◆第三章⑬ 再会

 推定時刻 18:30


 強い魔力を感じた方向を見ると、グライフ一行に、ビト、テオ、ランバートの3人。そしてアルルがテオに抱かれている。強い魔力はおそらくグライフのものだ。


「……お前は⁉ グライフ……‼」


 ハーディーは目を見張った。


「…………久しぶりだな……」


 グライフが応えた。


 各々が、〈2人が知り合いである事に疑問を抱いた〉が、それよりも再会を喜んだ。


「うわぁ~、ビト先生、テオ! アルル~‼ ど、どうしてここがわかったの?」


 レイリアはアルルを撫でて、ほっぺをむにむにした。


「そりゃあ、すっかり日が落ちてるとはいえ、あんな空中で戦闘が起きてたら目立つよ」


「レイリア、ブラダ。無事じゃったか! 安心したぞ……」


 ビトは少し涙目になり、再会を喜んだ。


「ランバート。置いてっちまって悪かったな」


 ハーディーはランバートを見つけてホッとした。


「いえ、良い経験させてもらいました! この方達に助けてもらったんです」


 ランバートはニコッと微笑み、ハーディーも安心して微笑み、グライフに礼を言う。


「ランバートの事を助けてくれて、ありがとう。……しかし、やはり空中戦は目立っちまうよな……。『蛇』の他の連中にも見られたか?」


「……いや、逃げ出した連中なら、異様に怯えて麓の洞穴に集まっていた。以前、一時待避所にしていた場所だ。数十秒程度の戦闘だったから、目撃者は俺達だけかも知れん。断定はできないがな……」


 グライフが答えた。グライフ一行のブレンが、目を輝かせた。


「あんた、あんな空中戦できるなんて、スゲーんだな……‼ しかも二刀流か? 俺も二刀流なんだ!」


 ブレンは腰に2本、幅の広い刀をぶら下げている。彼はセボを肩に乗せたままだ。


「ん……、あ、いや……」


 ハーディーは少し答え難そうにした。実際、ハーディーは『四刀流』だからだ。


「あぁ、こいつらは俺の手下だ」


 グライフが説明した。続いて、ブレンがグライフに問う。


「グライフさん、ガイウスの野郎はどうします?」


「そうだな……。洞窟アジトに連れて行って、治療してやろう。まだ、俺達の仲間だ。見捨てるわけにもいかんだろう。今のところはな……」


「それなんだが、グライフ……ちょっといいか」


 ハーディーがグライフを引き離し、洞窟アジトの惨状を説明した。


「な……何だと? 一体誰が……⁉ ま、まさかあのハーフのドワーフが……⁉」


「い、いや……あいつは大人しく牢屋に捕まっていた。俺が逃がしちまったがな……。実際に何が起きたのかは俺にもわからない。魔物じゃないか?」


 ハーディーはすっとぼけたが、事実、ハーディーもよくわかっていない。


「だから、逃げ出した連中はパニクってたのか……しかし、あのドワーフを逃がしただと……? 姉妹山は知ってるよな?」


「ん? 何だ急に。当たり前だろ。地元の人間だぞ。凹型で二又に分かれてる山だろ」


「あれの姉山の頭、つまり山頂の大岩が吹っ飛ばされたってのは知ってるか?」


「いや……それは知らなかった……」


「あれをやったのがあのハーフのドワーフだ」


「何?」


「あいつの右腕は、あいつ自身が造った大砲なんだ。あまりにも強力な……」


「……なるほど、そうだったのか……。だが、悪い奴じゃなかったぜ?」


「まぁな……だから、奴が反省したら解放してやるつもりだった。あの右腕はあまりにも危険だ。少し調べてからバラすつもりだったが……」


 グライフは何かを考えるように腕を組んで顎を触り、振り向いた。


「おい、お前ら集まれ」


 グライフは、手下のブレン、フォルカー、ロルフに状況を説明した。


「――という事だが、俺達は洞窟アジトに戻る事にする。遺体を埋葬する必要もあるしな。ガイウスは、何か情報を得られるかも知れんから生かしておいてやるつもりだ」


 ブレン、フォルカー、ロルフは「アイアイサー」と返事する。


「ねぇ、グライフさん! オイラはレイリア姉ちゃん達と一緒に、ハイマー村に行く事にしたんだ! グライフさん達も一緒に来てくれよ⁉」


 テオがグライフを誘った。


「……いや、俺達はまだ残る。まだやるべき事が残されてるからな……」


「なぁんでだよぉー⁉ グライフさんも『蛇』の悪行を止めたがってたじゃないか!」


「……だからだ。テオ。わかってくれ」


「え~……。何でだよ~……? わっかんねぇよ~……」


 テオはレイリアの方に振り向き、再びグライフの顔を見た。


「グライフさん……あそこにいる白い髪のお姉ちゃんいるだろ? ザハールが狙ってるのはあのお姉ちゃんなんだ! ザハールがあのお姉ちゃんに何をしようとしているか、グライフさんだって知らないだろ? オイラ、その話を聞いちゃったんだよ!」


 この話をしている時、レイリアはブラダとビトと共に、ハーディーに話しかけていた。


「……俺達の情報網を舐めるな。ザハールの企みくらい気付いている。俺達も、あの子が殺されないように行動するつもりだ。だから安心しろ。……むしろ、本来なら脱走は重罪だぞ? ガキだろうが、殺されてもおかしくない……。だが、今回は見逃してやる……」


「うっ……⁉ わ、わかったよぉ~……」


 テオは後ずさりして、レイリアとブラダの後ろに引いた。


「次、会う時は敵同士……か?」


 再びハーディーがグライフに近付いて、声をかけた。


「あぁ、そうだな。お前達も、今は見逃してやるよ……」


 ハーディーとグライフは睨み合う。緊張が走り、一同、息を呑む。


 突然、ハーディーがグライフにハグをして、「会えて嬉しいよ」と言った。


 グライフは、「……フッ。俺もだ」と言って微笑んだ。一同、ホッとした。


「あの、肩に乗せてるそれ、何ですか?」


 レイリアがフォルカーとロルフに聞いた。


「あ、これは仲間の死体です。圧縮してるから小さくなってるの」


 フォルカーがあっけらかんと答えた。フォルカーの声は少し女性的だ。


「えっ⁉」


 レイリアは少し後ずさりしてブラダの横に戻った。


「では、ここでお別れだ。俺達は『サー盗賊団ペント』だ。お前らとは会わなかった事にする」


 グライフがそう言って、ハーディーが応える。


「わかった……。またな」


「…………あぁ、またな」


 グライフがガイウスを肩に乗せる。セボを肩に乗せたブレンと、遺体袋を抱えたフォルカー、ロルフは洞窟アジトに向かった。これから恐ろしい惨状を目にする事だろう。


「よし、ハイマー村に帰るぞ」


「お~っ‼」


 ハーディーの呼びかけにレイリアとテオが明るく応じる。


「ハーディー殿」


 ビトが話しかけた。


「あぁ、あんた、最近ハイマー村に来た獣人のビトさんだな?」


「そうじゃ。ワシは感知能力が高い。ワシが魔物やサー盗賊団ペントを索敵しつつ道案内する」


「そうか、それは助かるな。頼むよ。じゃあ、俺は一番後ろを歩く事にする」


 ビトが先導し、ハーディーがしんがりを務める事になった。


 レイリアはハーディーをチラッと見て、少しキョドって再び前を向いた。


 先頭にビト、アルルを抱えたレイリア、横並びにブラダとテオ、ランバート、ハーディーという陣形で、一行はハイマー村に向かう。

 

 

 

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