スタート ~百合キスからはじまる異世界冒険旅~

滝川 海老郎

第1話 百合スタート 1100文字

「あいたた……」

「ミルク大丈夫?」

「うん、ロリエこそ大丈夫なの?」

「大丈夫、大丈夫」


 私はミルク。そしてこっちがロリエ。

 私たちは高校一年生。大親友。

 でもね、私はその、ロリエのことが気になっているというか、なんていうか。

 その、好きなのね、女の子として。

 でもロリエは全然気が付いてないみたいで、親友を続けてくれているというわけ。


「うんしょ」

「どっこいしょ」


 ふたりで手をつないで立ち上がる。

 さっきまで近所のコンビニから出たはずだったのに、今は大草原の真ん中にいる。


「ここどこよ、ロリエ?」

「わかんにゃい」


 ロリエがテヘペロする。

 うんうん。まったく見当がつかない。


「とりえず人がいそうな下流へ進もうか」

「うん」


 人間は河口近くに住んでいることが多い。

 いくなら上流よりは下流だ。

 そうしてしばらく歩いた。


「ゲゴゲゴ!!」

「な、なに?」

「グギギ」


 いきなり目の前に緑の小さな人型のモンスターが現れた。


「きゃっやだっ」

「ロリエ、大丈夫?」

「うん、でもこいつら」


 おそらくゴブリンだろう。数は三。

 私たちを襲って食べる気なんだ。


「怖いよぅ」

「わーん」


 ロリエと手をつないで、ぎゅっと縮まる。

 顔と顔が近くなっていた。


 あ、顔。すぐ目の前にロリエの顔がある。

 私は、そっとそのまま顔を近づけていき……。


 ちゅ。


「わっわあああ」

「うおおおお」


 キスをした瞬間。まばゆい光に包まれた私たち二人は力がみなぎってくるようだった。


「えいやああ」


 その勢いのまま、ゴブリンをパンチすると、なんと吹き飛んでいくではないか。

 そうして、二匹目、三匹目とパンチを食らわせると、慌てて全員逃げていった。


「ロリエ……」

「今の?」


 私とロリエは顔を見合わせる。


「キス、しちゃったね」

「うん、なんかすごいパワーが」


 テレテレと顔を赤らめたまま二人で見つめ合う。

 また顔が近づいていき、二回目のキス。


 ちゅっ。


 パッとまわりがまた明るく光り出して、不思議な光景だ。

 なんとなく温かくて、すごい力が湧きだしているのがわかる。


「キスのパワーなのかな。ミルク?」

「えっとね、これは百合パワーだと思う」

「百合、女の子同士の……そっか、そうだよね」

「私は女の子のロリエが好き」

「私も女の子のミルクが好き」


 二人で見つめ合う。ニッと笑ってみると笑い返してくれる。


「そっか、百合なんだ」

「うん、そうだよ。ロリエ」


 いままでずっと親友だとお互いが見ていた。

 でも違ったのだ。

 最初から、二人はお互いを好きで、女の子同士の関係を目指していたんだ。


「今日は私たちの百合としての『スタート』だね」

「うん。百合スタート」


 百合の力でこの世界を生きていこう。

 きっと私たちならなんとかできる。

 そう信じてる。

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