◆第二章⑩ 初めての実践魔法(属性相関図)

 遺跡内を進みながら、俺はいくつかの魔法を覚えた。元々この肉体に刻印されているから、コツさえわかれば再び使えるようになるって事なんだろう。


          *         *         *


 この世界は、見えない『魔霊素子エレメント』と呼ばれる原子や分子のように小さな粒子で満たされているらしい。魔霊素子エレメントの粒子1つ1つに魔法の源となる最小単位の刻印が施されているとの事だ。


 それが元の世界とこの世界の最も大きな違い。魔法が存在するという事なのだろう。


 


 俺の解釈はこうだ。


 湿度が高ければ霧が発生するように、『魔霊素子エレメント』を集中させて魔法を発動させる。


 即ち、魔力によって『力場』を発生させ、必要な『魔霊素子エレメント』を集中。そして魔法が発動する。


 


 呪文の詠唱とは、プログラム言語の関数のように呼び出す方法なのかも知れない。


 魔霊素子エレメントを呼び出す方法……それが『魔法』か。


 


 呪文の詠唱でもあるように、使用頻度の高い『魔霊素子エレメント』は、四大元素の『火・風・水・土』の四大精霊とされている。これが基本的な『属性』となる。


 本当に精霊が存在するのかはわかっていないようだが、この世界では一般的で、発動し易いらしい。雷(電気)の力は、四大精霊全てと契約する必要がある。




 魔法の『属性』の関係性は、次のようになっているようだ。


               冷

           〈柔〉/ \〈潤〉

     生   熱─【風】─生─【水】─冷

     │   │/軽│ \│/ │重\│

  正=【陽】=【光】 死─【雷】─生 【闇】=【陰】=負

         │\軽│ /│\ │重/│   │

         熱─【火】─死─【土】─冷   死

           〈活〉\ /〈剛〉

               熱          ※縦書き表示用ページ下部


 【陽】のエネルギーは『生』に結びつき、【陰】のエネルギーは『死』に結びつく。


 『生』 肉体・生命力・回復 〈創造〉 と 『死』 魂・霊気・呪い 〈破壊〉


 


 しかし、魔法の関係性は、重層的なようだ。【陽】に近い【火】と【風】が結び付くと『死』に繋がり、【陰】に近い【水】と【土】が結び付くと生命を育む。

 また、【雷】は、四大元素全てと連結していて、生死を司ると云う。魂に働きかける力があるらしく、俺が〈雷に打たれてこの世界に来た〉事と、何らかの関係がありそうだ。


 


 さらに、魔法には内向きの力(肉体の強化)と外向きの力(発する力)があるようだ。


 戦士タイプは内向きの力で自己強化に長け、魔法使いタイプは外向きの力で発動する魔法が得意になり易いらしい。


 


 俺が覚えた魔法の詠唱は、低級火炎魔法『ヴラム』と、その上の中級火炎攻撃魔法『エルド・ヴラム』、俊敏魔法『ヴァロア・ソーマ』、衝撃魔法『パイネ・アールト』、防御シールド魔法『アミナ・エスクード』の5種類だ。ブラダが不得意なものから覚えた。


 1種類覚えるのも大変だと思ったが、この肉体の頭脳のポテンシャルなのか、記憶力と学習能力が素晴らしく、割とすぐに覚える事ができた。


 要するに、「今の俺、凄いぜ‼」ってこと~。


 尚且つ、『ヴラム』に関しては、一度詠唱して発動したら、何となくコツを理解して、二回目以降は無意識的に発動できるようになった。元々レイリアは『ヴラム』は無詠唱で使えたらしい。おそらくこの調子で行けば、他の魔法も無詠唱で使えそうだ。


           *         *         *


「この狭い通路はいつまで続くのかなー?」


「う~ん、来た時はいきなり中層の庭みたいな場所まで落ちたからね~。中がどうなってるのか全然わかんない……とにかく気を付けて進むしか……」


 その時、後ろの方でカサカサと何かが動く気配を感じた。


 間を置いて、回廊の奥からバサバサ音が聴こえてきた。コウモリの大群だ!


「う、うわわわわわわ‼」


「レイリア、落ち着いて! 大丈夫! ただのコウモリだよ!」


 ただのコウモリとブラダは言うけど、カラスより大きい。


 コウモリにしてはデカ過ぎる!


 と思ったが、確かに海外にはこれくらいの大きさのコウモリがいるんだよな……。


 俺は一瞬ヴラムで攻撃をしようとしたが、上手く使わないと燃えたコウモリに囲まれかねないので、ぐっと堪えた。よし、違う魔法を試してみるか……。


「つ、土の精霊よ、重畳たる結晶を紡ぎ出し、我が身を護る盾となれ! アミナ・エスクード‼」


 あぁもう、詠唱する時間が勿体ない! 


 俺は呪文を唱え、防御シールド魔法を発動させる事に成功したが、まだ慣れてないためか、シールドの生成が遅い。


 既に数羽のコウモリは通り過ぎていったが、大群が通り過ぎる前にギリギリで間に合った。


 空中に小さな粒が浮かび、1つ1つが30cm程度の六角形の光り輝く板になり、ガキィン! と音を立てて六角形が組み合わさって、〈ハニカム構造で全体が湾曲した、青紫色に光り輝く魔法の盾〉を形成した。

 厚みは5cm程度だろうか。今の俺には十分な厚みがあるように感じられた。


 コウモリの大群とすれ違うギリギリのタイミングで魔法の盾が完成し、俺とブラダ、アルルの身を護ってくれた。


 バサバサバサバサバサバサ‼ と激しい羽音が数秒間続く。


 コウモリは超音波で障害物を避けながら飛ぶ事ができるらしいが、数羽のマヌケなコウモリが魔法の盾に激突して落下した。しかしコウモリに仲間意識はないのか、盾の裏側に回られて襲われるという事はなかった。そのままコウモリの大群は通り過ぎ去った。


「はぁ~、良かった。成功した……」


「凄いじゃん! レイリア! 咄嗟で成功したのは凄い進歩だよ!」


「そうかな……へへへ」


 アルルも「ン~! ン~!」と喜んでくれた。


 それにしても、何かコツ覚えたし、次は詠唱なしでできそうな気がしてきた。


 実際にはそんなに甘いものでもなかったが……。

 

 

 

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※縦書き表示の場合、射線の向きが逆になります。


               冷

           〈柔〉\ /〈潤〉

     生   熱─【風】─生─【水】─冷

     │   │\軽│ /│\ │重/│

  正=【陽】=【光】 死─【雷】─生 【闇】=【陰】=負

         │/軽│ \│/ │重\│   │

         熱─【火】─死─【土】─冷   死

           〈活〉/ \〈剛〉

               熱


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