第38話 乂阿戦記1 終章 これは始まりの物語の終わりの闘い-2

そして試合開始銅鑼が鳴る。


俺達の大将は鵺で敵側の大将はナイトホテップだ。


鵺とナイトホテップは兵隊の攻撃を喰らわない様フィールドの奥の方に待機する。


試合開始の合図とともに、まず動いたのは黒い忍びだった。


忍びは分身の術で三体に分裂する。


忍びの武器は忍者刀で二刀流の使い手でもある。


分身した忍びは三体同時に斬りかかって来た!


しかもこの剣技、恐ろしく速い!


三人は一太刀で神羅を仕留めようとするが、神羅は咄嗟に魔法障壁でガードする。


この速さ、この正確さ!これは確かに超兵器と言える!


するとそこにピンクのサキュバスが現れ、神羅を蹴り飛ばす! この蹴りもまた強烈!まるで大砲のような威力がある! この攻撃により神羅は大きく後退する! 神羅は体制を立て直すためバックステップするが追撃してくる!


しかしそれを邪魔するようにナイアが立ちふさがる!


ナイアの攻撃魔法!


紫の炎が襲いかかる!


神羅はそれを回避しようとするが紫の炎はまるで生きているかのように動き回り神羅を追いかける!


紫の炎から逃れられないと判断したのか神羅は紫の炎を魔力を込めた拳で殴り飛ばした!


紫の炎は一瞬のうちに霧散する。


「ちっ、流石だな神羅……まさかあれを素手で防ぐとは……まあいい、どうせ貴様では私には勝てんからな……フフフッ……フハハハハッ!!」


ナイアは不気味な笑いを浮かべる。


この女、本当に不気味だぜ……なんかこう……ねっとりしてて絡みつくような嫌な感じなんだよ……


だがナイアの言う通りこのままでは勝てそうにない……


ならここは一つ……奥の手を使うか……


俺はハンズフリーのトランシーバーを使い戦いながら皆に作戦を伝える。


「皆んな聞いてくれ…俺達の奥の手"勇魔共鳴"を使おうと思う」


「おいおい正気かよ!?アレを使えばしばらく動けなくなるんだぜ!?」


俺の言葉にオームは驚き止めに入る。


だが俺の意思は変わらない。


それを見たオームは小さくため息をついた。


「……分かったよ、そこまで言うなら好きにしろ。ただ連中メタモルフォーゼキャンセラーを使って来るかも知れないぜ?」


「無問題……私の新装備にメタモルフォーゼキャンセラーを無効にする装備を組みこんだ」


ナイスだ白水晶!


こうして俺達は奥の手で勝負に出る事にしたのだった。


「フフフッ、何を企んでいるか知らんが無駄な事だ!」


ナイアは再び紫色の炎を放つ! 俺とオームと獅鳳はその攻撃を躱すが、ピンクのサキュバスが俺の動きを封じようと飛びかかってきた!


応戦しようと構えた瞬間、ピンクのサキュバスは俺に抱きつきキスをする! ピンクの長い舌が俺の舌と絡まり合う!


(ちょっ!こんなときにキスなんて!)


突然の事に驚くが、ピンクはさらに強く抱きしめてくる!


(ん!んんっ!んんんんんーっ!!)


口の中を舐め回され舌を吸われ唾液を流し込まれる!! 体が熱い!頭がボーッとしてきた!!何だこれ!?ヤバい!!力が入らない!!このままじゃ!! そうか!淫魔の魅了の洗脳か!!意識が朦朧とする中、ピンク色のサキュバスは俺の耳元で囁くように語りかけてきた。


「フフフッ、このまま私とイケナイ事しない?大丈夫優しくしてあげるから……」


その瞬間ブチッと何かがキレる音がした!!


「…お前…殺すのだ…絶対殺すのだ!!…」


それはミリルの理性が切れる音だった。


そして暴走突撃したミリルはピンクのサキュバスの首を締め上げる!!


だがその直後、ミリルの動きがピタリと止まった。


見るとミリルの身体にオレンジの蛇のような物が巻きついていた。


「フフフッ、油断しましたわね。コレは団体戦なの。あなたの相手は私よ?」


「くっ……後ろからとはこの!卑怯者なのだ……!」


その蛇の様な物はオレンジのサキュバスから伸びた尻尾だった。


だが次の瞬間、オレンジの蛇のようなものは一瞬で消えた。


いや正確には切断された!


魔剣クトゥグァを構えた雷華によって!


「ミーちゃんに手を出すな!」


「ぎあああああ!」


尻尾を切られたオレンジの淫魔が悲鳴を上げのたうち回る。


ピンクの淫魔が俺の拘束を離しオレンジの淫魔に回復魔法をかける。


「おい雷音!さっさと勇魔共鳴を済ませるぞ!」


「いや、俺はピンクに流し込まれた毒ですぐに動けない!だから獅鳳!お前が雷華と勇魔共鳴しろ!お前はもう使えるはずだ!!」


「何っ!?」


「いいから早くしろ!時間がないぞ!」


「……わかった!行くぞ雷華ちゃん!」


「え、あ、うん!」


獅鳳が雷華に手を差し出しその手を掴むと、獅鳳のポケットにしまってあった母の形見である緑の宝石が眩く輝いた。


宝石から声が聞こえた。


宝石の中から雷を纏う翠の杖が姿を現し声を発した。


『封獣起動開始!…我雷杖ドゥラグラグナなり…獅鳳!リュエルの後継たるお主の呼びかけをずっと待っていたぞ!』


すると二人の身体が翠の雷を放ち輝き出す!


やがて光が収まるとそこには翠の鎧を纏った電光の騎士の姿があった。


そしてその後ろには炎の女神の如し姿の雷華が半透明の姿で翠の騎士を守護していた!


それを見たピンクサキュバスの表情が変わる。


「まさかあなた本当に翠の勇者だったの!?赤と翠、異なる属性同士で勇魔共鳴が出来るだなんて!そんな馬鹿な事が……!?」


「ええい!こけ脅しに決まってるわ!」


そういうとオレンジの淫魔は再び再生を終えた尻尾を伸ばしてきた!


だが獅鳳は尻尾を切る事無く、逆に尻尾を掴みそのまま引っ張る!


「うぉりゃあああーーっ!!!」


そして思い切り投げ飛ばした!!


床に叩きつけられたオレンジのサキュバスはそのまま気を失ったようだ。


戦闘不能とみなされ黒服戦闘員に担架で運ばれていく。


雷音は片膝をついたままの状態で叫んだ。


「いいぞーッ!!獅鳳!やっちまえーっ!!」


だがここで思わぬ事態が起きた。


俺の動けない隙を見逃すほど優しい相手ではなかった。


「甘いんだよガキがぁーーーっっ!!!」


水色淫魔の剣が容赦なく振り下ろされる。


しかしそれが俺に当たる直前、彼女の身体を巨大な狼型の水鉄炮が包み込んだ!


同時に俺の身体は自由になった。


絵里洲の攻撃魔法と回復魔法の援護である。


雷音を襲おうとして攻撃をくらった水色淫魔は大きく吹き飛ばされた。


それでも立ち上がろうとするがダメージが大きいのかなかなか起き上がれない。


その間に雷音達は体勢を立て直す事が出来た。


雷音と神羅が再び並び立つ。


水色淫魔が起き上がろうとした瞬間、今度は天井から何かが降ってきた!


それは神羅が放ったピンクの魔法の鎖だ。


「マジックバインド!」


水色淫魔は神羅の魔法の鎖に絡め取られ身動きできなくなった。


「ほい!コレでアンタも退場や!」


エドナが身動きが取れなくなった水色淫魔からバッチを奪いとり、コレで敵側は2人目の退場となる。


残る敵は10人だ。


「よっしゃ絵里洲!俺達も勇魔共鳴を使うぞ!何、兄妹だからきっと上手くいく!雷音とオームは使うなよ!体力を温存しとけ!俺と獅鳳がへばったら鵺ちゃんに回復してもらうからそん時交代だ!それまでは我慢だぞ!」


漢児の掛け声に皆頷く。


雷音は漢児の方をチラッと見た。


アニキ分はニヤリと笑ってみせた。


いける……そう確信して俺も頷いた。


「行くぜ!……勇魔共鳴!!!変!神!アーレスタロス!!!」


『おおおおおおおおおおおおっっっっ!!!』


皆が雄叫びを上げる中、狗鬼兄妹の身体は光に包まれたのだった……。


光が収まったので目を開けるとそこには青い鎧を着た騎士が立っていた。


騎士と言うよりは特撮ヒーロー


ヒーローの後ろには水の女神の如し姿で半透明の身体で浮かぶ絵里洲がいる。


敵の中の黄色いカンフー着を着た拳法家と黒いニンジャがこちらに突っ込んでくる。


勇魔共鳴を果たした青の勇者アーレスタロスと翠の勇者獅鳳がその2人を迎え打つ!


2人は目にも止まらぬ速さで拳を繰り出し、敵の攻撃を避け、反撃する。


その動きはまるで踊っているかのように軽やかだ。


しばらく攻防が続く中、敵の忍者が印を結び何かを唱えると彼の分身が現れた。


その数4体。


4体の分身はそれぞれ忍術を使って攻撃をしてくる。


火遁、雷遁、水遁、手裏剣!


だが、それも全て避けられる。


そして全ての分身を倒し、本体だけになる。


するとニンジャは右の小太刀に火遁の力を左の小太刀に雷遁の力を宿し、水遁の術で自分を前に押し出し獅鳳に迫った!


「次の一撃で雌雄を決する気か!?」


「獅鳳怯むなよ!私が絶対にお前を勝たせてやる!」


雷華が魔剣クトゥグァに力の解放を呼びかけると獅鳳の左手に炎を纏う魔剣クトゥグァが握られた。


そして獅鳳の右手の雷杖ドゥラグラグナが変形し雷を帯びた剣に変形する。


獅鳳の背後の雷華が炎の翼を生やし羽ばたかせると獅鳳は宙に浮きニンジャに相向っていった。


真正面からそれぞれ勇者とニンジャが炎と雷の二刀流で激突する。


激突直前ニンジャは姑息にも口から含み針を吹く。


だが雷華の炎が含み針を一瞬で焼き尽くす!


両者が必殺の一撃を放ち交差する。


双方しばらく停止した後、ニンジャがドサッと前のめりに地に伏し決着がついた。


ニンジャ対勇者


勝ったのは翠の勇者獅鳳だった。


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