107:大空を統べる者

 アサルトパックを装備した状態のアンブルフ。

 此処に来るまでの間に機体を調整し、途中から輸送機を降りて自力で向かっていた。

 プロペラントタンクのお陰で、まだ汚いの燃料は十分にあるが……。

 

 風きり音を響かせながら、雲が切り裂かれた大空を飛翔する。

 あちらこちらで火の手が上がり、大型のバトルシップからもくもくと黒煙が上がっていた。

 ひどい有様であり、壮絶な戦いがあったことは一目瞭然だ。

 目指すべき戦場を見つめて、通信機越しに相棒と会話をした。

 

「大分遅れたが、間に合ったか?」

《ギリギリだよバカ野郎ッ!! どんだけ待たせるんだヒーローッ!》

「すまん。後で沢山――謝るよ!」


 ヴァンとの通信。

 しこたま怒られるんだろうと思いながらも、イザベラの無事を確認した。

 まだ生きている。何とか間に合ったが、味方は壊滅状態だ。

 地上には残骸が散らばっていて、この地獄を生み出した存在は真っすぐに俺を見ていた。

 

 ――強いな、アレ。

 

 ペダルを踏み更に加速。

 センサーが捉えた特殊な反応。

 拡大すれば、二本のブレードを持った赤黒い機体のメリウスが浮遊している。

 本来の形にはまだなっていないのだろうか。その輪郭はひどく不安定で。

 しかし、不安定でありながらもその機体の美しさが不思議と伝わる。

 天使のような美しさと、悪魔のような不気味さを孕んだ軽量二脚のメリウスで……危険だな。

 

 血のように赤く発光するセンサーが俺をジッと見つめている。

 全身から悍ましい空気を放ちながら――来るッ!!


 敵の動きを予測し、機体を一気に上昇させた。

 敵は全力でブレードを振るい、俺が先ほどまでいた場所を通過した。

 ブレードが妖しげな光を放ち、敵はこっちを見ていた。

 背面飛行をしながら、手にしたスティールワンを展開する。


「遠距離――タイプ2」

《タイプ2、貫通特化弾――生成完了》


 タンクで瞬時に弾丸が生成されて、ガシャリと音がして弾が装填される。

 銃口が開口しその隙間に激しい電流が迸った。

 黒い銃の装甲には青いライン状の光が流れて電力が供給されいく。

 磁気の力が高まっていくのを感じる。

 輪っかのようになった電気の輪が幾つも生成され――放つ。


 鋭く豪快な音が鳴り響く。

 音を置き去りにしたような速さであり、目で捉える事は不可能。

 まるで、大弓から放たれた矢の如く放たれた弾丸が飛翔する。

 真っすぐに赤熱する細い線となって翔けぬけて――敵が弾いた。


 簡単に、ではないな。

 簡単に弾こうとしたそれの重みに驚き機体が揺れていた。

 それを見つめながら、俺は次弾を装填し――放つ。


 一瞬の強い衝撃。

 一条の光の後に甲高い音が響いた。

 放たれた弾が奴へと迫り、奴は機体を回転させて寸でのところで避けて見せた。

 奴は機体をブーストさせて距離を縮めようとしている……狙い通りだ。


 此処に来るまでにヴァンから情報は貰っている。

 写真で見た巨大な災厄は既に消えてなくなり。

 奴から分離した状態の奴だけが残っていて、此処にいた全ての傭兵や増援を撃破したと。

 恐らく、奴こそが災厄の本体であり、あの巨大な人型はこいつが作り上げた虚像だ。

 それは実体であるもののダメージを与えたところで意味のない存在。

 だが、全てが無意味である筈は無い。


 戦闘域を離れながら、チラリとイザベラのワンデイを見つめる。

 豆粒ほどにしか見えないそれは半壊状態だ。


 

 最後の通信、彼女の安否を確認した通信で――俺はバトンを託された。


 

 イザベラや他の傭兵たちのお陰で。

 こいつは正体を現し、全力で敵を屠ろうとした。

 隠れ蓑が消された事で本気にならざるを得なかったんだ。

 誰も負けてはいない。まだ俺がいる――勝つさ。


「ぶっつけ本番――伝説に幕を下ろすぞ」

《それは良いですね。次の伝説は――貴方ですよ》

「ふっ」


 ロイドに声を掛け、更に加速した。

 スラスターから爆発音のようなものが響き更に加速――凄まじいな。


 周りの景色が勢いよく流れていく。

 風の音が流れていき、体に掛かる圧が心地いい。

 敵は凄まじいスピードで追いつこうとするが、それでも追い抜く事は出来ない。

 伝説との戦いで、俺は奴と互角のスピードか――面白い。


「中距離――タイプ3」

《タイプ3――螺旋空力弾》


 スティールワンの形状が一瞬で変わる。

 銃口の長さが縮まり、余分な装甲が周りに回転しながら装着された。

 青いライン状の光りが強く発光しながら、精製された弾丸が装填されたのを確認。

 敵はアンブルフの変化を見抜き、更に加速して眼前に迫ろうとした――させない。


 銃口を奴へと向けてフルオートによる射撃を開始した。

 限界まで引き上げれた速度で弾丸が奴へと殺到する。

 弾丸が放たれる度に電気のスパーク音が響く。

 タイプ2の貫通弾よりも遅い弾丸。

 奴は最初の攻撃で目を慣らしている。

 だからこそ、避けるという動作を取らずにそれをブレードで弾こうとした。


 瞬間、奴のブレードに触れようとした弾丸たちが――弾道を変えた。


 ひらりと弾道を変えたそれが奴の装甲に触れる。

 バチバチと音を立てながら奴の装甲へと刺さり、ガリガリと奴の体を抉る。

 風の力により回転が加わったそれは、鋼鉄すら削りとるドリルのようだ。

 奴はダメージを受けた事により大きく機体をよろけさせた。

 そんな奴を見つめながら、俺は機体の向きを一気に変える。

 逆噴射により停止。そのまま加速し奴へと向かう。


《――!》


 姿勢を乱しながらも、奴は迫って来た俺に反射的にブレードを振るった。

 俺はスラスターの位置を変えて、瞬間的に噴かせる。

 風の向き、その強さを受けて――奴のブレードの表面が胴体が撫でた。

 奴の纏う黒いエネルギーが僅かに装甲に触れて表面のそれが熱を持つのが分かる。

 金属同士の擦れるかすかな音を聞きながら俺はニヤリと笑う。


 そのまま奴とすれ違いながら、その機体に目掛けて弾を発射した。

 バラバラとバラまかれた弾丸が奴へと向かい。

 奴は機体を回転させようとして――機体をピタリと止めた。


 弾丸の軌道が変わったが。

 今度は奴の装甲の表面を薄く撫でる程度に終わる――適応したな。


《敵から生体反応をキャッチ。アレには心があるのかもしれません》

「生きているのか――面白いな」

《えぇ博士が聞けば、唾を垂らしながら齧りつきそうです》


 ロイドの言葉を聞き流しながら、俺は奴へと弾をバラまく。

 再びスラスターを動かした奴は、大きく回る様に移動を始めた。

 螺旋空力弾の特徴は風の強い変化の影響を受ける事で。

 単純に直進する分には影響はないが、すぐ近くで何が勢いよく動こうとすればそこへと吸い込まれるように飛んでいく。

 簡易的な追尾弾であり、嵐の中でもない限りは有効だ。

 高機動状態のメリウス同士の戦闘を想定して開発された特殊弾で、まるで手品だ。


 敵は俺から一定の距離を保ちながら此方を見つめて――ッ!


 敵のブレードから嫌な気配を感じた。

 それを察知した瞬間に、俺はペダルを踏みながら加速。

 機体を回転させながら飛翔した。


 奴はブレードを目にも留まらぬ速さで連続して振るう。

 すると、そこから半月状のエネルギー波が生成されて此方に飛ぶ。

 間一髪でそれを回避し、連続で迫るそれらもブーストで回避していく。


 黒いエネルギーであるが――アレと似ているな。


 俺が戦って負けた漆黒のメリウス乗り。

 異分子の国の人間で、暗殺者のような機体のアレの技だ――知ってるんだよッ!!


 奴は間髪入れずにブレードを振り続ける。

 更に威力は強大で、触れたが最期で命の危険を常に感じる。

 俺はそれらを見ながら――少し先の光景を見る。


 機体を動かす。

 一気に加速し避け続け。

 先に向かって放たれたそれを下への降下で回避。

 敵が機体全体を回転させながら放つそれは斬撃自体が揺れ動いて。

 変化球のように動くそれは機体を減速し回避――見える。


 空中で激しく敵と入れ乱れる。

 機体を回転させながら、奴の放つ斬撃を紙一重で避けていく。

 避けられなかったものは装甲に軽く当たり、ダメージとして換算される。

 装甲が少し溶けて、システムが損害状況を報告。

 それを聞き流しながら、俺は弾丸を放ちながら奴を牽制。

 奴は連続してブーストを行いながら、空力弾の効果範囲を自力で割り出し回避していく――分かるぞ。全てな。

 

 奴の動きが分かる。

 次の攻撃の光景が網膜に映る。

 激しく流れる景色。敵も自分の動きも目で捉えきれない速さなのに。

 俺の目には鮮明に敵の動きが見えていて、機体が自分の体のように動く。

 流れ込んでくるヴィジョンを頭の中で処理しながら、最適な動きを機体に反映していく。

 以前の俺なら負けていただろう。


 だが、これなら――このアンブルフならッ!!


「――はは!」


 更に加速。

 爆発音が響き、スラスターから鳴る音色が高くなった。

 音速を超えて飛翔。機体全体が小刻みに揺れていて、今にも空中分解しそうだ。

 風のバリアを発生させながら敵の攻撃を踊る様に避けていく。

 もっと先、遥か先へ。更なる高みへ――連れて行ってくれッ!!


 青空の中へと進んでいく。

 機体全体が激しく揺れて空気が冷たくなっていく。

 センサーに映る映像に霜が発生し始めて空の青みが濃さを増していく。


 まだだ、まだだ、もっと――もっとッ!!


 限界まで上げていけ。

 空の先を目指したって良い。

 アイツも遥か後から追って来ている――が、今はこれで満足だ。


 スラスターを噴かせて逆噴射。

 限界の先へと行くのを寸での所でやめて、機体を空中に浮遊させる。

 システムが警告を発していた。

 限界高度はとっくに超えている。

 これ以上は地獄であり――俺は笑みを浮かべながら言葉を発した。


「近距離――タイプ1」

《タイプ1――分裂鉄球弾》


 スティールワンの形状が変わる。

 俺が両手でそれを持てば、大きな銃が二つに分裂した。

 ハンドキャノン型の双銃であり、こいつも磁気による加速装置が組み込まれている。

 ゆっくりと濃い青空を見つめて、白い吐息を吐く。


「行くぞ」

《はい》


 ロイドに声を掛けて、ゆっくりと下を向き――ペダルを踏みつける。


 爆発的な加速――下から迫る奴へと向かう。


 奴はブレードを構えて斬撃を放ってきた。

 俺はそれを見つめながら、装備しているプロペラントタンクをパージした。

 空中でタンクが舞い、敵の放つ斬撃が当たって――爆ぜた。


 俺はその爆発を隠れ蓑にして横へとブースト。

 敵はエネルギーの爆発へと飲み込まれる。

 青い光が球体のように広がって――奴が出て来た。


 勢いよく飛び出した奴の装甲はボロボロで。

 所々、剥がれ落ちそうになっていた。

 ギリギリ動けているが、よく目を凝らせば装甲が再生しようとしていた。


 そうか。深い傷を負わせられなければずっと回復するのか。


 面白い敵だと思いながら、俺は機体を動かして――奴へと向かう。


 奴も俺へと飛んできて、ブレードを勢いよく叩きつけて来る。

 俺はそれを見つめながら、機体を動かして刃をギリギリで避けた。

 奴の胴体部ががら空きであり、俺はそこへ銃を向けて――後方にも放つ。


《――ナ、ゼ》

「分かるよ。気配で――お前が俺たちのルーツだからな」


 背後から音も無く迫った敵。

 そのコアを精確に射抜く。

 エネルギーの中へと突っ込んだ時に、反応が二つになったと感じた。

 装甲がボロボロのように見せたのはフェイクで。

 こいつを死角から俺の元へ向かわせる為だ。


 コアを砕かれた敵は、赤黒い装甲を液状化させて破裂した。

 俺はそれから距離を取りながら見つめて――アイツは防いだか。


 もう一本のブレードでコアへの攻撃を防いで見せた。

 しかし、此方が使ったのはタイプ1であり、拡散するそれは完全には防げない。

 体中に小さな穴を空けながら、奴はひらひらと落下していく……誘っているな。


 センサーから光を消して、極限まで生体反応を落としていた。

 瀕死の状態に見せかけており、十中八九が罠だ――だが、別にいい。


 プロペラントタンクをパージした時点で、長期戦は出来ない。

 今ので決めるつもりだったが、奴は戦いに慣れ始めている。

 生まれたての赤子から、今ではベテランのパイロットだ……アレは何かを模倣したのか。


 不完全な機体であり、強さは感じたがアレがオリジナルとは思えない。

 何故かは分からないが、本物がいるように感じるし。

 恐らくは、そのオリジナルの半分も力を引き出していないんだろう――凄いな。


 まだまだ、俺の知らない世界がある。

 俺が知らない強者たちがいて……もしかしたら生きているのかもしれない。


「会いたいな――会ってみたい」


 奴へと接近しながら、銃口を向ける。

 此処にはいない本物への想いを膨らませながら奴に弾を放ち――おぉ!!


 弾を放った瞬間――奴が三体に分裂した。


 拡散した弾丸を避けながら散開する。

 心なしか機体の大きさが小さくなっており――斬撃か!


 それぞれの武器を振るう。

 そうして、四方八方から威力が弱まった斬撃が飛んできた。

 手数を増やして俺を殺す気だろうが――愚策だろうッ!!


 俺は笑みを深めながら機体を回転。

 未来を見て、その攻撃の一つ一つをギリギリで回避した。

 一つ目は下へと流し、二つ目は胴体を掠めて三つめは――ッチ!


 薄く肩に当たり装甲が切断される――まだ甘いか。


 システムの警告を流しながら、俺は連続してブーストした。

 強化されたスラスターによるブーストは、まるでワープのように感じるが。

 ライトニングパックのあれよりかは、数段見劣りする。


「アレで何度も吐いて来たんだッ!!」

《――》


 流れるように空中を滑る。

 そうして、敵の背後を一瞬にして取り――弾丸を撃ち込む。


 コア事機体を穿たれたそれが飛び散り。

 俺はそのまま此方に斬撃を飛ばす敵へと接近する。

 間近で迫るそれをギリギリで避ければ、胸部が軽く抉られた――これだ!


 ギリギリを攻めるんだ。

 最短最速で、敵を――殺す。


 目の前で奴の胸部に弾丸を撃ち込んだ。

 一瞬の雷鳴の如き音と共に一筋の光が闇を弾けさせた。

 びしゃりと空間に広がったそれは花火のようで――綺麗だ。


 それを見ながら、機体をずらす。

 死角から飛んできた斬撃が通過し背後を見て――奴がセンサーを点滅させた。


《コレハ、オマエ、ハ――オマエ――》


 奴が驚きを露わにする。

 そうして、 ブレードをクロスさせながら突貫してきた。

 俺はそんな奴を見つめながら、眼前に弾を放つ。

 奴の機体の像がブレて、弾が奴を通過していった。

 姿が消えた敵はレーダーにも反応が無く――俺は銃を回転させて後ろへ向ける。


「違うだろ」

《――オマ、エ》


 弾丸を放つ。

 その瞬間に甲高い金属音が響いた。

 俺は下へと降下し、頭上を通過していく敵を狙う。

 全身の装甲は穴だらけで、センサーの光も弱弱しくなっている。

 今にも消えそうな蝋燭の火のようで――また会えるんだろ?


 

 

《オ、マエ、ハ――マサ――》

「――またな」 



 

 ノイズ交じりの声。

 奴から聞こえるそれを聞き終える事無く弾を放つ。

 放たれたそれが空中で分裂し、細い光の線となり奴の体を襲う。

 スローに感じる世界で、奴の装甲に無数の穴が空いていき。

 胸の中心で赤く発光しているそれが砕けて――破裂した。


 奴の体から飛び散った液体が機体に降り注ぐ。

 びちゃびちゃと付着するそれは”安全”のようで……終わりか。


 砕けて消えた敵。

 後には何も残らず。

 俺は暫く奴がいなくなった空間を見つめて……仲間の元へ行こう。


 俺は踵を返してその場を――っ!!


 体の周りに黒い靄が現れる。

 それは俺の機体を取り囲んでいて。

 俺はこれは何なのかと思いながら機体を動かそうと――ッ!!


 頭の中に、何かが流れ込んでくる――いや、何かが入って来るッ!!!


 体が動かない。

 入り込んできた何かが頭の中で暴れまわっていて。

 俺はあまりの激痛に頭を抑える事しか出来なかった。


 これは誰だ――こいつは何者だ――目の前の人間はッ!!?


 知らない人間たちの声。

 誰かの視線を通して、そいつの記憶を見せられている。

 会った事も無ければ全く知らない筈のそいつらを見て――心が温かい。


 心が温かい筈なのに――熱いッ!!


 燃えるような熱さ。

 熱せられた鉄球を飲み込んだような熱さを感じる。

 全身の血が沸騰するようなこの感覚は――怒りだ。


 身を焦がすような怒りであり。

 全てを壊せという衝動に飲み込まれそうだった。

 黒い感情が。どす黒い負の感情が俺の意識を飲みこもうとする

 頭の中に、怒りと殺意に染まった何かの声が響いていた。


 強く強く。呪うように叫んでいて――ッ!!!


 俺はヘルメットを脱ぎ捨てる。

 そうして、シートに向けて何度も何度も頭を叩きつけた。

 ガンガンとぶつけながら、この何かを追い出そうとして――




『受け入れろ――死ぬぞ?』



 

 男か女かも不明な声。

 それを最後に、頭に響くような声が収まって行く。

 俺は空気を取り込みながら、全身から流れる汗に気づいた。

 パイロットスーツの下はぐしょぐしょで、激しい運動をした後のように息が荒い。

 心臓の鼓動は今にも破裂してしまいそうなほどに鼓動していて……まさか、これが?


 俺はゆっくりと自分の両手を見つめる。

 僅かに震えていながらも、今動かしているのは自分自身で……何なんだ。一体……。


《……ナナシ様? バイタルが不安定ですが。何かありましたか?》

「……今のが、見えていなかったのか……?」

《……何の事でしょうか。記録映像を……すみませんが。私には何の事か判断が出来ません。詳細な情報を》

「――いや、いい……大丈夫だ……戻ろう」

《……承知致しました》


 俺はゆっくりと機体の姿勢を安定させる。

 そうして、マップを表示させながらヴァンたちの元へと向かう。

 今は何も分からない。

 いや、一つだけは確かだ……俺は勝ったんだ。


 災厄に打ち勝ち、目的の一つを果たした。

 これで何が変わったのかは分からないが。

 奴らのいう通りに事が運んだに違いない。


 奴らは絶対に姿を現す。

 今の俺には分かる。

 異分子の国の兵士は、俺の持つ鍵を――強く求めている事が。

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