断罪イベントが、スタートします!
寿(ひさ)
断罪イベントが、スタートします!
私は、悪役令嬢イザベラ。
なんか気づいたら転生して悪役令嬢になっていた。
そして、悪役令嬢として生まれたからには、決して抗えない運命があった。
私の婚約者__だった男、キースは冷ややかな目つきで私を見る。そして、大勢の貴族達の前で宣言した。
「僕は君との婚約を破棄する」
「な、なんですって......」
大勢の貴族達が見守る中、断罪イベントがスタートしようとしていた。
「もう、僕は寄り添う相手を決めたんだ! 来なさい! 僕の愛しいマリアンヌッ」
「――――ワン!」
広間の扉が開かれ、茶色のふわふわした謎の物体がトコトコと歩いて来る。
「な、......なっ......」
「見ろ! このもふもふを! そして愛らしいこの笑顔! これがトイプードルだ!」
目の前のマリアンヌ(トイプー)は、特に何も面白い事が起きている訳でもないのに、幸せそうな笑顔を私に向ける。
「......!」
「もう僕には恋人なんかいらない! 生涯このもふもふと生を共にすると誓ったのだ!」
「近年結婚離れする若者みたいな事言ってんじゃないわよ! それに何? その短い足と長い胴体。そのサイズじゃ、服選びの時、S(スモール)サイズじゃなくて、SD(スモールダックスフンド)サイズにしなくちゃならないわね! トイプーのくせに!」
「貴様! 今マリアンヌの事を豚足と言ったな!」
「そこまで言ってないわよ!」
「もう良い! 僕の前でマリアンヌとダックスフンドをバカにした事を後悔させてやる! 来い! 僕のエリザベス!」
「わっふぅ〜ん」
後から続いて現れたのは、よちよちと歩くダックスフンドだった。
「ダックスフンド! サイズが! かわいいん! だろうが! いいか、この短い手足を一生懸命バタつかせて歩くのがたまらなく可愛いのだ!」
マリアンヌ(トイプー)とエリザベス(ダックスフンド)は各々のおみ足を一生懸命に動かし私の所まで来ると、
「え......え......!」
今度は何故か私の体をよじ登りだした。当然そのやわな足では到底上ることなどできない。しかし、彼女達はそれでも必死になって、前足を動かしている。
そして、私は気づいた。気づいてしまった。
彼女達のタピオカお目目は、こう囁いている。
__『だこちて』
「くぅっ......」
気づけば、大勢の貴族達が見ている前で膝を地につけてしまっていた。マリアンヌとエリザベスは嬉しそうに私の膝の上に乗ってくる。
「どうだ、参ったか!」
私は気づけば、彼女達をもふもふ撫でまわし、お腹の匂いを吸って、写真をインスタにアップロードしていた。
「くっこうなったら仕方がありませんわね! 私も本当の事をお教えしましょう! もう既に私にもお相手がいる、という事をね! さあ、来なさい! ジョセフ!」
ぎいいっ......と広間の扉が開き、それは現れる。
「わぉん!」
そこにいたのは、小さな白いもふもふ。ポメラニアンだった。
「この子はただのポメラニアンじゃないわ! 見なさい! 真っ白でふわふわな毛並み! あなたのその猛獣なんかと比べものにならないわ! (犬達を見て)......あ、猛獣っていうのは、キースを怒らせたかっただけであなた達に向けて言った訳じゃないのよ)」
「くうっ確かに可愛い!」
キースは気づけば、ジョセフ(ポメ)をもふもふ撫でまわし、お腹の匂いを吸って、写真をインスタにアップロードしていた。
「......こうなったら仕方がない......」
「......ええ、そうね......」
「――――こうなったら、私達結婚して、三匹とも愛でましょう!」
「ああ! 新婚生活のスタートだ!」
======================
良かったら、他の「短編賞創作フェス」作品も書いたので見てください〜
断罪イベントが、スタートします! 寿(ひさ) @hisa_hisa
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます