君の魂を屠るコト
明鏡止水
第1話
この世のどこかで死ぬ事を考えている人がいる。
こんにちの夜、明日の朝日。薄暮の橙。
淡い桃色と紫と青の境。
それを眺めることをしてから。
あるいはしないで。
心の中の「ひとつ」に迫る。
世の中辛いことは多い。
何もわからない中、声も手も出せずに、抵抗しても叫んでも泣いても非道なことが起こる。
そのほとんどを私は知らない。
なぜなら、恐ろしいから知らなければと思い、その類のニュースばかりを見ていたら、それだけで外を歩けなくなりそうだったから。
私は強者にはなれなかった。
私は傭兵でも自衛隊でもない。
峰不二子でもない。
もう、自分で道を敷かなければいけない。
妄想と幻覚で、今を、失うわけにはいかない。
私は昔、今を失ったように思う。
辛いこと。気持ちの悪いこと。打破できないこと。自分の力だけではどうにもならなかったらしいこと。
カウンセリングが無料で数ヶ月受けられた。
私の家は特殊だと言われた。
私が、もっともっと声をあげたからと言ってどうにかなることなんてなかった。
誰にだってそんな思い出や記憶の暗部の一つや二つあると思う。
でも、今日は、幸せなやつだった。
人と話せた。
うまく言葉を返せなかった。
辛かった。
でも、また明日、と言えた。
電車の中でランドセルに定期をぶら下げた小学生がいた。
無事に帰れよ、と思い。
見守るのは自分たちだ。不審者に間違われないように、そっと見守る。それが、将来思い描いた、大人、の自分。
でも、大人なのはその小学生達なんだよなあ。
でも、正義になりたい。
何度も目が合う男性がいた。青いスマホが綺麗だからついつい目がいってしまうのだ。ちょっと気まずかった。
みんなスマートフォンを触っているのに、誰がどの機種を使っているのかは分からないから、人生は楽しい。友達とのチェキをカバーに入れている人もいる。
蛍光灯を見た。車内の蛍光灯というのは、不思議な留め具に嵌っている。
茶色と緑を混ぜたような不思議な色のコートの女性が、一人駅に降りて行った。
ふと思う。
おしゃれな人を見るといつもそう。
どうして、友達は。
……もう、他人か。
他人は、私を切り捨てたのだろう。
メッセージのやり取りが、友達の存在が、こんなに大きかったのか。
依存してたわけではなかった。
友達が多い人間は、良い人間を選び取れる。
私は、選ばれたいのかな。
選ぶ選ばないじゃないない。
ただ、輪になりたい。
その輪に入りたい。
きっと、あの子も私を見下したんじゃないと信じたい。私のメッセージが悪かったんだ。
電車に乗れる自分はすごい。
乗り物恐怖症だった自分。
夜、電車のドアに反射する自分を見て思う。
もっとオシャレだったら彼女に見捨てられなかったのか。
私には魂がある。心が死んでも涙が出て、体が生きていれば、甦ることがある。だから、笑える日が来るかもと家族も期待する。
でも、魂の殺人は違う。これを書くのにも勇気がいる。私は知らない。みんなが守ってくれている。駅前の交番。スーパーマーケットの電灯。集う人々。幸せな家族分のお弁当の買い物。
この世の人間の誰もが卵子と精子との受精で生まれてくる。
私達は、僕達は、夜道を歩き合う。繁華街で取引をする。アプリやXやInstagramやポコチャでやり取りを行う。
私の心を屠るのは、つらい、つらい、つらさの曖昧な見出し。
何がこの世界を優しくできるだろう。
私はニュースにはなれない。
そして、どんなに憎くても、私はニュースになってはいけない。
どうかどうか、この世界が纏まりますように。
糸。運命の糸。綴られる世界平和と、地域の輪。
繋がる。
君の魂を屠るコト 明鏡止水 @miuraharuma30
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