第27話 乂阿戦記1 第六章- 灰燼の覇者阿烈とケルビムべロスの虎-1
第六章- 灰燼の覇者阿烈とケルビムべロスの虎
ドアダ基地にて神羅達は別々の部屋に閉じ込められいく雷音達を物陰から見つめていた。
「嘘でしょ?みんな捕まっちゃったの!?」
「ユキル…いえ神羅、わかってると思うけど戦って雷音達を取り戻そうと考えちゃ駄目……今は機会を待つのよ……」
鵺が不安そうに言う。
白水晶は何も言わずただ黙って見ている。
「確かに勝てないと思う。でもこのままでいるわけにもいかないし……」
「だからってどうするの?雷音達を倒してしまう相手なんて私たちが束になったってかなわないでしょう!」
「でもじっとしていても始まらない!それに雷音達が目を覚ませば何とかなるはず!」
そうこうしてるとドアが開き皆の隠れている部屋の前に二人の怪人が入って来る。
「え!?あれ、あの二人って確か…」
「知ってるのか神羅?」
ベッドの後ろに隠れながらミリルがヒソヒソと尋ねる。
「知ってる。ドアダ7将軍スパルタクス将軍と同じく7将軍イブさんだよ!」
「幹部がなんでこんなところにいるのだ?」
「まさか私達を助けに来てくれたとか……?」
「そんなわけないじゃない、二人とも明らかに私達を狙ってるわ」
呑気な神羅を鵺がたしなめる。
「どうしよう……」
その時だった、突然けたたましいサイレンが鳴り響き、戦闘員たちが集まってくる。
「黄衣の使徒二人が逃げやがったぞ!!追えっ!!!」
「逃がすなぁ!!」
オームとエドナはいち早く目を覚まし隙を見て逃げだしたようだ。
戦闘員たちは二人を追いかけていく。神羅達はまずは二人が逃げ出した事にホッと胸を撫で下ろすのだった。
「よかったわ。あの二人はうまく逃げたみたいね」
すぐ近くから男が声をかけてきた。
「ユキルお嬢様、申し上げにくいのですが、私とイブはお嬢様がお隠れになっていることに気づいております。」
スパルタクス将軍は苦笑しつつベッドの裏に隠れているユキルに話しかけた。
「……にゃ、にゃーお」
神羅は往生際が悪く猫の物真似をする。
「無駄です。このスパルタクス盲目の身なれど心の目は見えておりまする」
そういうとスパルタクスは隠れていた神羅を見つけ出し抱き上げる。
「きゃうっ!?」
そのまま猫のように持ち上げられてしまいジタバタともがく神羅だったが、抵抗むなしくスパルタクスの腕から逃れられないでいた。
そしてベッドの上におろされる。
「さぁ、おとなしく私の言うことをお聞きください」
スパルタクスの言葉に観念したかのようにうなだれる神羅だったが……
「時間がないので手短に申し上げます。ドアダ首領ガープ様にお嬢様のお仲間を傷つける意図はございません。そこはご安心ください。」
スパルタクスの意外な一言に目をぱちくりとなる。
「お嬢様に首領閣下のご意向をお伝えいたします。まず狗鬼漢児氏と狗鬼絵里洲さん、この2人はガープ様の孫であらせられるヨドゥク様のご子息です。つまりはガープ様の曾孫にあたるのです。なのでヨドゥグ様がこの基地にいらっしゃり次第、地球の母君ユノ様のもとにお返しいたします」
神羅は思わず『えーー!』と大声を上げそうになるがイブがとっさに口を塞いだ!
「ユキル様大きな声を出さないで下サイ。他の戦闘員にばれマス。ここで話す話は内密の話デス」
神羅がブンブンと首を縦に振る。
「黄衣の使徒の王オーム殿とエドナ殿、乂家の雷音と雷華殿は我らと敵対する組織の縁者です。命は奪いませんが政治取引の交渉材料として、当面の間この基地で軟禁されます。」
「わ、私も乂家の人間よ!?どうして私の扱いは違うのよ!」
今度はイブの手を払い除けて抗議する。
するとスパルタクスは困ったような顔をすると、
「申し訳ございません、それは私には分かりかねます。ただ私は主であるガープ様の命令に従っているのみでございます。ただ、もしお嬢様さえよろしければ、このままこの部屋で隠れていただいてもかまいません。ただし、その場合はここにいるイブの指示に従い行動していただかなければなりません。これは命令ではなくお願いですが……。」
そう言って深々と頭を下げると部屋を去っていった。
「どうしよう、雷音、雷華、オーム、エドナがピンチのままだわ!私が何とかしなければ……」
「ユキル様、落ち着いてくだサイ。1度首領とお話をしてみテハ…」
「そうだね。一度お祖父ちゃんと話をしてみる。」
「ではしばらくこの部屋でお待ち下さい。今カープ様は獅鳳様と会われていらっしゃいマス」
そう言うと、神羅達を部屋に残し出て行ったのだった。
それからしばらくしてドアがノックされ、スパルタクスが入ってきた。
「お待たせしました。どうぞこちらへ」
そういうと神羅だけを部屋の外に連れ出したのだ。
連れ出された先は先ほどとは少し違い、壁や床が豪華な大理石になっている部屋だった。
(あれ?ここってさっきの部屋と違うわよね?)
そんな疑問を抱きつつも案内された部屋に入るとそこには黒紫装束に身を包んだ老人がいた。
ドアダの首領ガープだ。
「ユ、ユキルや……」
ガープは声をかけようとしているが、どこかよそよそしい。
だがユキルは花のような笑顔で祖父にこう答える。
「おじいちゃん!」
そう叫ぶと孫娘が駆け寄ってきて抱きついた。
そして孫を抱きしめながら優しく頭をなでてやると……
「ユキルや、今まですまなかったのう、ワシがもう少ししっかりしていればお前に辛い思いをさせずに済んだのじゃがな……」
ガープは涙を流しながら謝っていた。
その姿を見てユキルはとても驚いた顔をしていたが、やがて笑顔になるとこう言った。
「そんなことないわ、私こそごめんなさい、いつも心配ばかりかけてしまって……」
そうして二人は抱き合いながらしばらくの間泣いていたのだった。
しばらくするとようやく落ち着きを取り戻したのか、ガープの方から話を切り出してきた。
「さて、まずはお前にも紹介しておこうかのう……。もう顔見知りだろうが紹介する。ワシのもう一人の孫、龍獅鳳じゃ。我が息子ナイトホテップことサタンの息子じゃ……」
獅鳳を孫と紹介され、神羅は今度こそ『えーー!』と大声を上げた。
「あはは、驚いたよね?俺もいきなり自分の家族の事がわかってびっくりしたよ。なんかここ最近ビックリするような事がひっきりなしに続いてるよ。」
その後神羅達は三人一緒に食事を摂った後、しばらく雑談していた。
そしてガープは切り出す。
「少し落ち着いたところでワシらの今の状況を説明しよう。まず、今のこの世界の状況について説明するぞい」
そう言うとガープは神羅達に現在のスラルが置かれている状況を説明してくれた。
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