもしれない。
だがそれでも並の人間ならとっくに死んでいる威力だったのだ。
それなのに彼らは立ち上がり、武器を構えている。
(なんて奴らだ……!)
その姿を見たナイアは思った。
もうこれ以上手加減している余裕はない、と。
そこで彼女は決断を下すことにしたのだ。
「……仕方ない、アレを使うしかないようだな」
そう言った彼女の目は真剣そのものだったのである。
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