第6話 ストップモーション
年末年始は家で過ごすから、と言うと正臣は、「珍しいな」と言った。「まぁでも愛娘のいない正月は親も寂しいんじゃない?」、そうだといいけどね、というようなことを言って、実家に帰省した。
思った以上に父母は喜んでくれた。髪を撫で、好物を用意してくれていた。好物なんてとっくの昔に忘れられたかと思っていた。小学生の頃、食卓に上がるとうれしかった海老フライがたくさん並んでいた。
今では好物も変わったのにと思うと少し滑稽で、少し懐かしかった。
すべてではなかったけど、帰ってくるだけで喜ばれるなら親孝行もいいものかもしれないと、お風呂上がりに髪を拭いていたところだった。
翔ちゃんがドアをノックした。
わたしは、親孝行の機会をくれた翔ちゃんに幾ばくか心を開いていた。やはり、兄は皆が思う通りできる人間なのだと思った。
「今日の晩ご飯は食べててすごく気持ちのいいものだったよ。みかげのお陰だ」
「そんなことないよ」
わたしは照れて火照った顔を俯いて、頭から被ったタオルで隠した。
「いや、そうじゃないよ。やっぱりみかげがいないと」
ストップモーション。
ひとつひとつの動作がストロボを炊かれることでゆっくり、コマ割りのように見える。まるでそれだった。
「いやー!」と今回は声が出たはずなのに、大きな手で口を塞がれてくぐもった意味を持たない声になる。
重い、重い石に潰されそうになった心持ちで、わたしにはどうすることもできなかった。わたしにはどうすることも――。
そう、できたのは正臣に告白することだけだった。もうこの世に未練はなかった。わたしはスマホを手に取った。
誰が悪い?
翔ちゃんを虐待した父親?
それを看過した叔母?
その子を引き取って溺愛した両親?
それとも、それとも隙だらけのわたし?
「計画は
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