第43話 やる気〇
――宣戦布告されてからというもの、人々は訓練や建設に
ルシアも、オンドレラル居住区に行き、葡萄の件は一旦中止にした。
そして何が起きてもいいように、準備しておけと伝えたらしい。
俺は、カズキから買った情報を、戦うみんなに伝えた。
またルシアに注意されたが、ちょうどオンドレラル居住区に行っていた為、軽めで済んだ。
「ぬぬぬぬぬっ……!」
「だ、大丈夫ですかっ!?」
鍛錬3日目にして、ガニ股を卒業したはいいものの、ずっとツラいのが顔に出てしまい、ノアに心配されている。
「大……丈夫だっ! この鉄球を浮かしたままっ、普通の生活を送れるようにするんだ!」
「そう言って! 何度も落としそうになってましたよ!」
「一応俺はっ、この戦いの重要人物だっ……。少しでも強くならなければいけないんだっ」
「そ、そんな無理をしなくても……」
「よし。建設でも手伝ってくる。昼食時には戻るからなっ」
「あっ……」
ノアは外に行こうとする俺に手を伸ばしたが、その手が届くことはなかった。
◇ ◇ ◇
「――おーいオオヅチ! 順調か~?」
「おおっ! 領主様じゃ……なんかキツそうだが大丈夫なのか?」
村の端の方で取ってきた木材を加工しているオオヅチは、元気よく挨拶をしたが、やはり心配してきた。
「大丈夫大丈夫。鍛えてるっ、だけだ」
「そ、そうか。頑張れよ」
「ああ。それで、建設の方はどうだ?」
「ああ。木材も調達できて、壁を早速作っている所だ」
「お~。どういう作りにするんだ?」
「まず木材を、この長方形のように薄く加工して、真ん中に大きい穴を開ける。そしてその両隣に、少し小さめの穴を開ける。もちろん木の端の方を使う。普段余っちまう所だからな」
「そして木の大部分を、杭のように加工した木材を、先ほどの大きな穴に通し、土に刺していく。長方形のとこは重なるから、1本分の間隔を開けて刺していき、後で開いた部分にも杭を刺していくことで、隙間なく壁を作ることができる」
「……なるほど? でもその長方形の板に何の意味があるんだ?」
「壁を強固にするためだ。余った木材で、小さめの杭を作り、この小さい穴に1つずつ通し、土に刺す。そしてその作業が終わったら、その上に土や石を積む。そうすれば強固な防御壁の完成だ。高さはこれぐらいになるだろうな」
腕を伸ばしたオオヅチの位置を見るに、2メートルちょっとか。
「時間が余れば、さらに壁を強化する予定だ。あっ。もちろん。北と南に門は造るから、出入りに関しては安心してくれ」
「流石はオオヅチだ。アンタがいて良かったよ。本当に……」
「ああ。建設に関しては任せてくれ。人手も間に合ってるし、領主様は戦術でも考えておいてくれ」
手伝おうと思ったが、全然余裕そうだな。
俺が手伝う余地もないか。
「そうか。では任せたぞ」
俺はこれ以上邪魔をしてはいけないと思い、
◇ ◇ ◇
――そういえば、ホクロウ組合が来る補充は大丈夫だろうか。
週に1回の頻度で来ているから、そろそろのはずだが……。
干し肉商売も一旦止めるか。
売ってる人も戻ってもらって、一緒に戦ってもらいたいけど……。
「補充する人に、そう伝えてもらうよう頼んでおくか」
と考えながら、俺は訓練場に向かっていた。
村人と、兵士の訓練の様子を見ておきたい。
そしてできることなら、声をかけて元気づけたい。
この顔で元気づけられて士気が下がる可能性もあるけど。
不安が一瞬頭をよぎったが、忘れる程の大声が聞こえてきた。
「おっ。すでに士気が高まってるじゃん」
訓練場が見えると、大きな声に合った訓練をしている姿が瞳に映った。
向こうは兵士の方か。
主に剣や槍を扱う者たちか。
うわぁ……ゾルタックスにしごかれてるなぁ。
そしてこっちが村人の方と。
弓兵やバーンたちが丁寧に教えてくれてるな。
「おーい!! 励んでいるかー!」
柵に手をかけ、声をかけた。
「――おおっ! 領主様ー!」
「――お疲れ様です領主様ー!」
村人も兵士も訓練の手を一度止めて、各々が声を上げて返事をしてくれた。
しかしそれ以上何かある訳ではなく、すぐに訓練に戻った。
あっ、訓練に集中したいんだな。
じゃあ悪いことしたな。
「――なぁ。なんで領主様はあんな険しい顔してるんだ?」
「――知らねぇよっ。気合い入れろって怒ってるんじゃないのか?」
「ん?」
何か勘違いされた気がしたけど……。
「そろそろ昼だから! 各自休憩はちゃんとするんだぞ!」
俺は休憩するようにと言って、屋敷に戻っていった。
◇ ◇ ◇
昼飯を食って自室に戻った俺は、窓から外を眺めていた。
もちろん鉄球は宙に浮かばせている。
「――ヤバいな。風魔法の鍛錬をするのはいいが、それ以外何もしていないじゃないか」
最低限の書類仕事はザカンが引き受けちゃったし、だからってあの訓練に参加しに行っても、この状態じゃ変に邪魔になるだけかもしれないし。
どうしようか悩んでいると、誰かが扉をノックしてきた。
「開いてるぞ」
「――失礼します」
入ってきたのはルシアだった。
特に書類は持っていなかったが、腰に剣を提げていた。
「どうした?」
「失礼を承知でお願いがあってきました」
珍しいな。
ルシアからお願いなんて。
「何だ?」
「敵がやって来るまでの間、私の剣の特訓に付き合ってもらえないでしょうか?」
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