第5話デート2

「ねぇ、浩太ー、私服みたいー」

「はいはい。ごめん、こうなったら手つけらんないんだわ。付き合ってくれる?」

 と問われる。

 僕はファッションにも疎いから今着ている服も姉が選んでくれたものだ。

 だから、正直言って服を見るたり買ったりするのは好きではない。

 そして、爽は少し嫌な顔をする。

「俺らは全然いいぜ」

 赤池たちがウキウキで返事をする。

 どうするか困ったとき――

「爽、私も服みたーい」

 とぶりっ子みたいな言い方で言われる。

 しかし、ここで爽の拒否権はない。

「わかったよ。僕らも行く」

 そして、僕以外の全員が足取りを軽く服やへ向かった。

 と思いきや、何やら赤池が近づいてくる。

「悪い、俺らトイレ」

「は?」

 突然赤池がそんなことを言い出す。

 俺たち...とは僕も入れたことになるだろう。

 当然「オッケー」と返事が返ってきた。

 そして、俺らはトイレ『付近』へ移動する。



「俺はな、爽。今誰よりもお前を尊敬している」

「へ?」

予想外の言葉に爽は間抜けな声を出してしまう。

「あんなに可愛くて、エロい子どこで見つけたんだよ。俺は感動したぞ! もしかして、レンタル彼女みたいなのしたのか?」

「いやいや、まさか」

と即否定する。

「俺は、お前と友達で誇らしいよ。爽」

「は」

怒りを込めて言った。

『友達』という単語に爽は引っかかったからだ。

ほんの少し前までは、そんな単語一切出さなかったくせに突然出してきたのだ。

ムカつくに決まってる。こんなこと。

「訂正しろ。僕とお前は『友達』なんかじゃない。だから、もう黙れ」

「へ?」

逆に今度は赤池が間抜けな声を出す。

「いやいや、俺らは元々―——」

「だから黙れって言ってんだろ」

爽の怒声が響く。

通行人がこちらを見ているのもわかる。

しかし、今はそんなことどうでもいい。

今重要なのは、こいつらと蹴りをつけることだから。

「赤池。俺は、お前のことが大っっっ嫌いだった。お前の高圧的な態度とか、人の趣味を馬鹿にするところとか、そういうのが全部嫌いだったんだよ」

「お、おい爽。落ち着けよ」

と赤池が焦りながら言ってくる。

「だーかーら黙れって」

「———っっ」

赤池たちがやっていたように、今度は僕が高圧的な態度で赤池に言う。

「謝れよ。今日以降もう俺と関わんないことを誓うんなら謝れよ。そしたらもう何も騒ぎ立てない」

「くっ」

悔しそうな顔をする赤池。

やはり、自分より下だと思っていた相手にこういうことを強要されるのは屈辱的なんだろうか。

まあいいや。

そして、満を持して口を開く。

「す、すいませんでした」

「何が?」

「ッ―—藤井さんのことを馬鹿にしたりして、本当にすいませんでした」

「うんうん、それで?」

「こ、これからは...藤井さんには一切かかわりません。うちのほかの連中にも伝えておきます」

「いいだろう。許してやる。糞どもが」

と僕たちは話を終えていつも通りに振舞った。

そのままデートを続けた。

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