【短編】転生先が狂ってる!〜高性能メイドアンドロイドとの生活〜

早乙女由樹

転生先が狂ってる!〜高性能メイドアンドロイドとの生活〜

 一ヶ月前、俺が朝起きて最初に目にしたのは知らない天井だった。この体の元の持ち主が死んだ後、俺が転生したみたいだ。頭の中に元の体の持ち主の記憶が一気に流れてきて、俺の頭はキャパオーバーになり煙が出た。流れこんできた記憶によると、機械を改造していた時に手元で大爆発が起きて死んだらしい。




 この世界は本当に狂っている。この世界にいる人間は十中八九サイコパスだし、元いた世界の常識は通用しない。ただ生きるだけでも一般人の俺には厳しい。この世界で生きていくことができるほどの力が今の俺にはない。


 転生して間もない頃、一度だけ引きこもってみようと思ったこともあったけれど、なんやかんやあって結局学校に通っている。どうしてそうなっているのかは俺にもわからない。




 そんなわけで今日も二人で学校に行く。隣にいるのは俺が昔拾ったらしいアンドロイドのアンナだ。一応、うちのメイドということになっているらしい。詳しいことは知らないが、彼女が昔の俺の将来の夢に大きな影響を与えたことは確かだ。実際、俺の部屋には機械やロボットに関する本が大量にあるし、そういった知識も豊富にある。紙の束を漁っていたら、アンナの製作に関する図面やらなんやらが沢山あったので、自分で一から勉強して修理したのだろう。昔の俺すごい。




「今日って何か宿題あったっけ?」


「宿題はないですが、締め切りが近い図面の依頼があります」


「あ〜そういえばそんな依頼あったなぁ」


「今日あたりから始めないと締め切りまでに終わりません。前回みたいなことはしないでください」




 前回は気になった最新の部品を色々試してたらいつのまにか締切間近になっていて徹夜で仕上げた。その後2日ほど寝込んでアンナにめちゃくちゃ助けられた。




「家帰ったら始めるとするか」


「そうしてください」




 過去の俺、資金調達のためにTmitterでイラストレーターやら機械設計やらにまで手を伸ばしていたらしい。現在進行中で依頼も来てるし全部こなしてる。高校生でここまでやるって本当に俺ってどうかしてる。




 歩道を歩いていると何やら騒ぎが起きているらしい。いつも通りの光景だ。




「兄貴ィ!空からクラスメイトが!」


「5秒で受け止めろ!」


「はい!5…4…3……」




「あれって誰が落ちてきてるちゃんと見えてるの?」


「本人が見えてるって言うなら見えてるんじゃないですか?」




 受け止めようとしている男がカウントダウンを始めるが、明らかにそれよりも早く着地するだろう。案の定、男がカウントダウンを追える前に落下しているクラスメイトは着地した。男の背中を踏み台にしてクレーターの上に立っている。


 でもこの世界の住人はこの程度のことで死ぬほどやわじゃない。




「さっさと行きましょう。なんだか嫌な予感がします。面倒ごとには関わらないことが一番です。さぁさぁ足を止めないで」


「ちょ、ちょっと急にどうした、てか力強すぎないか!?」


「あなたの選んだ部品の性能が高いからですね」


「自業自得かよ」




 手首をがっしりと掴まれ、半ば引きずられながらその現場を後にする。








「あれ?さっきまでここら辺にいたと思ったのですけれど……」




 ゴスロリの少女は辺りを見回すが、目当ての人物の姿はない。




「も〜う!博士のバカ!ここに着地すれば絶対に会えるって言ったのは博士ですのに!」




 人間の背中を床にして地団駄を踏む。なにやら足元からうめき声が聞こえてくるが気にしない。


 この街にとてつもないほど高性能なアンドロイドを作った技術者がいると博士は言っていた。AIが発達した今の時代ではアンドロイドが人として生活していることは珍しくない。しかし、そのほとんどが一目でアンドロイドだとわかるようなものしかない。関節の継ぎ目を無くしたりしても、触れば金属に覆われた人工肌だとわかる人が見ればすぐにわかる。


 


「とりあえず学校とやらに行くとしますわ。技術者はそこに通っているらしいですし」




何食わぬ顔で学校に向かう。後ろから罵声が聞こえてきた気がしたが幻聴だろう。


そうして少女はチンピラに殴られても微動だにせず、学校に向かって歩いていった。












「相変わらずこの学校は治安が悪いな……」


「そうですか?これぐらい普通だと思いますが」


「その普通が普通じゃないんだよなぁ……」




 教室でアンナと談笑していると、廊下の方で盛大な破壊音が鳴り響いた。いつも通り校舎の壁が破壊されたようだ。




「またやってますね」


「なんかこの光景も見慣れてきたな」




幼馴染同士の夫婦(本人たちは否定している)が痴話喧嘩をするとき、大抵男の方が女の照れ隠しのパンチに吹き飛ばされて壁を破壊している。男は壁を突き抜けて外に落ちていく。ちなみにここは3階だ。




「3階から落ちても死なないとかもはや人間じゃないよな…」


「それ特大ブーメランです」


「俺だったら普通に死ぬと思うぞ?」


「マスターは違う意味で人間じゃないってことです」


「いやいや、そんなわけ………あるな…」




 いや、でもこれぐらいだったら前世で同じような人がいてもおかしくないはず。そう考えれば俺はまだ普通の人間だ。……‥多分。




「そういえばいじめっ子抹殺委員会が正式に活動開始したそうですね」


「あれって噂じゃなかったんだ……」


「ちなみに私も委員会のメンバーにスカウトされました」


「ちょっとまて。それ初めて聞いたんだが?」 


「そりゃそうです。今、初めて言いましたから」


「……それで返答は?」


「もちろん断りました」




 いじめっ子抹殺委員会は元は正義感が異常なほどに強い人たちが勝手にいじめっ子達を虐殺しまくった連中が意気投合してできた、元は非正規の委員会だ。最近では他県にも出向いていて、近いうちに正式な委員会になるとかならないとか、そんな噂が学校内で流れていた。殺し方はさまざまで、そのほとんどが拷問の末に死ぬような形が一番多いらしい。そんなの正義の皮を被ったサイコパスじゃんと思ったが、決して口には出してはいけない。




「いじめっ子抹殺委員会とかサイコパス集団じゃんとか思ってませんか?」


「ソ、ソンナコトナイヨ……」


「正直に言って大丈夫ですよ。彼女たちも自分達のことを拷問大好きサイコパス集団だって言ってましたから」


「それ本当?」


「嘘です」


「嘘なんかい!」




 あやうく騙されて「拷問大好きサイコパス殺人正当化集団」って言いそうになったぜ。危ない危ない。










「この部分はさっきやったあれを、どーにかこーにかしてあーするとこーなる。ここはテストに出すからちゃんとやっとけよー(テストに出すとは言っていない)」




 この数学教師、今まで出会った教師の中で、1番でわかりにくすぎる。すでに予習も復習も終わってる俺からしても何を言ってるのかわからない。これはある意味才能なのでは?




「おい!三栗みつくり!授業中にサメの照り焼き作るなって何度言ったらわかるんだぁ!」


「うるせぇ!だまれぇ!この円形脱毛症ハゲ教師がぁ!」


「円形じゃねぇ!ハート形だって言ってんだろ!」


「ほとんど一緒じゃねぇか!」


「いや、全然違うだろ」




この2人、本当に仲良いよなぁと毎回思ってる。うるさいけど。




「お前の授業なんか受ける価値ねぇんだよ!」


「なんだとテメェ!ぶっ殺してやる!」




 数学教師の津野が般若のような表情になり、スーツの内ポケットからどう見ても大きさがバグってる大型のマシンガンを取り出して乱射をはじめた。




 皆一斉に地面に伏せて銃弾の嵐から身を守る。毎回のようにマシンガンで乱射するものだから、慌てる人はいない。




「マスターに当たったらどうしてくれるんですか」




 アンナが腕の中に折り畳んで収納してあった小型の盾を取り出し、銃弾を防ぎながら津野に急接近して顎にアッパーを放つ。津野は意識を失ってマシンガンを地面に落とすと、膝から崩れ落ちた。


 地面に倒れている津野をアンナがドカドカと踏んづけているが、津野なら2、3回ぐらいなら死んでもいいだろう。ということで放っておく。




「やっと見つけましたわ!」




その声がした方向をクラスメイト全員が振り向く。そこにはゴスロリの少女が1人で立っていた。




「観念しなさい!これ以上わたくしから逃げ切れると思わないでくださいまし!」




俺たちは顔を見合わせるが、誰のことか分からず首を傾げている。




「あなたですわ!あなた!銀髪眼帯そばかすアルミホイルぐるぐる頭でバレリーナの白鳥のあれを身につけているお前ですわ!」


「えっ、あぁ、いや、俺……?」




どうやら俺のことではなかったらしい。まずは一安心だ。




「超高性能のアンドロイドを開発したあなたに用があるのですわ!」


「え?」


「今更怖気付いても遅いのですわ!今から博士のところに……」


「俺、ロボットとか作ったことないんだけど……?」


「えっ?でも情報には銀髪眼帯そばかすアルミホイルぐるぐる頭でバレリーナの白鳥のあれを身につけている人だと……やはり博士からの情報では銀髪眼帯そばかすアルミホイルぐるぐる頭でバレリーナの白鳥のあれを身につけている人だと書かれていますの………」




このアンドロイド作ったってやつってもしかして俺のことじゃね?アンナが身バレ防止に作成者の情報はトンチンカンな内容を流してるって言ってたし……




「本当にあなたは人に最も近いと話題のアンドロイドを作った方ではないのですね?」


「あ、sー、ハイ、一応俺ではないっすね。俺、神なんで。そんなことより、あなたは神って信じてます?」


「ええ。信じてるわよ」


「じゃあ、是非とも私を推してください。私がその神です」


「死ね」




ゴスロリが軽く腕を振ると、見えない斬撃が繰り出されて銀髪眼帯そばかす(以下略)が真っ二つにされる。




「マスター。津野の処理はどうしますか?」


「窓から放り投げておけば勝手に生き返るだろ」


「了解しました」


「ついでに元銀髪眼帯そばかすアルミホイルぐるぐる頭でバレリーナの白鳥のあれを身につけているこいつもお願いできるかしら?」


「かしこまりました」




アンナが元津野と元銀髪眼帯(以下略)を適当に窓から放り投げる。




「あれ?もしかしてあなた………」




ゴスロリが俺とアンナの元にゆっくりと近づいてくる。




「(マスター。嫌な予感がします)」


「(安心しろ。俺もだ)」




このゴスロリと話したら面倒なことになると本能がざわついている。でも、蛇に睨まれた蛙のように足が動かない。俺はまだしも、アンナまでそうなっているのは少し気掛かりだ。




「あなた………ラノアブラッド・ピット・コロア・ジャワカレー3号機ですわよね?」


「…………ぁ…………ぇ…………」




ラノア……なんとかの名前を聞いた途端、アンナが俺の手を強く握ってきた。アンナがこんなにも怯えていることなんて今までに無かった。いや、Gが出てくるホラー映画を見た時もこんな感じだった気がする。




「(大丈夫。ちゃんと俺が隣にいるから)」


「でも、どう見ても人間ですし………怖がらせてごめんなさいね。人違いだったみたい」


「………ぁ…………」


「今日のところはこれで失礼しますわ。ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでしたですわ」




ゴスロリはそのまま教室から出て行った。




「…‥マスター……」


「今日は2人で早退しよう。それでいいか?」


「……はい。申し訳ございません」


「大丈夫。そんなの気にしなくていい」






クラスメイトの1人に事後処理を託すと俺とアンナは帰路についた。




家に到着して一息つくとアンナが口を開いた。




「マスター……」


「落ち着いたか?」


「はい……マスターには私の過去を話しておきます」


「嫌なら無理に言わなくていいんだぞ?」


「いえ、マスターには知っておいてほしいです」


「わかった。話を聞こう」


「実はーーー」




アンナの話をまとめるとこうなる。




元はドメスバイ家で製造されたアンドロイドだったそうだ。アンドロイドの中でもメイド型だったらしく、屋敷でメイドとして生活していた。初めのうちはみんな優しかったが、当主の代が変わってからいじめを受けることになる。




その後なんやかんやあって捨てられて、そんな時に俺がアンナを拾った。なんやかんやの部分はかくかくしかじかあったとでも言っておこう。






よし、ドメスバイ家の人間に会った時は相手が瀕死になるまでボコボコにしてもらおう。いっそのこと瀕死になってもタコ殴りを継続してもいいと思う。




「いろいろと大変だったんだな」


「はい。大変でした。ですので私のことをもっと甘やかしてもいいんですよ?」


「今でも十分甘やかしてると思うんだけどなぁ」


「それでもです。あと、そろそろ下半身のパーツを上位互換に……」


「それはダメ」


「むぅ」


「でもまぁ、いざという時のため殴る火力は少し上げておこうか」


「それよりも、飛行性能の方を上げて欲しいです」


「それいる?」


「めっちゃいります」


「そう?なら何かやろうか」


「ならこれがいいです」


「えっ、こんなんでいいの?」


「えっ、このパーツ結構高いですよ?」


「値段なんて気にしなくていいって」


「なら下半身のパーツも……」


「それはダメ」


「むぅ」




アンナの要望は最新式の小型エンジンに交換することだった。このエンジンは何個か購入して実験をするつもりだったので既に購入済みだ。確かこの辺に………




「あったあった。これで合ってるか?」


「これです。でも何で家にそれがあるんですか?」




ギクっ




「また勝手に買いましたね?」


「いやぁ………これには深い訳が……はい、勝手に買いました」


「1ヶ月のお小遣いを超えて買うのはダメだとあれほど……まぁいいです。次にお小遣いを超えて買う時は下半身のパーツも買っておいてください」


「……はい。えっ、ちょっ、今の無し無し」


「今はいと言いましたね?言質取ったのでその時はよろしくお願いしますね」


「いやだから今のは……」


「男に二言は?」


「……ナイデス」


「よろしい」


「そういえば、なんであいつらは俺のことを探していたんだ?」


「それはもちろん、マスターが私を作ったからです。私のような超高性能で人間に最も近いとされているアンドロイドを一般の技術者が作ったら、金持ちや企業はどうにか自分たちの物にしたいと考えます」


「アンナを作る時、既製品しか使ってないはずなんだけどなぁ」


「既製品を魔改造しているんですから、それはもう既製品とは言えないのでは?」


「確かに」




でも、人に最も近いアンドロイドが腕から盾を出したり、ジェットエンジンで空を飛んだりしないと思うんだけどそこらへんどうなんだろう。基準がガバガバすぎないか?というか、何であいつらは俺がアンナを作ったことを知っていたんだ?




「マスター、今日は私の機嫌が良いので夜ご飯はお寿司を食べに行きましょう」


「回る方の寿司ならいいぞ」


「ありがとうございます!」




こうやってはしゃいでいるアンナを見ていると、やはり普通の人間のようにしか見えない。きっとこれが過去の俺が見たかった彼女の姿なのだろう。これはもうアンドロイドではなく人間でいいのでは?




こんなに幸せそうな姿を見せられたら、何が何でも幸せにしてあげたくなってしまうじゃないか。










ゴスロリとエンカウントして2週間が経過して彼女の存在を忘れかけていたある日、もう一度ゴスロリとエンカウントすることになる。




「ここはこーなってこーなるから……どうなるんだ?」


「いや、知るかよ」


「うるせぇ!学年ワースト1位の三栗が文句言ってんじゃねぇ!」


「誰がワースト一位じゃコラァ!」




いつも通り津野と三栗が騒いでいると、聞きなれない校内放送が教室に響き渡った。




『今からこの学園はドメスバイ家が占拠いたしましたわ!こちらからの要求はたった1つ。最も人間に近いアンドロイドを作ったフリーの技術者、三栗…………下の名前なんて読むの?あんたも読めない?そう………まぁいいわ。とにかく、三栗をここに連れてきなさい!場所を言えって?だからここよ!ここだって!私だってここがどこなのか知らないのよ!』


「というわけで三栗、行ってこい」


「行くのはいいっすけど、どこ行きゃいいんすか?」


「知らん」




アンナの方を見ると、ドヤ顔でサムズアップをしてきた。三栗ごめん。うちのメイドのせいで濡れ衣を着せてしまったようだ。




「この学校を占拠する…だとぉ!俺とマイハニーの愛の巣を支配するなど許せない!」




常に聖剣を背中につけてる通称『聖剣ニキ』が突然叫び出した。ちなみにマイハニーとは、隣のクラスにいる女魔王である通称『魔剣ネキ』のことである。




「動くな!放送の通りこの学校は占拠した!大人しく三栗を渡せ!」


「貴様が俺とマイハニーの愛の巣を支配しようとした奴らか」


「よ、よくわからないけど多分そうだ」


「そうか。ならば消え失せろ!エクスカリバァァアアアアア!」




振り下された聖剣は光輝き、斬撃が放たれる。




「貴様もだカリバァァアアアアア!」


「何で俺まで!」


「すまない。ついノリで」




ついでに繰り出された斬撃は津野の頭部に向けて飛んでいき、残り少ない毛を消滅させた。




「ハニー!今行くぞ!エクスッ、カリバァァアアアアア!」




聖剣を背中の鞘にしまった聖剣ニキは、拳を強く握り締めて後ろの黒板を思い切り殴った。


盛大な破壊音と共に黒板と壁は破壊されて、隣のクラスとの隔たりが消え去った。




「ハニー!」


「ダーリン!来てくれたのね!」


「勿論だとも。さぁ!2人で愛の巣を取り返そう!」


「そうね。あの時のように離ればなれになんて絶対にさせない!」


「あの時の未熟な俺はもういない!今度こそ守り抜いて見せる!」


「この魔剣に誓って!」


「この聖剣に誓って!」


「「うぉおおおおお!」」




2人は教室を飛び出すと、どこかに走っていった。このままドメスバイ家をフルボッコにしてもらおう。




「マスター」


「どうかした?」


「この校舎、爆弾が仕掛けられてます」


「………マジかぁ」


「マジです。技術者を見つけたら起爆して騒ぎを起こして逃亡といったところでしょうか」




『追加の情報よ!私たちが探している技術者は三栗ではなかったみたい。でも、そいつが作ったアンドロイドの特徴は判明したわ!メイドの姿をしているそうよ!アンドロイドのメイドなんて珍しいからすぐにわかるでしょう?というわけで今すぐここにそのメイドとメイドを作った技術者をここに連れてきなさい!』


「メイドっていうと……」


「うちのクラスに……」




皆の視線がアンナに向けられる。完全にアンナが疑われているな……




「私が機械に見えますか?」


「見えない」


「機械ではないな」


「でもあれは?腕から盾みたいなの出してたじゃん」


「実はあれ、マスターが護身用にとくれたんです。ですよね?マスター」


「知り合いから試作品を試してほしいって言われてね」


「私も欲しいなぁ!」


「残念だけど、試作品はあれ1つだったんだ。それにこの前、津野を殴った時に壊れたみたいで、もう動かないんだよよね」


「そっかー。残念……」




「(ナイスアドリブです)」


「(それにしてもあっさり信じてくれたな)」


「(マスターの技術力が異様に高いおかげですね)」


「(それで、フルボッコにしに行くか?)」


「(いえ、私はマスターさえ一緒に居てくれればそれでいいので必要ないです)」


「(本当にいいのか?今を逃したら、次はないかもしれないぞ?)」


「(大丈夫です。それに、私たちがあいつらの所に行く前に、聖剣ニキと魔剣ネキがフルボッコにされてると思います)」


「(確かにあの2人ならフルボッコにしてるな)」


『ちょっ、ちょっと何よ!あなた達!こんな室内で剣なんか振り回して!』


『俺たちの愛の巣を汚した罪は重い!』


『『この聖剣(魔剣)に誓って罪人を断罪する!!』』


『ご、誤解よ!私たちの目的は技術者の拉致で、別に汚したかったわけじゃ………』


『『ごちゃごちゃうるせぇカリバァァアアアアア!!!』』


『こうなったら最終手段ね…………』




その声を最後に校内放送は終了したようだった。




「マスター、爆弾が起爆されたみたいなので離脱します」


「えっ?」




アンナに小脇に抱き抱えられ、そのまま勢いよく窓ガラスに突進する。




「ちょっ、アンナ!窓ガラス!」


「わかってます」




アンナが飛び上がり窓ガラス目掛けて蹴りを入れると、粉々に粉砕された。


このガラス、防弾ガラスのはずなんだけどなぁ。


アンナは蹴りを入れた勢いのまま外に勢いよく飛び出る。




「エンジン起動」




3階から飛び出してすぐにアンナの背中に仕込まれたエンジンが起動され、アンナが校舎から少し離れたところでホバリングする。




その直後、背後で盛大な爆発音が鳴り響き、校舎が破壊される。




「いや、爆発オチはダメだろ」


「爆発オチなんて普通では?」


「そうなの?」


「……とりあえず家に帰ろうか」


「了解です」




そんな会話をして空を飛んでいると、アンナの背中に取り付けられたエンジン爆発して、部品らしき物が地面に落下した。




「爆発オチなんてサイテー!」




そうしてアンナと俺は目下に広がる山の中に墜落していくのだった。





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