第4話 じゃじゃ馬感満載ではなくて?
「リア様………。
本当に本当にこの出で立ちで臨むのですか?」
『そうよ』
「ですが。リア様………。
これでは高級娼婦のようですわ?」
『「娼婦」!いい感じじゃない?!
『下品』に見えまして?
わたくし見えないから貴女達の腕の見せ所なのよ?』
「リア様………。わたくし達には荷が重くございます。
リア様の『可憐な美貌』を下品に………?
どうしたらそうなるか屋敷中のものが悩みに悩みましたのよ?」
「『下品』の定義として『露出多め』と皆が一致したんですけど。
リア様の滲み出る『品良さ』がどうしても拭いきれませんのッ…………」
「あぁ………。これでは『妖艶さ』が打ち勝ちますわ?
どうしたら『下品』に出来ますの?」
「絶望しかありませんわ………」
リアも困り果てた。
視力が悪いリアが繊細に身支度を整えることは出来ない。
いつもリアをお姫様のように世話してくれる侍女達を困らせてしまっている。
令嬢や貴婦人を着飾らせるのが仕事の彼女達には苦行なのだろう。
リアの『自由』のため彼女達の業務に負担を強いるのは心苦しい。
『ね?皆様気楽に考えて?
普段のわたくしに見えなければよいのよ?
この間の出で立ちは『令嬢風』と皆様仰っていたでしょう?
最新の竜人族のトレンド『蜂の巣』のブランドだと。
あの出で立ちで彼等はわたくしを『ドラキュ―ル夫人』と呼んだのよ?
そこから逸脱した革新的なら良いのよ。
貴族は『保守的』なのよ。
あ!でしたら『ソバカス』なんてどう?
白い肌が取り柄の妖精族よ?肌のシミは『貴婦人の大敵』。
ね?いいアイデアでなくて?』
「ソバカス………。確かに。
品良さより『あどけなさ』が見えるかも。
貴族の貴婦人達は白く白く塗り固めていますもの。
流行を追わない。『社交界の貴婦人』らしくない出で立ちという意味ではクリアかと」
『上出来よ!皆様お願い出来ます?
最後に『下品』にベッタリ真っ赤な紅を唇にお願い。
今社交界では『ピンク』が流行りなの。
対極よ?
『じゃじゃ馬感』満載ではなくて?』
「「「「そういたしましょう!」」」」
そのあとどんどんリアの化粧もドレスの着付けも仕上がっていく。
皆口口に『こんなリア様を見たら気絶間違えなしですわ?』
『こんなリア様みたことありませんわあ………。
わたくし達の才能が恐ろしい………』
『公爵様など鼻血を出しますわ?』
『公爵様の情婦の設定素晴らしいですわ?』
『そのまま婚約いたしませんこと?!』
と興奮している。
リアはあれからどうドラキュ―ル伯爵ルドルフ並びに一族にのものに『もとのフローリア』ではないと思ってもらえるかを公爵と話し合った。
ドラキュ―ル伯爵一家が望む『貞淑』『品良く』『華美』『従順』な妻の幻想を打ち砕けばよいのだ。
リアは勝利を確信した。
侍女達が歓声を上げている。仕上がったらしい。
少しの懸念は胸元と太腿が心許ないこと。
黒い華美な刺繍も何も無い『地味』な安っぽい薄い生地。
幼い顔に似合わないらしい豊満な胸元を惜しみなく曝け出した『娼婦』が好むらしいデザインをお願いしたのだ。
前方は太腿が顕で後ろにかけて長いヒダが末広がりに伸びているらしい。
宝石は一切身に付けない。
『安っぽい娼婦』『悪女』がコンセプトだ。
『清楚さ』を出さないために黒い髪はぐるんぐるんに巻いてボリュームを出してもらった。
鏡で見れないのが残念である。
『後は………『親密さ』よね………?
公爵様が抱き上げて下さるはずだから………。
首元にキスをしてしなだれ掛かれば『情婦』には見えるかしら?』
「「「「完璧ですわ………?」」」」
「どうだ〜い。準備は………………出来た。わお」
控えめなノックと共にエ―デル公爵がひょっこり顔を出した。
気配では息を呑んでいるらしい。
侍女達への『臨時給与』を弾む声に侍女達の歓声が響いた。
リアがブツブツ『口上』をおさらいしている間にリアの座る椅子の前にエ―デル公爵は跪いたらしい。
リアのパンプスを脱がせつま先を啄みだした。
侍女達の悲鳴が聞こえた。
『それは『本番』だけでよろしいのでは?
公爵を『誑し込んでいる下品な女』。
貴方様はいつものようにわたくしを『崇めるように』甘い言葉をお願いいたします。
保護されて早三ヶ月ほどで『公爵の情婦』になっている。
それが一番『見限られやすい』。
竜人族のプライドとか家の体裁とかわかりませんけど。
『普通は』呆れて怒り、帰りますよね?
ね?『下品』?』
「すっ………ごく堪らない。男なら齧りつきたくなる」
『そ。なら大丈夫ね』
「彼等が『面食らう』のは保証する。
リア。君は男に屈しない『女王蜂』だよ?
演技の準備はよいかい?」
リアは唇に指を添わせ脚を組み替え顎を上げた。
少し恥ずかしさで頬が紅い自覚があるのだけど、『自由』のためだ。
鏡では確認出来ないのだけどニンマリ笑ってみせた。
「完璧だよ」
と公爵が唸る。
『「大人の話し合い」とお願いしてくださいました?
あの悲しそうに泣く『ハクア令嬢』は別室で待つように伝えまして?
高貴な伯爵令嬢の目は汚せないでしょう?』
公爵のクスクス笑う声と共におでこにリップ音がする。
「リア………。君は慈悲深いなあ………。
子供にダメージを与えたほうが義理の父親あたりが激昂する。
そういう意味では令嬢がいたほうが有利なのに」
確かに。
リアもそこには思い至った。
『娼婦』というものを見たこと無い高貴な令嬢には刺激が強い。
気絶ものだと侍女達が言うのだからよほど下品なのだろう。
『………………令嬢に罪はないわ。
わたくしが『汚れ役』になれば良いのよ。
姉と慕っていたらしいその娘を傷つけたいわけではないの。
わたくし………子供好きなの』
「君のその優しさと純真さが脚を掬わないと良いのだけど。『戦地』へいざ。
参りましょう『女王陛下』」
『ふふッ…………。フレディ―?お願いね?』
リアは公爵の頬にキスを落とした。
感触から言って『紅』がベッタリなはずだ。
リアは公爵に抱えられながら応接間に向かった。
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