第43話 乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-7
ともあれ雷音達の残存兵力は雷音、ミリル、狗鬼漢児、狗鬼絵里洲、獅鳳、雷華、オーム、エドナ、鵺、神羅の十人
対して敵はナイトホテップ、ナイア、合体アシュラの三人となった。
つまりは唯一の神域の戦力羅刹が抜けた事で圧倒的に不利になったと言う事である。
闘技場が羅刹の大暴れでボロボロになったため整備に30分のインターバルをとることになった。
その間に雷音達は作戦会議を練る事にした。
「さてと、これからどうする?」と雷音が切り出す。
「当然、勝つしかないのだ」とミリルが言う。
「まあそうなんだけどね……」と苦笑しつつ言う雷華。
「正直言って勝てる気がしないね」と獅鳳は言う。
「確かに」と鵺も頷く。
「なら逃げるかい?僕はそれでもいいぜ」とオームも言った。
「それはできないでしょ」と神羅が言った。
「どうしてだ?」と雷音が尋ねる。
「雷音…わたしもラキシスさんのことちゃんと知ってるよ…」
神羅の口からその名を聞いて雷音が驚く。
「だってあの合体した邪神オード・ジ・アシュラ…あの中にはラキシスさんの部下の魂が囚われている…一人はエリリンが解放してくれたけどまだ5人の魂はナイアに囚われたまま……だから助けたい…」と言うと俯く神羅。
すると狗鬼漢児が立ち上がり宣言する。
「ならば倒すしかねー!見せてやろうや!一度、戦場にでたからにゃ、負けねぇ、引かねぇ、悔やまねぇ、前しか向かねぇ、振り向かねぇ、ねぇねぇづくしのクソ意地根性みせてやろうや!たとえ勝ち目が無くとも俺ら全員の力を結集すれば必ず勝機は見える!無理をとおせ!道理を蹴っ飛ばせ!それがオレたちのやり方だ!」
漢児の宣言にエドナが手を叩く。
「あはは!流石漢児や!ようゆうた!それでこそ漢や!!」
絵里洲が作戦案を思いつく。
「ねぇ、まずアシュラに囚われた五人の魂を解放しましょ?私の鎮魂の魔法でなんとかなると思うの」
そして白水晶が提案する。
「賛成…まずは五人を解放することを優先…私にいい案がある。棄権した私は戦闘には参加出来ない…でもアドバイスは許される…みな試合前に一緒に歌った歌の事は覚えてるだろうか?」
「覚えてるのだ。あれは元来乂族に伝わる戦士の鎮魂歌なのだ」
「そうか!あの歌で皆の魂を解放するんだな?そうすればあいつらもうかばれるもんな!」
雷音の言葉に頷く白水晶。
「そう……今から歌うからよく聴いてて……戦いが始まったらその歌をすぐに唱えてほしい……この歌を聴いた者はたちまち戦意を失い戦いを放棄してしまう……これはそういう魔法の歌……これでアシュラは弱体化するはず……」
そう言うと彼女は静かに歌い出した。
♪~我ら生まれた日違えども死す時は同じ日同じ時同じ場所で死なん……共に生きて死ぬ時は同じ墓に入り同じ日に死なんと誓い合おうぞ……同じ夢見同じ道を歩まんと誓わん……
神羅は思いだす。
父が死に部族の裏切りに会い自分達一家が過酷なスラル荒野に取り残されたとき、それでも自分達を見捨てずついて来てくれた乂族の民が少数なからずいた。
彼らは一族総出で、食べ物もろくに無い中、必死にかき集めてくれた。
神羅は彼らと共に過ごした日々を忘れはしない。
彼らの恩義に報いる為にもこの戦い負けるわけにはいかない。
今邪神ナイアルラトホテップに操られてるアシュラはそんな恩義ある民の一員なのだ!
神羅は改めて決意を固めるのだった。
「よし!じゃあ行くぜみんな!絶対に勝つんだ!」
「おー!」×10人+α
神羅達は再び、邪神ナイアに挑むべく、闘技場へと足を踏み入れた。
僅か30分の間に闘技場は見事に復活を果たしていた。
スパルタクスが氷の封獣を操りボロボロになった闘技場を修復したのだ。
彼の氷を操る力は相当なもので、あっという間にコロシアムを修繕してしまった。
観客達が座り始めると、会場は一気に熱気を帯びてきた。
そんな中、ついに最終決戦が始まるのである。
『さぁいよいよ7将軍親善試合も大詰めです!7将軍桜色の魔法少女プリティ・ユキル・ドアーダチームVSドアダ7将軍筆頭蛇王ナイトホテップチーム!果たして、勝利の栄光はどちらに輝くのか!?』
実況者が声を張り上げると
「よし行くぞー!」
そう言ってユキルはチームメイトを伴って闘技場へ続く門をくぐり抜けていった。
するとその後ろをぞろぞろと他の選手たちがついて行ったのだが、その中には白水晶の姿もあった。
ルールでは直接戦闘に参加さえしなければベンチで声援や作戦指示をすることを許されているからだ。
ナイトホテップ側も退場したピンク、オレンジ、ライトブルーのサキュバス達がベンチ席に控えている。
「さて、それではこれより試合を開始します」
そんなアナウンスと共についに試合の火蓋が切って落とされたのだった。
「まずは小手調べと行こうか」そう言って最初に動いたのはナイアだった。
「闇よ」ナイアの言葉に応じて漆黒の球体がいくつも出現するとそれをそのまま投げつけてきたのである。
「散開!」ナイアの言葉に反応したのは狗鬼漢児だけだった。
他の面々は突然のことに慌てて逃げ惑うしかなかったのだ。
しかし、その中で一人全く動じていない者がいた。
そう、それはもちろん狗鬼漢児である。
「えーと、羅漢がやってた技はこれをこう……」
そう言うと狗鬼は両手をだらりと下げ全身を脱力させる。
そのまま闇の玉に命中したかと思うと闇の玉は消滅させてしまったではないか!
とは言え完全には無効化できず服は弾け肌はただれてる。
それを見たナイアは忌々しそうに舌打ちをした。
「ぬう、静水合気掤勁!羅漢には遠く及ばないが貴様も使えたのか!?」
「いやいや、羅漢のあの技があまりに見事だったから俺も負けてられるかと真似しただけさ」
「一目見ただけであそこまで模倣して見せたのか!!」
しかしすぐに次の手を繰り出してきた。
今度は先程よりも大きな黒い渦を作り出したのだ!
そしてその中から無数の触手が現れ一斉に襲い掛かってきたのである!
「…やっぱ羅漢の技は俺には難易度高いな……ならこの技は……」
漢児は力強く震脚を踏み込み技を繰り出す。
『奥義爆極発勁!!』
その声とともに放たれた一撃は襲い来る触手を次々と吹き飛ばしていく。
それを見ていたナイアは思わず驚愕の声を漏らしていた。
「ば、バカな!!なぜその技を!?」
「ああ、羅刹ちゃんが使った技を参考にさせてもらったんだが?やはりまだまだ威力が足りん…拳の真髄は奥が深い…もっともっと功夫を練らねーとな」
漢児の活躍に雷音は目をキラキラさせ感動していた。
「うおお!流石正義のHEROアーレスタロス!!ヤベェ!この戦い勝てるかもしれない!!」
しかし、そんな期待を打ち砕くようにナイアは新たな一手を打ってきた。
狗鬼漢児が神域の門をくぐりつつあると確信したナイアは遊ぶ事をやめた。
この男は銀仮面やスパルタクスの域に辿りつこうとしている!
「サキュバス達よ!私を讃える歌を歌え!アシュラを最終形態に進化させる!!」
そして懐から紫猿の魔神像を取り出す。
「封獣パズスフィンクス起動!……変神!」
ナイアの詠唱に合わせサキュバス達がナイアを讃える詠唱を唱える。
「暗黒のファラオ万歳 ニャルラトテップ万歳 くとぅるふ・ふたぐん にゃるらとてっぷ・つがー しゃめっしゅ しゃめっしゅ
にゃるらとてっぷ・つがー くとぅるふ・ふたぐん」
そしてその言葉が紡ぎ終わると同時にナイアの仮初の貌がかわる。
貌の無い無貌だ。
ただ嗤う口と三眼だけが不気味に輝いている。
そしてオード・ジ・アシュラも変化する。
10メートルあった巨体が2メートル弱程になる。
6本の腕は2本になり左右にニンジャ刀を構えてる。
六本足の戦車と融合していた下半身は足が生え、その足で戦車を降りて地を踏みしめる。
空中に肩に顔の生えた巨大な腕が4本浮かんでいた。
それぞれに野太刀、槌、大楯、狙撃銃を構えている。
本体の色は赤と青が中途半端に混ざった悍ましい紫色。
アシュラはオームと同じ悪の特撮ヒーローの様な姿となった。
巨体こそ縮小したが先程の倍近い威圧感、今までとは比べ物にならないほど膨大な魔力を放出し続けているようだ。
どうやら本当にパワーアップを果たしたらしい。
「小僧共、私が紫の魔女でもある事を忘れてはいまいな?……勇魔共鳴・邪道モード!」
なんとナイアが半透明の姿になりアシュラの背後に浮かぶ。
彼女の無貌に燃える三眼が灯る!
「サキュバス共!唱え!殺戮の演奏を奏でよ!私は踊るぞ!処刑の舞を!ハハハハハハ!!!」
サキュバス達が人皮や人骨で出来た悍ましい装飾の楽器を取り出し演奏を始める。
ピンクがギター、オレンジがベース、ライトブルーがドラム
そしてナイアはアシュラの背後で殺戮歌詞のデスメタルを唄う。
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