第3話お見合いしませんか

謎の結婚相談所に契約して、一週間が過ぎた。

一ノ瀬弧二郎から電話があった。

「里中様、あなたに会いたいというかたから連絡がありました。よろしければ先方のお写真と簡単なプロフィールをお預かりしていますので見にきませんか?」

留守電機能にそうメッセージがあったので、僕は仕事終わりに再び一ノ瀬結婚相談所を訪れた。


またあのぽっちゃり事務員の刑部狸菜子さんがお茶とお菓子を用意してくれた。

「先方のお名前は尺菜毛しゃくなげ八千代やちよさんという方です。お年は二十歳で尺菜毛館のお嬢様です」

一ノ瀬はそう言うと僕にいわゆるお見合い写真を見せた。

尺菜毛館とは和歌山県と奈良県の県境にある老舗温泉旅館だということだ。


僕はそのお見合い写真を見て、絶句した。

そこには藤色の着物をきた女性が写っている。その女性は絶世のと形容しても足らないぐらいの美人だった。眉の辺りで切りそれえられた前髪が印象的ないかにもお嬢様という雰囲気だ。それに着物の上からでもわかるほど胸が大きかった。椅子に座っているようだが、かなり背が高いと思われる。


「この人が僕と会いたいと……」

僕は一ノ瀬にきく。

「ええ、ええそうです。先方のたっての希望でお会いしたいと」

にこやかに一ノ瀬は答える。


この写真の美人が僕に会いたいという。

僕も会ってみたいと思った。だって普通に生きていたら、絶対に出会えない美人だ。騙されていたっていい、その尺菜毛八千代という女性と会ってみたい

「僕もこの人と会ってみたいです」

僕がそう言うと一ノ瀬はまた微笑んだ。

「かしこまりました。ではお日にちはおって連絡いたします」

一ノ瀬はそう言った。


さらに一週間後に僕は一ノ瀬の車で和歌山県と奈良県の県境にあるという尺菜毛館に向かうことになった。

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